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サックス侯爵家の夜会
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サックス侯爵家の門をくぐり玄関ホールで侯爵夫妻と挨拶を交わした。
「アネットに婚約者ができるなんて。
小さな子供だったのに……」
「時が経つのは早いな。木から降りられないと言って泣いていたのに……」
「叔父様、その話は内緒です!」
「ハハッ、内緒だったか」
「バトラーズ公爵令息、ゆっくりお過ごしください」
「ありがとうございます」
会場に入り、飲み物を飲んだ。
「アネット、飲み過ぎないように」
「大丈夫です、お父様」
「アネット、酒は大丈夫なのか」
「一杯くらい大丈夫です」
その後、親戚を中心に挨拶をしていった。
別に仲が悪いというわけではないがサックス家とバトラーズ家は縁がなく交流がない。なので客層も違い、何故バトラーズ家の子息がここに居るの?と驚かれる。
「アネット、婚約できたの!?」
「おかしな言い回しは止めてよ問題児みたいじゃない」
「いや、だって……そっか。おめでとう」
「サリフィアは?順調?」
「まあ、なんとか」
「なんとか?」
「長いけど政略結婚だから、商談相手と話してるって感じよ」
「そっか」
「みんなに言わなくちゃ。従妹が婚約したって」
「普通に話題にしてくれたらいいわ」
「分かったわ。
バトラーズ公爵令息は大変だと思いますがアネットをよろしくお願いします」
「喜んで世話をしますからご安心ください」
レヴィン様が手をとって甲に唇を付けるとサリフィアが大喜びだった。
「ひゃ~っ、さすが騎士様、絵になるわ」
揶揄いながら去っていった。
「本当に親戚が多いんだね」
「そうじゃないと参加させてもらえないのです」
「どうして?」
「問題が起きるからです」
「うちの系列の夜会も来て欲しいのだけど」
「護衛付きで良ければ行きます」
「護衛?」
「はい。騎士服は着ません。会場に忍ばせて貰えれば」
「どうして」
「護衛の条件を付けたのはレヴィン様ですよ。私にとって社交場は危険な場所です。
会場内で密かに警護するのがダメなら別の隊にお願いすることになります。
問題が起きればどうなるか分かりますね?」
「分かった」
「ありがとうございます。私の休みの日でしたら参加しますので仰ってください」
「アネット、私は、」
「アネット!」
「テオ!」
「久しぶりだな。ちゃんと食べてるか?」
「食べてるわ。
こちらはバトラーズ公爵のご子息でレヴィン様です。
彼は私の従兄のテオドール・サックス侯爵令息、彼女は婚約者のミーナ様です」
「テオドール・サックスです。アネットがお世話になっております」
「ミーナ・ベンジャルと申します。よろしくお願いいたします」
「レヴィン・バトラーズと申します」
「あれ、アネット、酒飲んでるのか」
「飲みたい気分なの」
「一杯にしておけよ」
「ミーナ様、素敵なドレスですわ」
「ありがとうございます。アネット様も素敵ですわ。そのネックレス変わったデザインですわね」
「はい。どちらですか?」
「十字架のような」
「これは頂き物でお守りです」
「まあ、素敵ですわ。こちらのネックレスも綺麗な石ですわ」
「こっちはテオからの卒業祝いです」
「従妹にサックス家からの贈り物だ」
「私は用意しなくて申し訳なかったわ。
もう少し待って」
「アネットはいいんだ」
「幼い頃から面倒を見てくれたテオにお礼をしないと。アルバイトだから高価な物は無理だけど、ちゃんと自分で働いて稼いだお金を貯めて買うから受け取ってね」
「アネット、気持ちだけで充分だ。大事な金だろう」
「だからこそよ。お願い」
「じゃあ、仕事で使える物にしてくれないか。ペーパーナイフとか、カップもいいな。倒れそうもないどっしりとしたやつ」
「ソーサーの無いやつってこと?」
「そう。毎日使えるだろう」
「え~」
「シンプルなのがいいな」
「え~」
「頼んだぞ」
「記憶の片隅に残しておく」
「ど真ん中に残せ。
それより、何があった」
「えっ」
「何かあったろう」
「………」
「今度行くからその時に聞く」
「いいよ。私の心配は」
「いいわけあるか!泣いてたんだろう」
「もう子供じゃないから」
「大人になったら従兄妹は助け合ったら駄目なのか?」
「分かった。でもそっちに行く」
「まさか叔父様か叔母様??」
「お母様に怒られちゃった」
「珍しいな。
分かった。来週中に来い。
朝でも夜でもいいから。先触れなんかいらないからな」
「うん」
「第三の隊長と副隊長とは仲良くやってるか」
「相変わらず面倒見てくれるわ」
「そうか。ステファニーにもたまには会いたいな」
「今度、私が終わる時間に来てよ。ステファニーと予定合わせるから」
