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帝国(レオンとダイアナ)
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【 帝国 王太子レオンの視点 】
夜、不穏な情報を得て、アリバイ作りに夜、宰相に会っていた。
内容は退位を早めるかどうかの相談だった。
そこにミーシェの護衛騎士がやって来た。
『王太子殿下、帝王が兵を複数人連れて王太子妃宮に無理矢理押しかけました。宮の兵は抑え込まれ、扉を突破しました』
『宰相、急いで一緒に来てくれ!』
宮に入ると外番の兵の足元に6人の兵士が倒れていた。
『どういうことだ!』
外番の兵の顔は蒼白だった。
『陛下が兵を連れて押し入りました。
少し経つとグラースの護衛が……一人で……あっという間に』
中に入ると使用人が食堂に集められていた。
ミーシェの部屋の外では宮の兵は気を失い、父上が連れて来た兵4人は死んでいた。
中に入るとベッドは血の海で、ミーシェは返り血を浴びていた。
『ミーシェ!大丈夫か!』
『寝ていたら、誰かが私の体を弄っていて、私は咄嗟に護身用のナイフを振りました』
『私は護衛ですが、ミーシェ様の悲鳴を聞いてライアン様とこちらへ。私が外の兵を倒しました』
『私はミーシェに襲いかかる人影に剣を突き刺しました』
ベッドで死んでいたのは父上だった。
『陛下!陛下!』
『宰相、兵を使って無理矢理襲ったんだ。陛下は全裸だし、ソファの方に投げてある服は血がついていない。
自分で脱いで襲いかかったのは明らかだ』
『ですが、帝王に過剰です』
『真っ暗で誰だか分かるとでも?
これから強姦するのに、名乗りをあげてから襲うとでも?』
『そうですが、側妃候補ですよね』
『側妃候補なら、襲っている相手が誰だか分からねば、尚更貞操を守ろうとするだろう。
まだ婚約者でもない。今は治療のために滞在している他国の侯爵令嬢だ。
それに陛下の書いた誓約書がある。
手出しした時は反撃しても罪に問わないと。
控えが他国にある以上、言い逃れもできないぞ。
一緒に来た兵士達の死体が父上の愚行の証拠だ。
この宮の兵士や使用人も証人だ。其方の息子もいるぞ』
『パトリック!?』
『後は宰相に任せる。病死にするか、帝王が他国の十代の国賓に兵を向けて強姦を仕掛けて殺されたと発表するか、どちらか好きにしてくれ』
宰相は病死と発表した。
さて、ダイアナをどうしようか。
【 王太子付き第二側妃 ダイアナの視点】
どうやら陛下は今夜あの女を自分のモノにするみたいね。
父親に抱かれた女を正妃にしないはず。
は~。スッとするわ!
翌朝、部屋の外が騒がしかった。
バン!
「ダイアナ様は身支度の途中です!」
「身支度の必要は無くなった」
扉を乱暴に開けて、支度を手伝うメイドを退けた。
「父上を焚き付けてくれたようでご苦労であった」
「あ……」
「お前のお陰で、前帝王は地獄へ落ちた」
どういうこと!?
殿下の顔も声もとても冷淡で、だけど瞳に憎しみが籠っている。
怖い……でも私は他国の王女、王太子殿下の子の母親だから大丈夫。
そうよ、大丈夫だから狼狽えては駄目!
「話が見えません」
「父上は本当に人払いをするわけではない。
お前があること無いこと話して、焚き付けたのは侍従が聞いていた」
えっ……
「私は事実を…」
「帝国の王を死に追いやった気分はどうだ?
ミーシェを帝王に襲わせるなど、何様のつもりだ」
「そんなつもりは、」
「ライアン、ミーシェ」
殿下に呼ばれて入って来た客人の兄妹に驚いた。
特に女の方は見たこともない美しさだった。
これが同じ人間?
