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抜糸
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無事に抜糸を終えてサルト領に戻ってきた。
陛下もステファニーも、私とミーシェとシーナのお揃いのエプロン姿を見て悶えていた。
エプロンの色がヒューゼル隊長の瞳と似た色なのは偶然だよね?
エプロンをもらった日の夜からハヴィエル様は執拗に私を攻め上げた。毎朝メイドさんがニコニコしながら部屋に入ってくる。
恥ずかしい。
前日の昼にはライアンとミーシェはお別れ会的な何かをしてもらったらしい。聞いても二人とも目を逸らして口を割らない。
シーナはバーンズ隊長を護衛に指名してだっこ散歩。夜は陛下の膝の上で夕食を食べさせてもらい、ロランが不機嫌。
その上、エヴァンが跪き、指輪を差し出してミーシェに求婚するも即振られた。
ロランは翌日、一緒に馬車に乗った。
シオン殿下に降ろされかけて入り口にしがみ付くも、力負けしてシオン殿下にだっこという拘束をされ もがいて泣いていた。
陛下はデレデレで手を振っていた。
シーナが陛下の頬にキスをしたからだ。
『ジイジ、またね。 チュッ』
『シーちゃん!ジイジのこと忘れたらダメだよ』
『夢でだっこしてね!』
『シーちゃんっ!!』
一ヶ月後、突然王家のお忍び馬車が到着した。
「アネット、あの馬車分かるか?大きくて豪華そうだが家紋がない」
「!! 急いで外に出てください!!」
ハヴィエル様と走って外に出ると、丁度馬車が止まった。
中から出てきたのは痩せたロラン様だった。
そしてエスも出て来た。門の方を見ると近衛騎士達が待機していた。
「エス、近衛の皆様を入れてください」
ピーッ
エスが呼び笛で合図を送ると8人の騎馬隊が門を抜けて来た。
ひとまず騎士に部屋を与え、ロランとエスに事情を聞くために応接間に通した。
「ハヴィエル様、アネット様。先触れなく押しかけてごめんなさい」
「どうしたのかな?」
「これ、お祖父様から」
手紙を渡されて、読んでみるとこういう事だった。
“シーナシックで食事が喉を通らずずっとスープとジュースのみ。夜もあまり眠れずお手上げだ。
頼む、預かってくれ”
「なるほど」
「ロラン殿下の症状の原因がシーナシックだと分かったのは五日前。手紙のやり取りを先にしていては一週間遅れてしまう。移動にも数日かかるので、その頃は移動に耐えられないと判断した」
「了承した。
シーナを連れて来てくれ」
数分後、シーナが現れるとロランは抱きついた。
「うぐっ…ううっ……」
泣いてしがみ付くロランに困惑しながらも座らせてシーナはロランの頭を優しく撫でた。
二、三分で眠りに落ちた。
「ロランはどうしちゃったの?」
「シーナと離れたことが寂し過ぎて心が弱ってしまったの。
食事が飲み込めなくて、よく眠れなくて、体も弱ってしまったの」
「そんなに寂しいの?」
「そのようね。痩せてしまって可哀想に」
シーナに近い部屋を用意してあげたけど、結局朝にはシーナのベッドで寝ている。
「ロラン、一人じゃ寝れない?」
「シーナの顔を見ていないと寝られない」
「困ったわね」
「いーよ。シーナのベッド半分貸してあげる」
「本当!?」
「貸しね」
「………」
段々と肉付きが戻り、帰そうとするも断固拒否。
三ヶ月滞在してエスが無理矢理回収し王都へ向かって行ったが、また一ヶ月を過ぎると痩せてクマを作って舞い戻った。
それを繰り返し三回目。
今は陛下の誕生日で王都に来ている。
「また痩せてしまった」
「陛下、お医者様はなんと?」
「お手上げだそうだ。無理に食べさせても余計に悪くなると言われた。
放っておけば死んでしまうから望みを叶えてやるしかない。
サルト男爵、ひとまず学園が始まるまで、そのまま預かってくれないか。
