【完結】ずっと好きだった

ユユ

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ケイン・ワッツ(ミーシェの存在)

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【 ケインの視点 】


怪我をしたミーシェ嬢の為に治るまで双子は王宮に移された。

私もジスランを誘ってエヴァンを訪ねた。

「ケイン、ジスラン、どうした」

「私はケインに誘われました」

「人数を多くした方がいいと思いました」

「ありがとうございます、ケイン」

お礼を言ったのはライアンだった。

「ミーシェ嬢は」

「ちょっと退屈してますね、良ければ会いますか?」

そんなつもりは無かったが結構ですとは言えなくて四人でミーシェ嬢に会いに行ったのだが……。

ジ「えっと、何しているのかな?」

ミ「退屈なので」

ジ「時間潰しの仕方が独特だね」

ミ「……やりますか?」

ジ「教えてくれる?」

寝巻きにガウンを羽織り、ジスランの側に立つと短剣を手渡した。

ミ「短剣はこうやって持って、投げ切る時に目標の延長線のこの位置から下に下げては駄目。的に近寄ったからあたるよね」

ジ「地味なプレッシャーは止めてよ」

トンッ

ジ「おっ、出来た!俺素質あるかも!」

ミ「その判断、早過ぎじゃない?」

ジ「褒めて伸ばしてくれよ~」

ミ「有料で」

ジ「友情待遇で」

ミ「いつからそうなった」

ジ「前からだよ」

ミ「…ジスランは記憶に問題がありそうね」

エ「何で仲良くなってるんだよ」

ジ「いいじゃないですか、エヴァン。私は才能があるんですよ」

ミ「エヴァンは天井 出来るようになった?」

エ「あれ、難しいし怖いんだよ。刺さらなかったら短剣が降ってくるだろう」

ミ「エヴァン、お腹空いた」

エ「ミーシェは自由だな。ちょっと早いけど食事にするか」


驚いた。ミーシェ嬢が普通に沢山話してる。

ミーシェ嬢もエヴァンに丁寧な言葉は使わない。それどころか食事を用意しろと言わんばかりに“お腹空いた”と言った。

エヴァンもいつものことのように対応する。
学園で全く口も聞かずに目も合わさない二人とは思えなかった。

ジスランの溶け込み方はすごい。ミーシェ嬢は早くもジスランと呼んだ。

ジスランは普段、自分のことを“俺”と言うんだな。



ジ「それじゃ、すぐ腹が減るよな。知ってたら差し入れ考えたのに」

ミ「いいよ。別に」

口の中が切れていて頬も腫れているのであまり噛まなくてもいいものしか出てきていないから腹が減るのが早いのだと知った。

ラ「これも食べるか?」

ミ「ライアンのが無くなっちゃう」

ラ「別の物を食べればいいだけだ。好きな物を好きなだけ食べろ」

ミ「うん」


ミーシェ嬢が笑ったのを初めて見た瞬間だった。双子だって言うのに幾つか歳上かのようにミーシェ嬢を包み込むように見つめるライアンと、頬を染めるエヴァン、息を呑むジスラン。

ジスラン、頼むからミーシェ嬢に惚れないでくれ。


ケ「ミーシェ嬢、あの的は君が決めたの?」

ミ「位置? 違うよ。勝手に設置していった」

ジ「誰が?」

ミ「近衛騎士団の人」

ジ「近衛!?」

ケ「全部刺せるの?」

ミ「刺せるよ」

ジ「すごっ。ライアンは?」

ラ「どうだろう」

エ「ミーシェ、これ食べれるんじゃない?
思ってたより柔らかいよ」

そう言って自身の皿からミーシェ嬢の皿に移した。それをいつもの事という感じで口にする。

ミ「本当だ」

エ「次からはメニューに加えるように言っておく」

ミ「ありがとう」

本当にエヴァンの片思いか?