「ライアン、ミーシェ。此奴が帝王を焚き付けた側妃だ。ダイアナ、テーブルの椅子に座れ」
座ると、すぐ隣にライアンという兄が座った。
「ミーシェはここだ」
そう言って殿下は女を引き寄せて自身の膝の上に座らせた。
そして愛おしそうに髪を撫で、頬に口付けた。
「やっぱりデキていたではありませんか!」
「お前が父上を焚き付けたから、私が今日から帝王になった。だから契約は破棄されて、こうやって可愛がれる。礼を言うべきかな」
「レオン様、近いです」
「愛させてくれ」
「レオン様!?私もユゲット様も王太子殿下としか呼ぶことを許さないのに、その女には許すのですか!」
「お前とは価値が違うと言っただろう」
「私は妻です!貴方の子を二人も産んだ妻ですよ!」
「政略結婚だし、従属国に不要な姫を差し出せと帝王が言ったからお前の父親がお前を差し出した。
確か、三姉妹で下に未婚の妹も居たな。
だがお前が選ばれた。不要の姫だからだ。
側妃とは子を産む為に娶られた女だ。産むのは当然だろう」
「そんな!」
「側妃殿、両手を揃えてテーブルの上へ」
「は?」
「ライアンの言う通りにしろ!」
テーブルの上に手を置いて重ねた。
ドン!
「ああああああ!!んぐっ」
8本の指が一度に斬り落とされ、口に布を入れられた。
後ろから誰かが椅子に縛りつけた。
「んー!!んー!!」
「私の可愛い妹を襲わせるなど愚かだな。
私は妹を攻撃する者を許さないことにしている。誰であってもな。
あんた、何年レオン殿下の側妃をしているんだ?
こういうことは嫌うと分かっていて当然なのに分からなかったのか?」
指が!指が!!
「流石ライアン。私の性質が分かるのだな」
「レオン様、まだお膝の上ですか?」
「まだここにいろ。襲われて汚いモノを斬り落とすという嫌な目にあったのだから甘やかさないと。無事で良かった。
抱きついて私を安心させてくれ」
女が殿下の首にしがみ付いた。
それを愛おしそうに殿下が抱きしめ返す。
膝の上に乗ったことも、しがみ付いたこともない。抱きしめられたことも。
手も心も痛い……。
後ろにいた騎士が手に布をキツく巻いた。
「死にはしないが、気を失われたら困るからな」
怖い!この男、殿下より、指を切り落としたライアンより目が怖い!
「ミーシェは投剣も剣術も私より強いんだ。
学力などもお前より上だ」
殿下より強い!?
「お前の後ろにいる騎士は特別な騎士だ。
ミーシェ達の国の影で、暗殺もする。
そんな部隊に可愛がられているのがこの双子だ。
部隊の一人が双子の母親についていて、幼い頃から影の英才教育だ。片腕があまり使えなくても三階まで外から登れるそうだ。お前にできるか?
躊躇うことなく父上の汚いイチモツを一瞬で斬り落としたぞ。弾力があって素人には一瞬で斬り落とすのは難しいらしい。
お前にできるか?
私や副団長やブリアックと剣の対戦をして勝てるか?
ライアンは体に問題が無い分、もっと色々なことができるぞ?
お前には何ができる?」
そんなこと……私は王女で……
「王女を価値とする場合はな、祖国に力がある場合だ。金、武力、他国にはない重要な特産品とかのことだ。それをお前が自由に動かせたら価値ある王女と名乗れるんだよ」
価値が…無い?