学園に通わせるかどうかはその時に判断するつもりだ」
「王子教育はどうなさるのですか」
「むしろ私が聞きたい。ライアンをどう育てたのだ。同じように育てて貰えれば」
「ライアンはほとんど自習なのです。
教師は分からない所や補強をしている程度なのです」
「今はどうしてる」
「引き続きやっていますが領地について少しずつ教えています。
場合によっては学園へは通わないと言い出すかもしれません。
先生が、このペースだと学ぶことが無くなりそうだと仰っておられたので」
「ミーシェは?」
「あの子はどうしたいのかよく分かりません。
勉強は普通以上に出来ていますが人とは視点が違うようで、学園に通わせても馴染まないかもしれません。
馴染まない程度ならいいですが問題を起こしそうで」
「問題?」
「気に入らない相手への実力行使です」
「あ~」
「エヴァン殿下はどうですか」
「少しはやる気がでたかな。
今のままじゃ絶対にミーシェはエヴァンを眼中にいれないと言った。
シーちゃんは?ロランを嫌がっていないか?」
「ロラン殿下の方が数ヶ月早く生まれていますが、弟が甘えているくらいに思って受け入れています」
「まさかロランがあそこまで……」
「心の医者で一番の実力者はいませんか?
いっそ他国の医者も考えてみては?」
「国内で一番と言われている者を担当医にしたのだが駄目だった。この辺の他国の医者は評判は良いとも悪いとも聞かないし、微妙な関係の国には王族の治療を頼めない」
「そうですか。シーナが最有力の医者であり毒でもあるのですね」
「サルトは誰に継がせるつもりかな」
「悩みます。今のところはライアンなのでしょうが、ライアンが良い子過ぎて。
ミーシェとシーナを見ていたら、逆にライアンが異端に見えてくるのです。
もしかしたら我慢をしているのではないかと」
「やりたい事があると?」
「あるのか、これから見つけるのか、見つけてはいけないと思っているのか。
まだ時間はありますから、ゆっくり向き合います」
陛下もステファニーも、私とミーシェとシーナのお揃いのエプロン姿を見て悶えていた。
エプロンの色がヒューゼル隊長の瞳と似た色なのは偶然だよね?
エプロンをもらった日の夜からハヴィエル様は執拗に私を攻め上げた。毎朝メイドさんがニコニコしながら部屋に入ってくる。
恥ずかしい。
前日の昼にはライアンとミーシェはお別れ会的な何かをしてもらったらしい。聞いても二人とも目を逸らして口を割らない。
シーナはバーンズ隊長を護衛に指名してだっこ散歩。夜は陛下の膝の上で夕食を食べさせてもらい、ロランが不機嫌。
その上、エヴァンが跪き、指輪を差し出してミーシェに求婚するも即振られた。
ロランは翌日、一緒に馬車に乗った。
シオン殿下に降ろされかけて入り口にしがみ付くも、力負けしてシオン殿下にだっこという拘束をされ もがいて泣いていた。
陛下はデレデレで手を振っていた。
シーナが陛下の頬にキスをしたからだ。
『ジイジ、またね。 チュッ』
『シーちゃん!ジイジのこと忘れたらダメだよ』
『夢でだっこしてね!』
『シーちゃんっ!!』
一ヶ月後、突然王家のお忍び馬車が到着した。
「アネット、あの馬車分かるか?大きくて豪華そうだが家紋がない」
「!! 急いで外に出てください!!」
ハヴィエル様と走って外に出ると、丁度馬車が止まった。
中から出てきたのは痩せたロラン様だった。
そしてエスも出て来た。門の方を見ると近衛騎士達が待機していた。
「エス、近衛の皆様を入れてください」
ピーッ
エスが呼び笛で合図を送ると8人の騎馬隊が門を抜けて来た。
ひとまず騎士に部屋を与え、ロランとエスに事情を聞くために応接間に通した。
「ハヴィエル様、アネット様。先触れなく押しかけてごめんなさい」
「どうしたのかな?」
「これ、お祖父様から」
