【完結】ずっと好きだった

ユユ

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キャサリン・コーネル(執着)

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名門コーネル侯爵家の次女に生まれた。
裕福で昔 王子妃を数度輩出した家門だった。

二つ上の姉とは異母姉妹だった。
姉を産んだ時に正妻が子が産めなくなってしまい、新たに娶ったのが私の母だった。

母は私を産んで一年後に弟を産んだ。
跡継ぎを産んだことにより母も私も待遇が良くなった。

だけど妾の子というものは差別されがちだった。婚約させられたが侯爵家の三男だった。
跡継ぎじゃないと意味がない。

姉は優秀でいつも比べられていた。
家でも学校でも社交でも。
ある日私は姉が恋していることに気が付いた。

相手は姉と同い歳のレヴィン・バトラーズ公爵令息だった。
私の取り柄は姉より美しい容姿に美しい金髪だった。
嫡男で力のある家門。私に相応しいと思った。

令息が出ると聞けば夜会に出向き話しかけたが素っ気なくあしらわれただけだった。

何度かこっそり縁談の申し込みをしたが、姉にバレて、彼には婚約者がいるからやめなさいと言われたが心変わりをさせたもの勝ちだと思った。

だが、それが別の女が彼の心を変えるとは思ってもいなかった。

彼が王女殿下と踊り、婚約者と踊り、次を狙っていたら、彼は別の令嬢の手を取っていた。

私の取り柄など霞むほどの優れた容姿の令嬢だった。


その後、彼の婚約破棄と元婚約者の処刑を知って何度か縁談の申し込みをしたが、何度か目の申し込みの返事が私宛ではなく父宛に届いてしまった事でバレてしまった。

『キャサリン!お前は何をしているんだ!
手紙には何度も迷惑だと書いてある…彼に婚約者がいた時から勝手に送っていたのか!』

『だって三男なんて嫌ですわ。レヴィン様がいいです』

『お前など相手にされるわけがない。
二度とするなよ!
はあ~謝罪に行かなくては』

長い謹慎から開けたら彼は伯爵令嬢と婚約していた。
 
伯爵令嬢なんて…きっと元婚約者との醜聞で相手がいなかったのかも。改めて申し込めば私を選んでくれるはず!

社会勉強と嘘を言って父の登城について行った。騎士服の彼を見たくて浮かれて侍女と迷っていたところに声をかけたら無礼な態度を取られカッとなって使用人を叩いた。
髪を掴むとズルッと髪が取れた。

ウィッグ!? 
本来の髪が露わになり眼鏡が外れた顔を見たら彼と踊っていた女だった。

侍女が蹴ろうとした時に“第四”という者が現れ侍女が失禁してしまった。
女は私に後始末をしろという。

駆けつけたバトラーズ公爵令息の姿を見たらホッとした。やっと私を選択肢に入れてくれたのだと。

だけど彼は私の言葉に耳を貸すどころか、あの女が近衛騎士に守られながら姿を消すと私を殴った。

次期公爵で近衛騎士団の副隊長の彼が……私を、女性を殴るの!?

『彼女は次期バトラーズ公爵夫人だ』



もうそこからは落ち続けた。
騒ぎを知った父からはテーブルとソファしかない空き部屋に長期の監禁を言い渡された。

廃棄するために置いてあったらしいソファは寝心地が悪くベッドで寝たいと言っても嫌なら床で寝ろと言われた。

お茶の時間などなく、喉が乾けば水差しの水を自分で注いで喉を潤した。菓子など与えてもらえない。

朝は昨夜の残りの乾燥したパンとスープとサラダ。昼はパンと卵とソーセージ。夜はパンと鶏肉のスープとサラダ。平民の食事のようだった。

メイドに不満を言うと真顔で返された。

『平民の日常食はもっと粗末ですよ。
スープに具はこんなに入っていません』

本も与えられず、使用人達の服やエプロンなどの繕い作業や食器磨きなどをやらされた。
使用人の仕事じゃないの!