「ミーシェならこの女をどうする?」
「前提は?生かすの?元鞘?」
「止めてくれミーシェ。其方からそんな言葉は聞きたくない」
「処刑が前提なら、開発途中の新薬の実験に使ったら?」
「そうするか。研究棟へ連れて行かせよう。
腹が減っただろう。用意させているから食べに行こう。
もう、当分王太子妃宮は使えないから、私の宮に移ろうな」
殿下は女を抱いたまま立ち上がり、部屋を連れ出てしまった。
ライアンと騎士が続いて出て行った。
その後、研究棟に移された。
数日後、アクエリオン殿下からその後を少し聞かされた。
「君の祖国は引き取らないし、助けるために何かをしないそうだ。
君の産んだ子は継承権を完全に剥奪されて、王族としてではなく、城に仕える者として育てるそうだ。下働きから始めることはないから安心するといい」
「子供達には私のことは」
「帝王を唆し、死に追いやった謀反の罪で投獄されたと伝えたよ。泣いていたけど、新しい環境に慣れるために頑張っているよ」
「ううっ」
実験で激しい嘔吐や腹痛があったり、皮膚がボロボロになったり。
その間にも時々、殿下と令嬢は私の元を訪れて仲睦まじい様を見せつけて帰っていく。
『もう指の出血が治ったみたいだ』
『すごい薬があるのですね』
『ミーシェ、驚く君も可愛いな、チュッ』
《頬に口付けた》
翌日は、
『今日は何を飲ませるんだ?』
『いえ、昨日の夜に塗る麻酔薬を塗りました。今朝かぶれていました。配合を変えます』
『ミーシェのためにもなるからな。
どうした?つまらないか?』
『寝不足だから』
『ミーシェのお強請りに応え過ぎたようだな。お陰で気持ちよく終われたよ』
《カードゲームで、負けるミーシェのもう一回の連続に応えたが、最後までレオンが勝って、レオン的には機嫌良く終われた》
また翌日は、
『昨夜は吐きっぱなしでした』
『何を飲ませた』
『誘吐剤です』
『成功か』
『効きすぎました』
『ミーシェの悪阻は大丈夫だろうか』
『無いですよ』
『ミーシェにそっくりの子がいいな』
《妊娠してないのに悪阻なんてない!》
また翌日は、
『昨夜のミーシェのピンクの花弁は本当に可愛かった』
『何で舐めるんですか!アレは私の、』
『甘かった』
『もう止めてください』
『毎晩舐めたい』
《ミーシェのケーキにはピンクの食用花の入っていた。横からレオンが一つ奪い舐めた後で食べた》
さらに翌日、
『ミーシェがいけるようになって嬉しいよ』
『レオン様が何度も一緒にいってくれたから怖くなかったです』
『我慢しないでいくんだよ』
『一人は嫌です。一緒にいってください』
『でも恥ずかしがるだろう』
『恥ずかしけどまだ怖いです』
『まだいけるようになって間もないからな。分かった。ちゃんと一緒にいって掛けてやるからな』
『絶対ですよ』
《外のトイレは虫がいて怖いが、レオンに外で声を掛けてもらえるとなんとか入れた。
排尿の音が聞こえそうで恥ずかしいが、怖くて一人は無理》
殿下と令嬢の惚気話がこんなに辛いとは。
私の手の指は親指以外無いし、髪もボサボサ、肌も荒れ、クマができ、やつれてきていた。こんな姿を見られるのはとても惨めだった。
10日後には毛が抜け出した。
もう死にたい。
私は隙をついて窓から飛び降りたが、下が花壇だったのと、二階だったことで、脚の骨折はしたが助かってしまった。
「石畳を選んでてっぺんから飛び降りないと難しいぞ?」
「誰?」
「ミーシェの護衛だ」
「何しに来たの」
「見学」
「見世物じゃないわ」
「そうかな?」
そう言って男は手鏡を渡した。
久しぶりで怖かったが写してみると、悲惨な顔が写っていた。
白いぶつぶつができ、その周辺は赤くなっている。
「何これ……」
「膿だな。中に汚いものが詰まってる。
痕になるだろうな」
鏡を取り上げて去っていった。
それからは、どうやって死ぬかばかり考えていた。連日のように何かしらの副作用が出て辛いし、この顔ではもう……
死ねるような物は与えてもらえないし、死ぬのに時間がかかる物は頻発な巡回で見つかってしまう。
そして何かしようとすると同室の二人が呼び鈴を鳴らして知らせてしまう。
一体何なの!
