【完結】ずっと好きだった

ユユ

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帝国 第三王子ブリアック(後ろ盾)

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【ブリアックの視点】


時間を置いて私の部屋に訪ねて来たのはシオン殿下だった。

「ステファニーと会う前に話がしたくて参りました」

「お掛け下さい、シオン殿下」

彼は武力の国から婿入りして来た王子で、彼の祖国は帝国にとって友好国だ。
昔、何度か交流があった。

「こんな風に再会するとは思いませんでした」

「そうですね。シオン殿下がこの国の方になるとは意外でした」

「私も国を出るつもりはありませんでした。

あの時は婚約者と兄の密会を目撃してしまって、あそこに居たくなくて外遊していた時にこの国に来て、私が愚かで王女に無礼を働いたのです。

その事に私は気がついていませんでした。

陛下から王女との縁談の話が出た時に、言葉を遮って王女が発した言葉は“適さない”でした。

自分が嫁ぐなら自分の国ではないから愚かな王子がどうしようと構わないが、この国に婿入りさせるなら害にしかならないから不要だと言われたのです。

私自身が愚行に気が付いていなかったので、侮辱と捉えて腹が立ちました。 

帰国の時に、次期女王だからと挨拶をした時に理由を聞いたのです。

名ばかり外遊で、税金を無駄遣いする無能王子と言われました。

周辺諸国と友好な関係をと言いつつ根拠も無く蔑むのは何故か。

まあ、道楽は他所でやれ、二度と来るなという意味だったと思います。

私はもう一度訪れさせて欲しいとお願いして国に帰り、この国の再調査を命じたら鼻で笑われました。勝手に勘違いをして最後まで聞かなかったのはお前だろうって。

実は、待望の一人っ子だと聞いて勝手に我儘王女と決めつけていたのです。

改めて調査報告を聞いて愕然としました。
そして思い出したのです。私が王女にとり続けた態度や言葉を。

もう私は恥ずかしくて。
勝手な思い込みで5歳も歳下の14歳の王女をいびったことになったからです。

それと同時に彼女だと思った。私の伴侶は彼女だと。
それでイエスと言ってくれるまで帰るつもりはないと告げて口説き落としたのです。二ヶ月半で済んで良かったですよ」

「それは……おめでとう?」

「ハハッ、いいですよ、おめでとうで。
でも結局、妻も息子達もアネットと彼女の子供達にとられてしまっていますけどね」

「それでもおめでとう?」

「ええ。婚姻の条件でしたし。

私が言いたいのは、それでもステファニーがいいということです。

そして私には祖国の後ろ盾がある。
くれぐれも、ステファニーとの話し合いには注意をして欲しい」

「肝に銘じます」

「では、失礼します」

「殿下も同席なさらないのですか」

「間に入ってステファニーの怒りの矛先になれと?嫌ですよ」

そう言って退室してしまった。
ステファニー王女の人物像が変わってしまった。

そして帝国はこの国を攻めてはいけない。
シオン殿下の国の男は平民から王族まで、素手でも戦えるし何でも武器にする。
金があれば武術を習うし、貴族は必須。
令嬢でさえ、何か一つ習う。

だからあの国に手を出さなかった。


兄上の思惑がどうであれ、兄上の判断は正しかった。





そして直ぐに呼ばれて兄上の部屋に行くとそこには見知らぬ美形の青年が兄上と親しげに話していた。

「ブリアック。彼がライアンだ。
ライアン、弟のブリアックで軍を任せている」

「初めまして、ブリアック殿下」

「兄とアクエリオンが世話になった」

「お気に召していただけたようで光栄です。

レオン殿下、随分と早いお戻りですが緊急の要件でも?」

「まあ、そうなのだが」

「無理にお話いただくことはございません。サルトに関わらなければそれで」

「………」

「レオン殿下、私は言いましたよね?」

「分かってる。何とか解決するから、頸動脈急所を見つめるのは止めてくれ」

「立派な頸動脈ですね」

「誤魔化してるのか、脅してるのかどっちだ?

いや、答えるな。
私達は友人だ。そうだろう?」

「殿下次第ですかね」

「なら友人だ」

そこに予定の人が来てしまった。
ライアン殿を帰すのだろうか。
確かまだ知らせたくないという雰囲気だったような。

「王女殿下とミーシェ様がお見えです」

「なるほど。同席しますよ」

「そうだな」

入室した王女が微妙な顔付きになったな。

「ミーシェ、こっちに来い」

「ライアン」

ミーシェ嬢は大人しくライアン殿の隣に座った。

レ「ライアン、実は父である帝王がミーシェを娶り、ライアンにも移住してもらい軍に入って貰いたいと。

拒否した場合、この国を攻め落とせと命じた」

ラ「次期帝王の貴方は?」

レ「反対したが、王太子を変えて他の者にやらせると言われた。私が拒否しても代わりを立てられてしまうので、私の方が良いだろうと訪れた。

弟達も全員この愚行に反対だ」

ス「陛下もミーシェも拒否しましたわ」

ラ「どうなさるおつもりですか」

レ「強制退位を考えている」

ラ「生死は」

レ「死を」

兄上、公言してしまったら……

ス「まずいのでは?」

レ「現帝王が子が産まれているのにも関わらず複数人娶っては飽きると入れ替えるため、荒れるのは必然。

こういう事には有能で、如何なる理由であっても帝王に危害を加えた王族は処刑と定められている。

私が死んだ後、弟の誰かが帝王となる。
現帝国のような愚行に走る者は残していない」

ブ「兄上が死ぬことはありません、私が、」

ラ「お待ちください。

王族でなければいいのでは?」

レ「いや、王族以外でも帝王に手を掛ければ罪に問われる。大罪だ」

ラ「王族以外でも“いかなる場合も”と定めていますか?」

レ「……ない」

ラ「でしたら、王族以外の者が殺ればいいのでは?正当性を当てがえばいいのですし、裁くのは生きているレオン殿下です」

レ「帝王は人望があって周りが従っているわけではない。同じ趣向の仲間が支えていたり、脅して従わせたりしているんだ」

ス「どの様な?」

レ「同じ趣向の持ち主とは違いに闇パーティを開いて招待し合う。
罪人や身寄りのない使用人、金に困った女を集めて参加者に使わせるんだ。

脅しは調査して何も無ければ色仕掛けだ。
しかも王がそろそろ飽きて入れ替えたいと思っている側妃、妾、愛人を使う。
対象者に軽度の興奮剤を密かに飲ませて、中度の興奮剤で発情させた女を連れて来て奉仕させる。

暗いし半分仮面を装着させるし、態と裕福な平民といった感じの服を着せる。
男はまさか王の女と思わずに抗えずに手を付ける。
そこを押さえるんだ。

女は浮気を理由に城から出され、男は極刑を回避させる代わりに王の駒になる」

ス「死んでいいわね」



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