だがその疑問はミーシェ嬢が登校を再開して一週間もしない内に答えが出た。




「ライアン、エスの件で知らせがある。放課後、一緒に来てくれないか」

?」

「そうだ」

「同席してもいいですか」

「ケイン、遠慮してくれ」

「エヴァン、この二人ならいいだろう。

ケイン、ジスラン、離れた距離で立ち会ってみてくれますか」



そして王宮に着くと通されたのは謁見の間だった。とんでもないところについて来てしまったと思った。

壁際に立ちジスランと共に息を潜めた。


国王陛下が入室されると近衛騎士団の団長と見慣れない騎士服の者が数人入室した。

「ミーシェ、ライアン。こっちへ来い」

国王が呼ぶと二人は近寄り側に立った。

「ジェイ、運んでくれ」

「はっ!」

見慣れない騎士服の一人はジェイというようだ。彼は箱を持ち、陛下の前に置かれた小さなテーブルのようなものの上に置いた。

「ミーシェ、エスの遺骨だ」

「ジェイ?」

「エスが帰ってきたんだよ」

そう言って、ジェイという騎士はネックレスを手渡した。

それを見るなりミーシェは幼い子供のように騎士を見つめた。

箱から骨壷が取り出されるとミーシェは泣き叫んで骨壷を抱きしめた。

「何で!何でっ!!」

ライアンと国王陛下がミシェルの背中を摩っている。

「お嫁さんにっ……して、……くれるって」

「すまない。ミーシェ」

国王陛下が辛そうに謝っているし、ジェイという騎士は、

「国のため、国民のため、任務を果たし殉職した。褒めてやってくれないか、ミーシェ」

と言いつつも自身も拳を握りしめていた。


エヴァンが私とジスランを連れて謁見の間を出た。

別の部屋に着くと人払いをした。

「二人に聞きたい。卒業後に私の側近になってくれるだろうか。今返事が聞きたい」

「光栄です。エヴァン殿下。忠誠を誓います」

「忠誠を近いお側におります」



その言葉を聞いてエヴァンは深呼吸をした。

「これから話すことは漏らすなよ」

「「はい」」

「あの遺骨はエスと言って、近衛騎士団の第四と密かに呼ばれる影だ。エスは通称。

スカウトされ、尋常じゃない適正テストや訓練を受けるし、死か失踪を装い存在を消す。
元の身分は平民から元王族まで様々だ。

エスは第四のナンバー2で、二人は想い合っていた。口約束で婚約もしていた。
まあ、生きていたとしてそれが有効だったかどうかは定かではないと思っていた。

だが、あのネックレスを見て分かった。エスもミーシェを想っていたと。
ネックレスはミーシェとお揃いだった」

「任務中に殺されたのですか?」

「ミーシェが私達より一つ歳上で、入学を一年ずらしただろう?あれは入学直前にある国で疫病が流行り出していると情報が入った。

それで事実確認のためにエスを派遣した。
情報は事実でエスも感染してしまった。
自分の限界と国境までの距離があったことも理由だが、一番は病を持ち込まないようにだろう、自害を選んだ。

遺書のような報告が伝書で届いた。そして北側の国境を封鎖した。

理由が疫病だから終息しないと捜索も出来なかった。やっと入念に火葬してから連れて帰って来れたんだ」

「我々は守られているのですね」

「そうだ。特に今回は該当の国から王女の留学の話があって、受け入れたら私達と同じ年に入学する予定だった。

後から分かったが、万が一の為に王女の避難先にしたかったらしい。ついでに私との友好を深めようと言う作戦だったようだ」

「つまり、その話が持ち上がった頃にはすでに該当の国の中枢では疫病を把握していたのですね」

「その通り。
奴等が正直に状況を説明して、救いを乞えば、国境で一週間足止めして、感染の有無を確認して保護することができた。

何より第四が調査に赴くことも無かったんだ。殺されたに近い」

「ミーシェ嬢の気持ちに区切りがつくといいですね」

「昔のミーシェに戻って欲しいよ」



その後、ミーシェ嬢は数日学園を休んでそのまま長期休暇に突入した。













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