ある日、二人の小さな会話が聞こえて来た。
この二人、私を侮辱する噂話をして私が斬り付けたメイドのようだ。
処刑すると言っていたのに…騙されたのだわ。
この二人を始末しないと私に死ぬチャンスはない。
その夜、首を絞めた。もう一人が異変に気が付いて呼び鈴を鳴らした。
そこからは私はベッドに縛られた。
夜、不穏な情報を得て、アリバイ作りに夜、宰相に会っていた。
内容は退位を早めるかどうかの相談だった。
そこにミーシェの護衛騎士がやって来た。
『王太子殿下、帝王が兵を複数人連れて王太子妃宮に無理矢理押しかけました。宮の兵は抑え込まれ、扉を突破しました』
『宰相、急いで一緒に来てくれ!』
宮に入ると外番の兵の足元に6人の兵士が倒れていた。
『どういうことだ!』
外番の兵の顔は蒼白だった。
『陛下が兵を連れて押し入りました。
少し経つとグラースの護衛が……一人で……あっという間に』
中に入ると使用人が食堂に集められていた。
ミーシェの部屋の外では宮の兵は気を失い、父上が連れて来た兵4人は死んでいた。
中に入るとベッドは血の海で、ミーシェは返り血を浴びていた。
『ミーシェ!大丈夫か!』
『寝ていたら、誰かが私の体を弄っていて、私は咄嗟に護身用のナイフを振りました』
『私は護衛ですが、ミーシェ様の悲鳴を聞いてライアン様とこちらへ。私が外の兵を倒しました』
『私はミーシェに襲いかかる人影に剣を突き刺しました』
ベッドで死んでいたのは父上だった。
『陛下!陛下!』
『宰相、兵を使って無理矢理襲ったんだ。陛下は全裸だし、ソファの方に投げてある服は血がついていない。
自分で脱いで襲いかかったのは明らかだ』
『ですが、帝王に過剰です』
『真っ暗で誰だか分かるとでも?
これから強姦するのに、名乗りをあげてから襲うとでも?』
『そうですが、側妃候補ですよね』
『側妃候補なら、襲っている相手が誰だか分からねば、尚更貞操を守ろうとするだろう。
まだ婚約者でもない。今は治療のために滞在している他国の侯爵令嬢だ。
それに陛下の書いた誓約書がある。
手出しした時は反撃しても罪に問わないと。
控えが他国にある以上、言い逃れもできないぞ。
一緒に来た兵士達の死体が父上の愚行の証拠だ。
この宮の兵士や使用人も証人だ。其方の息子もいるぞ』
『パトリック!?』
『後は宰相に任せる。病死にするか、帝王が他国の十代の国賓に兵を向けて強姦を仕掛けて殺されたと発表するか、どちらか好きにしてくれ』
宰相は病死と発表した。
さて、ダイアナをどうしようか。
【 王太子付き第二側妃 ダイアナの視点】
どうやら陛下は今夜あの女を自分のモノにするみたいね。
父親に抱かれた女を正妃にしないはず。
は~。スッとするわ!
翌朝、部屋の外が騒がしかった。
バン!
「ダイアナ様は身支度の途中です!」
「身支度の必要は無くなった」
扉を乱暴に開けて、支度を手伝うメイドを退けた。
「父上を焚き付けてくれたようでご苦労であった」
「あ……」
「お前のお陰で、前帝王は地獄へ落ちた」
どういうこと!?
殿下の顔も声もとても冷淡で、だけど瞳に憎しみが籠っている。
怖い……でも私は他国の王女、王太子殿下の子の母親だから大丈夫。
そうよ、大丈夫だから狼狽えては駄目!
「話が見えません」
「父上は本当に人払いをするわけではない。
お前があること無いこと話して、焚き付けたのは侍従が聞いていた」
えっ……
「私は事実を…」
「帝国の王を死に追いやった気分はどうだ?
ミーシェを帝王に襲わせるなど、何様のつもりだ」
「そんなつもりは、」
「ライアン、ミーシェ」
殿下に呼ばれて入って来た客人の兄妹に驚いた。
特に女の方は見たこともない美しさだった。
これが同じ人間?