そして数日後、久しぶりに部屋から出されて居間に行くと姉が涙を流していた。

『今日の茶会で何を言われたか教えてあげなさい』

父がそう促すと姉は私を睨みつけた。

『お茶会でご夫人や令嬢達に何て言われたかわかる?

“マリアナ様の妹様は王宮で暴力を振るった野蛮人だと噂になっているわよ”

“侍女の粗相の後始末を這い蹲ってする下女らしい。妾の娘ではなく下女の娘だったのね”

“名門侯爵家だったと思っていたのに、お付き合いは程々が良さそうね”

散々だったわ!侯爵家に泥を塗って!!』


『キャサリン、昨夜お前の婚約は破棄された。
侯爵が直々に訪ねてこられて、今すぐ破婚に同意すれば慰謝料を求めないと言われて同意した。

もうお前は傷者だ。いくら我が家と縁続きになりたいと思っても王宮で暴力を振うような取り柄のない女を娶るリスクを背負いたい家門はない。

多額の持参金を持たせて引き取らせる気もない』

『私の美しさがあれば、』

『美しい?
お前が殴った令嬢を見なかったのか?美貌でどうこうできるというのはあのレベルの美貌のことを言うんだ。

お前など、標準よりはマシ程度のものだ。

よりにもよってバトラーズ家を怒らせたばかりか王族もにも疎まれてしまった。

ヨシュアに安定した侯爵家を継がせたかったのに』


監禁部屋に戻されると侍女が泣いていた。

私の専属侍女で粗相をしてしまった人だ。

『除籍されました。ううっ……』

彼女は子爵家の次女だった。

『バトラーズ公爵令息はあの顔が醜くなれば捨てるわね。サリー、顔を醜くする何かはない?隠すこともできないくらい醜くなって治らなければいいわね』

『酸で溶かすという話を聞いたことがございます』

『入手してちょうだい』


監禁は解けて教会へ通う許可だけ得られた。
薬瓶を持って侍女と王宮に入った。姉の身分証を使ってね。

髪色を変えあの忌まわしい場所を中心に絵画などをみているフリをして待つが現れなかったため、怪しまれないうちに帰ろうとしたらやっと現れた。

花を摘みに向かう女の後を付けた。鏡の前で髪を直すフリをして出てくるのを待った。

そして顔に目掛けて液体を掛けたのに天井から人が落ちてきて私を蹴った。
手元が狂って顔には掛けられなかったが肩周辺にかかって顔を歪めている。

ああ…この顔が見たかった。


すぐに牢に入れられて父が王女殿下とバトラーズ公爵令息と面会に来た。

あの様子ではもう女としては終わりだものね。顔が綺麗でも抱く気にはならないでしょう。恐ろしい痕が残ると聞いたもの。

『キャサリン…お前!』

『姉の身分証とウィッグで貴方の忘れ物を届けに来たと言って入り込んだそうです。
侯爵、取り返しがつかないことをしてくれましたね』

『何とお詫びして良いものか』

『詫びなどないわ!もう私のアネットは元には戻らないのよ!どれほど美しい身体をしていたか!』

『王女殿下、どうか!侯爵家は、』

『次期公爵夫人にこんなことをして無事で済むとでも?』

『バトラーズ様、私があの女の代わりに、』

『まだ馬鹿な夢を見ているのか。アネットがいなくてもお前を選ぶことはない。

それにアネットと別れる気はない』

どうして!もうあの姿では!

『確かに美しい子だが、私はアネットの内面に惚れたんだ。努力家で人を気遣いながら一生懸命に働く彼女が好きなんだ。平民でも貴族でも分け隔てなく交流し、動物型のデザートが可愛すぎてスプーンを入れられないと涙目になる可愛いアネットを愛しているんだ。

お前を楽には死なせない』









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