「手土産に迷うな。またお揃いのリボンにするか」
「喜ぶわね」
「アネット、来てたのか」
「ジェームズ!?大きくなり過ぎて!」
「もう15だよ。普通だよ」
「こんなにちっちゃかったのに」
「もはや人間じゃないよソレ」
「小さい頃に抱っこしたのに」
「よく僕の頭にお菓子をボロボロ落としてたよね」
「小さいのによく覚えてるわね。
こちら婚約者のレヴィン・バトラーズ公爵令息。彼は従弟のジェームズ・パッセン伯爵令息です」
「よろしく」
「よ、よろしくお願いします。
アネット、よく捕まえたな。高貴過ぎるだろう」
「そうなのよね」
「私が頼み込んで婚約してもらったんだ」
「そうなんですか?モテそうですね」
「そうなのよ」
「私はアネット以外興味がない」
「アネットが公爵夫人か…大丈夫か?」
「………ジェームズこそ成績は?」
「あ!お腹空いたから食べてくるよ。
皆様、失礼します」
その後も挨拶回りをして帰路についた。
「すごく仲がいいんだな」
「親戚ですから」
「令嬢が少なかったな」
「私が参加するから意地悪をする令嬢は呼ばないんです。変なことを言ってくる令息も排除された夜会です」
「安全な世界というわけだな」
「あれだけ清い世界で育つと外の夜会や茶会が良くは感じないですね。何かしら絡まれますから」
私を送ると帰っていった。
***バトラーズ家
「どうだった」
「伯爵夫人がアネットを叱ったようで、それが逆効果になっている気がします。
私はいつものアネットが好きなのに」
「解消はしないと言ったのか」
「はい。話合うには時間が欲しいと言われました。すごく不安です。
それにサックス侯爵令息が強敵でした。
完全にアネットの心を掴んでいます」
「結婚出来ない従兄だろう」
「そうなのですが、まるで恋人の様でした」
「確かに凄く仲がいいと調査報告書に書いてあったができてるとは書いてなかったぞ」
「従兄の方が横に婚約者がいようがお構いなしです」
「確か困窮した家門の令嬢だったな。サックス家が態々そんな令嬢を選ぶのはおかしいと思っていたが、多分交換条件で成立した婚約なんだろう。
金の支援の代わりに口出しするなと。
令嬢は不満を表さなかったろう?」
「結婚は出来ないが愛し続けるということですね」
「予想でしかないがな。
下手にちょっかいかけるなよ。駆け落ちなんてことになったら困るからな。
必要なのは批判じゃないぞ。話を聞くとアネットには世話を焼いてやるのがいい。
自分の娘か妹の様に可愛がれ」
「どっちもいませんよ」
「ピンとこないか。
とにかく頑張って世話を焼け。嫉妬なんかぶつけるなよ」
「はぁ、自信ないです」
「アネットに婚約者ができるなんて。
小さな子供だったのに……」
「時が経つのは早いな。木から降りられないと言って泣いていたのに……」
「叔父様、その話は内緒です!」
「ハハッ、内緒だったか」
「バトラーズ公爵令息、ゆっくりお過ごしください」
「ありがとうございます」
会場に入り、飲み物を飲んだ。
「アネット、飲み過ぎないように」
「大丈夫です、お父様」
「アネット、酒は大丈夫なのか」
「一杯くらい大丈夫です」
その後、親戚を中心に挨拶をしていった。
別に仲が悪いというわけではないがサックス家とバトラーズ家は縁がなく交流がない。なので客層も違い、何故バトラーズ家の子息がここに居るの?と驚かれる。
「アネット、婚約できたの!?」
「おかしな言い回しは止めてよ問題児みたいじゃない」
「いや、だって……そっか。おめでとう」
「サリフィアは?順調?」
「まあ、なんとか」
「なんとか?」
「長いけど政略結婚だから、商談相手と話してるって感じよ」
「そっか」
「みんなに言わなくちゃ。従妹が婚約したって」
「普通に話題にしてくれたらいいわ」
「分かったわ。
バトラーズ公爵令息は大変だと思いますがアネットをよろしくお願いします」
「喜んで世話をしますからご安心ください」
レヴィン様が手をとって甲に唇を付けるとサリフィアが大喜びだった。
「ひゃ~っ、さすが騎士様、絵になるわ」
揶揄いながら去っていった。
「本当に親戚が多いんだね」
「そうじゃないと参加させてもらえないのです」
「どうして?」
「問題が起きるからです」
「うちの系列の夜会も来て欲しいのだけど」
「護衛付きで良ければ行きます」
「護衛?」
「はい。騎士服は着ません。会場に忍ばせて貰えれば」
「どうして」
「護衛の条件を付けたのはレヴィン様ですよ。私にとって社交場は危険な場所です。
会場内で密かに警護するのがダメなら別の隊にお願いすることになります。
問題が起きればどうなるか分かりますね?」
「分かった」
「ありがとうございます。私の休みの日でしたら参加しますので仰ってください」
「アネット、私は、」
「アネット!」
「テオ!」