「ライアン、ミーシェ。此奴が帝王を焚き付けた側妃だ。ダイアナ、テーブルの椅子に座れ」
座ると、すぐ隣にライアンという兄が座った。
「ミーシェはここだ」
そう言って殿下は女を引き寄せて自身の膝の上に座らせた。
そして愛おしそうに髪を撫で、頬に口付けた。
「やっぱりデキていたではありませんか!」
「お前が父上を焚き付けたから、私が今日から帝王になった。だから契約は破棄されて、こうやって可愛がれる。礼を言うべきかな」
「レオン様、近いです」
「愛させてくれ」
「レオン様!?私もユゲット様も王太子殿下としか呼ぶことを許さないのに、その女には許すのですか!」
「お前とは価値が違うと言っただろう」
「私は妻です!貴方の子を二人も産んだ妻ですよ!」
「政略結婚だし、従属国に不要な姫を差し出せと帝王が言ったからお前の父親がお前を差し出した。
確か、三姉妹で下に未婚の妹も居たな。
だがお前が選ばれた。不要の姫だからだ。
側妃とは子を産む為に娶られた女だ。産むのは当然だろう」
「そんな!」
「側妃殿、両手を揃えてテーブルの上へ」
「は?」
「ライアンの言う通りにしろ!」
テーブルの上に手を置いて重ねた。
ドン!
「ああああああ!!んぐっ」
8本の指が一度に斬り落とされ、口に布を入れられた。
後ろから誰かが椅子に縛りつけた。
「んー!!んー!!」
「私の可愛い妹を襲わせるなど愚かだな。
私は妹を攻撃する者を許さないことにしている。誰であってもな。
あんた、何年レオン殿下の側妃をしているんだ?
こういうことは嫌うと分かっていて当然なのに分からなかったのか?」
指が!指が!!
「流石ライアン。私の性質が分かるのだな」
「レオン様、まだお膝の上ですか?」
「まだここにいろ。襲われて汚いモノを斬り落とすという嫌な目にあったのだから甘やかさないと。無事で良かった。
抱きついて私を安心させてくれ」
女が殿下の首にしがみ付いた。
それを愛おしそうに殿下が抱きしめ返す。
膝の上に乗ったことも、しがみ付いたこともない。抱きしめられたことも。
手も心も痛い……。
後ろにいた騎士が手に布をキツく巻いた。
「死にはしないが、気を失われたら困るからな」
怖い!この男、殿下より、指を切り落としたライアンより目が怖い!
「ミーシェは投剣も剣術も私より強いんだ。
学力などもお前より上だ」
殿下より強い!?
「お前の後ろにいる騎士は特別な騎士だ。
ミーシェ達の国の影で、暗殺もする。
そんな部隊に可愛がられているのがこの双子だ。
部隊の一人が双子の母親についていて、幼い頃から影の英才教育だ。片腕があまり使えなくても三階まで外から登れるそうだ。お前にできるか?
躊躇うことなく父上の汚いイチモツを一瞬で斬り落としたぞ。弾力があって素人には一瞬で斬り落とすのは難しいらしい。
お前にできるか?
私や副団長やブリアックと剣の対戦をして勝てるか?
ライアンは体に問題が無い分、もっと色々なことができるぞ?
お前には何ができる?」
そんなこと……私は王女で……
「王女を価値とする場合はな、祖国に力がある場合だ。金、武力、他国にはない重要な特産品とかのことだ。それをお前が自由に動かせたら価値ある王女と名乗れるんだよ」
価値が…無い?
