【完結】ずっと好きだった

ユユ

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双子の学園生活

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あれから三年以上経ち、エヴァン達は最終学年に進級した。

そこにはライアン、ミーシェ、イザベルの姿もあった。

だが学校ではエヴァンはミーシェと距離をとっていた。それが約束だったから。

ミーシェはエスの死から執着が無くなっていた。

表情が無く無口で淡々と学園生活を送っていた。美しい男爵令嬢は様々な思惑の者を近付けた。

ミーシェを妻にできたらと思う令息。
伯爵家以上の令息に至っては正妻にはできないがと不純な気持ちで近寄る者もいる。
男爵令息や平民でも裕福だからチャンスはあると思う者もいる。

そんな男達からの誘いに眉ひとつ動かさない。

あまりに酷いと、サルト家の位置付けを知っている賢い貴族が注意をするかライアンに知らせる。
そしてライアンが間に入るのだ。

ライアンとて男爵令息、普通なら大した障害にはならないはずだが全てにおいて優秀で口でも勝てずに惨敗。身分で勝負をしようとするとエヴァンが出てきてしまう。

ミーシェは気に入らない令嬢から意地悪を言われようと無視。押したり足をかけたりは高確率で失敗する。

ムキになって飲み物をかけた者がいたが、ミーシェは拭かない。授業が始まり気が付いた教師が尋ねると“○○に聞いてください”と言ってしまうので、学園側は名指しされた令嬢の家に警告文を出す。

警告文は軽いものでも五枚で退学。
三枚目からは停学付きになり寮にもいられない。内容が酷ければ一発停学・退学も有り得るのだ。

机の中のものをぐちゃぐちゃにされると、中の物を全部床に出して座る。それで問題が明るみになる。その程度では犯人が誰だか分からないはずなのに翌日犯人の机に“犯人には制裁を”と書かれたメッセージカードが入れられる。

怯えて自首をして謝る者はそれで良し。
無視する者には細やかな制裁があった。
筆入れの中に虫が入っていたり、机の中の物が食堂や門の外に置かれていたり地味な仕返しだ。

ある日、婚約者を誑かしたと激怒してミーシェを殴ろうとしたが全部避けられ、次の日には男子生徒に押さえ付けさせて殴った。

目撃者がライアンを呼びに行ったが間に合わなかった。

数発平手打ちをし終えたので拘束を解かれた。
そこにライアンがやってきて拘束していた二人のうち一人を一発殴って気絶させ、もう一人は窓を開けると肩に抱えて窓の外へ。
膝を窓枠にかけ、ライアンは脛に寄り掛かることで転落を防いでいた。

令嬢はライアンの恐ろしさを初めて目の当たりにした。必ず側にいるエヴァンに令嬢が縋った。

『殿下、彼を止めてください』

『何で？』

『死んでしまいます！』

『かもな』

『殿下！』

『自分で助けたらいいじゃないか』

『っ！！』

エヴァンは窓の外を覗いて訪ねた。

『おい、何で令嬢に暴力を振るった』

『抑えただけで殴ったのはパメラです！
この女がパメラの婚約者を誑かしたんです！
助けて！』

『同じだ馬鹿』

エヴァンは腕を組み呆れた顔をしながら令嬢にも話しかけた。

『おい、こうなったのはお前のせいじゃないか。自分で後始末をしろよ。
男を使って押さえ付けた所で平手打ちを数発か。ご立派な令嬢を育て上げてご両親はさぞ鼻が高いのだろうな。父上に直々に褒めていただくとしよう』

『両親は関係ありません！』

その言葉にライアンが鼻で笑う。

『馬鹿だな。何のための貴族で何のための保証人だ。

お前の全ての行動は家門で責めを受けねばならない。それが貴族だ。
そして入学時に父親に保証人の署名をさせたろう。お前がしでかせば父親にも責任を問うことになる。

こいつらは私が直々に制裁してやっているから退学にはならないだろう。
だがお前は退学だろうな。

婚約は破棄されるし慰謝料も請求されて、自由の身になった元婚約者は嬉々とミーシェに近寄るだろう。
まあ、今まで話したこともないだろうがな』

『そんな！』

『お前もミーシェに殴られれば相殺に近くなるだろうな。どうする？ミーシェ』

ミーシェは首を振る。

『殴る気がないらしい。退学決定だ』

すると令嬢はミーシェに泣いて縋り出した。

『お願いします！私を殴ってください！』

『面倒くさい』

ミーシェはそう言って席に着いてしまった。

授業をしに現れた男性教師が騒ぎに気付き窓を覗くと意識朦朧とした令息を発見。

『ライアン、引き上げるぞ』

『ミーシェに手を出したんです』

『ずっとこのままでは授業にならん』

『でも、こいつ静かになったでしょ？』

『ライアン、頼む！』

『先生に頼まれたら仕方ありませんね』

そう言って令息を引き上げたときに教師はやっと気が付いた。もう一人床でのびていた。

『エヴァン殿下も止めてください』

『へ？止めないですよ。親友の妹がこの二人に押さえ付けられて、あの女に何度も平手打ちされたんだ。止めるわけがありません。

もし止めたら私がライアンに嫌われますからね』

『あの女？』

『ミーシェの側にいる女です』

教師はバッとミーシェの方を見ると普通に座っている。
ミーシェの席に近付き正面に回りこんだ。

『ミーシェさん！』

頬が赤く染まり腫れ、口の端から血が出ていたのだ。

『何てことだ！』

そして令嬢がミーシェの足元で土下座をして泣いている。

『あ～！！』

声を上げる教師にミーシェは。

『おかまいなく。授業をお願いします』

『できるかっ』

教師が笛で合図を送る。廊下に出て駆けつけた警備員達に指示を出した。

『倒れている令息達を医務室へ頼みます。
着いたら殴られた令嬢の治療をしてほしいと言って医師を校長室に向かわせてください。

全員自習！

ライアン、エヴァン殿下、ミーシェさん、土下座の人は校長室へ』

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