手紙を渡されて、読んでみるとこういう事だった。
“シーナシックで食事が喉を通らずずっとスープとジュースのみ。夜もあまり眠れずお手上げだ。
頼む、預かってくれ”
「なるほど」
「ロラン殿下の症状の原因がシーナシックだと分かったのは五日前。手紙のやり取りを先にしていては一週間遅れてしまう。移動にも数日かかるので、その頃は移動に耐えられないと判断した」
「了承した。
シーナを連れて来てくれ」
数分後、シーナが現れるとロランは抱きついた。
「うぐっ…ううっ……」
泣いてしがみ付くロランに困惑しながらも座らせてシーナはロランの頭を優しく撫でた。
二、三分で眠りに落ちた。
「ロランはどうしちゃったの?」
「シーナと離れたことが寂し過ぎて心が弱ってしまったの。
食事が飲み込めなくて、よく眠れなくて、体も弱ってしまったの」
「そんなに寂しいの?」
「そのようね。痩せてしまって可哀想に」
シーナに近い部屋を用意してあげたけど、結局朝にはシーナのベッドで寝ている。
「ロラン、一人じゃ寝れない?」
「シーナの顔を見ていないと寝られない」
「困ったわね」
「いーよ。シーナのベッド半分貸してあげる」
「本当!?」
「貸しね」
「………」
段々と肉付きが戻り、帰そうとするも断固拒否。
三ヶ月滞在してエスが無理矢理回収し王都へ向かって行ったが、また一ヶ月を過ぎると痩せてクマを作って舞い戻った。
それを繰り返し三回目。
今は陛下の誕生日で王都に来ている。
「また痩せてしまった」
「陛下、お医者様はなんと?」
「お手上げだそうだ。無理に食べさせても余計に悪くなると言われた。
放っておけば死んでしまうから望みを叶えてやるしかない。
サルト男爵、ひとまず学園が始まるまで、そのまま預かってくれないか。
学園に通わせるかどうかはその時に判断するつもりだ」
「王子教育はどうなさるのですか」
「むしろ私が聞きたい。ライアンをどう育てたのだ。同じように育てて貰えれば」
「ライアンはほとんど自習なのです。
教師は分からない所や補強をしている程度なのです」
「今はどうしてる」
「引き続きやっていますが領地について少しずつ教えています。
場合によっては学園へは通わないと言い出すかもしれません。
先生が、このペースだと学ぶことが無くなりそうだと仰っておられたので」
「ミーシェは?」
「あの子はどうしたいのかよく分かりません。
勉強は普通以上に出来ていますが人とは視点が違うようで、学園に通わせても馴染まないかもしれません。
馴染まない程度ならいいですが問題を起こしそうで」
「問題?」
「気に入らない相手への実力行使です」
「あ~」
「エヴァン殿下はどうですか」
「少しはやる気がでたかな。
今のままじゃ絶対にミーシェはエヴァンを眼中にいれないと言った。
シーちゃんは?ロランを嫌がっていないか?」
「ロラン殿下の方が数ヶ月早く生まれていますが、弟が甘えているくらいに思って受け入れています」
「まさかロランがあそこまで……」
「心の医者で一番の実力者はいませんか?
いっそ他国の医者も考えてみては?」
「国内で一番と言われている者を担当医にしたのだが駄目だった。この辺の他国の医者は評判は良いとも悪いとも聞かないし、微妙な関係の国には王族の治療を頼めない」
「そうですか。シーナが最有力の医者であり毒でもあるのですね」
「サルトは誰に継がせるつもりかな」
「悩みます。今のところはライアンなのでしょうが、ライアンが良い子過ぎて。
ミーシェとシーナを見ていたら、逆にライアンが異端に見えてくるのです。
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「やりたい事があると?」
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