「ミーシェならこの女をどうする?」
「前提は?生かすの?元鞘?」
「止めてくれミーシェ。其方からそんな言葉は聞きたくない」
「処刑が前提なら、開発途中の新薬の実験に使ったら?」
「そうするか。研究棟へ連れて行かせよう。
腹が減っただろう。用意させているから食べに行こう。
もう、当分王太子妃宮は使えないから、私の宮に移ろうな」
殿下は女を抱いたまま立ち上がり、部屋を連れ出てしまった。
ライアンと騎士が続いて出て行った。
その後、研究棟に移された。
数日後、アクエリオン殿下からその後を少し聞かされた。
「君の祖国は引き取らないし、助けるために何かをしないそうだ。
君の産んだ子は継承権を完全に剥奪されて、王族としてではなく、城に仕える者として育てるそうだ。下働きから始めることはないから安心するといい」
「子供達には私のことは」
「帝王を唆し、死に追いやった謀反の罪で投獄されたと伝えたよ。泣いていたけど、新しい環境に慣れるために頑張っているよ」
「ううっ」
実験で激しい嘔吐や腹痛があったり、皮膚がボロボロになったり。
その間にも時々、殿下と令嬢は私の元を訪れて仲睦まじい様を見せつけて帰っていく。
『もう指の出血が治ったみたいだ』
『すごい薬があるのですね』
『ミーシェ、驚く君も可愛いな、チュッ』
《頬に口付けた》
翌日は、
『今日は何を飲ませるんだ?』
『いえ、昨日の夜に塗る麻酔薬を塗りました。今朝かぶれていました。配合を変えます』
『ミーシェのためにもなるからな。
どうした?つまらないか?』
『寝不足だから』
『ミーシェのお強請りに応え過ぎたようだな。お陰で気持ちよく終われたよ』
《カードゲームで、負けるミーシェのもう一回の連続に応えたが、最後までレオンが勝って、レオン的には機嫌良く終われた》
また翌日は、
『昨夜は吐きっぱなしでした』
『何を飲ませた』
『誘吐剤です』
『成功か』
『効きすぎました』
『ミーシェの悪阻は大丈夫だろうか』
『無いですよ』
『ミーシェにそっくりの子がいいな』
《妊娠してないのに悪阻なんてない!》
また翌日は、
『昨夜のミーシェのピンクの花弁は本当に可愛かった』
『何で舐めるんですか!アレは私の、』
『甘かった』
『もう止めてください』
『毎晩舐めたい』
《ミーシェのケーキにはピンクの食用花の入っていた。横からレオンが一つ奪い舐めた後で食べた》
さらに翌日、
『ミーシェがいけるようになって嬉しいよ』
『レオン様が何度も一緒にいってくれたから怖くなかったです』
『我慢しないでいくんだよ』
『一人は嫌です。一緒にいってください』
『でも恥ずかしがるだろう』
『恥ずかしけどまだ怖いです』
『まだいけるようになって間もないからな。分かった。ちゃんと一緒にいって掛けてやるからな』
『絶対ですよ』
《外のトイレは虫がいて怖いが、レオンに外で声を掛けてもらえるとなんとか入れた。
排尿の音が聞こえそうで恥ずかしいが、怖くて一人は無理》
殿下と令嬢の惚気話がこんなに辛いとは。
私の手の指は親指以外無いし、髪もボサボサ、肌も荒れ、クマができ、やつれてきていた。こんな姿を見られるのはとても惨めだった。
10日後には毛が抜け出した。
もう死にたい。
私は隙をついて窓から飛び降りたが、下が花壇だったのと、二階だったことで、脚の骨折はしたが助かってしまった。
「石畳を選んでてっぺんから飛び降りないと難しいぞ?」
「誰?」
「ミーシェの護衛だ」
「何しに来たの」
「見学」
「見世物じゃないわ」
「そうかな?」
そう言って男は手鏡を渡した。
久しぶりで怖かったが写してみると、悲惨な顔が写っていた。
白いぶつぶつができ、その周辺は赤くなっている。
「何これ……」
「膿だな。中に汚いものが詰まってる。
痕になるだろうな」
鏡を取り上げて去っていった。
それからは、どうやって死ぬかばかり考えていた。連日のように何かしらの副作用が出て辛いし、この顔ではもう……
死ねるような物は与えてもらえないし、死ぬのに時間がかかる物は頻発な巡回で見つかってしまう。
そして何かしようとすると同室の二人が呼び鈴を鳴らして知らせてしまう。
一体何なの!
ある日、二人の小さな会話が聞こえて来た。
この二人、私を侮辱する噂話をして私が斬り付けたメイドのようだ。
処刑すると言っていたのに…騙されたのだわ。
この二人を始末しないと私に死ぬチャンスはない。
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そこからは私はベッドに縛られた。
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けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
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