「久しぶりだな。ちゃんと食べてるか?」
「食べてるわ。
こちらはバトラーズ公爵のご子息でレヴィン様です。
彼は私の従兄のテオドール・サックス侯爵令息、彼女は婚約者のミーナ様です」
「テオドール・サックスです。アネットがお世話になっております」
「ミーナ・ベンジャルと申します。よろしくお願いいたします」
「レヴィン・バトラーズと申します」
「あれ、アネット、酒飲んでるのか」
「飲みたい気分なの」
「一杯にしておけよ」
「ミーナ様、素敵なドレスですわ」
「ありがとうございます。アネット様も素敵ですわ。そのネックレス変わったデザインですわね」
「はい。どちらですか?」
「十字架のような」
「これは頂き物でお守りです」
「まあ、素敵ですわ。こちらのネックレスも綺麗な石ですわ」
「こっちはテオからの卒業祝いです」
「従妹にサックス家からの贈り物だ」
「私は用意しなくて申し訳なかったわ。
もう少し待って」
「アネットはいいんだ」
「幼い頃から面倒を見てくれたテオにお礼をしないと。アルバイトだから高価な物は無理だけど、ちゃんと自分で働いて稼いだお金を貯めて買うから受け取ってね」
「アネット、気持ちだけで充分だ。大事な金だろう」
「だからこそよ。お願い」
「じゃあ、仕事で使える物にしてくれないか。ペーパーナイフとか、カップもいいな。倒れそうもないどっしりとしたやつ」
「ソーサーの無いやつってこと?」
「そう。毎日使えるだろう」
「え~」
「シンプルなのがいいな」
「え~」
「頼んだぞ」
「記憶の片隅に残しておく」
「ど真ん中に残せ。
それより、何があった」
「えっ」
「何かあったろう」
「………」
「今度行くからその時に聞く」
「いいよ。私の心配は」
「いいわけあるか!泣いてたんだろう」
「もう子供じゃないから」
「大人になったら従兄妹は助け合ったら駄目なのか?」
「分かった。でもそっちに行く」
「まさか叔父様か叔母様??」
「お母様に怒られちゃった」
「珍しいな。
分かった。来週中に来い。
朝でも夜でもいいから。先触れなんかいらないからな」
「うん」
「第三の隊長と副隊長とは仲良くやってるか」
「相変わらず面倒見てくれるわ」
「そうか。ステファニーにもたまには会いたいな」
「今度、私が終わる時間に来てよ。ステファニーと予定合わせるから」
「手土産に迷うな。またお揃いのリボンにするか」
「喜ぶわね」
「アネット、来てたのか」
「ジェームズ!?大きくなり過ぎて!」
「もう15だよ。普通だよ」
「こんなにちっちゃかったのに」
「もはや人間じゃないよソレ」
「小さい頃に抱っこしたのに」
「よく僕の頭にお菓子をボロボロ落としてたよね」
「小さいのによく覚えてるわね。
こちら婚約者のレヴィン・バトラーズ公爵令息。彼は従弟のジェームズ・パッセン伯爵令息です」
「よろしく」
「よ、よろしくお願いします。
アネット、よく捕まえたな。高貴過ぎるだろう」
「そうなのよね」
「私が頼み込んで婚約してもらったんだ」
「そうなんですか?モテそうですね」
「そうなのよ」
「私はアネット以外興味がない」
「アネットが公爵夫人か…大丈夫か?」
「………ジェームズこそ成績は?」
「あ!お腹空いたから食べてくるよ。
皆様、失礼します」
その後も挨拶回りをして帰路についた。
「すごく仲がいいんだな」
「親戚ですから」
「令嬢が少なかったな」
「私が参加するから意地悪をする令嬢は呼ばないんです。変なことを言ってくる令息も排除された夜会です」
「安全な世界というわけだな」
「あれだけ清い世界で育つと外の夜会や茶会が良くは感じないですね。何かしら絡まれますから」
私を送ると帰っていった。
***バトラーズ家
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それにサックス侯爵令息が強敵でした。
完全にアネットの心を掴んでいます」
「結婚出来ない従兄だろう」
「そうなのですが、まるで恋人の様でした」
「確かに凄く仲がいいと調査報告書に書いてあったができてるとは書いてなかったぞ」
「従兄の方が横に婚約者がいようがお構いなしです」
「確か困窮した家門の令嬢だったな。サックス家が態々そんな令嬢を選ぶのはおかしいと思っていたが、多分交換条件で成立した婚約なんだろう。
金の支援の代わりに口出しするなと。
令嬢は不満を表さなかったろう?」
「結婚は出来ないが愛し続けるということですね」
「予想でしかないがな。
下手にちょっかいかけるなよ。駆け落ちなんてことになったら困るからな。
必要なのは批判じゃないぞ。話を聞くとアネットには世話を焼いてやるのがいい。
自分の娘か妹の様に可愛がれ」
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