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帝王の溜息
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【 レオンの視点 】
城に着いたのは夜も更けていた。
ミーシェも疲れた様だし、馬車で言われたこともある。
『私とレオン様はまだ夫婦ではありませんよ?』
『え?』
『婚約さえしていませんからね?』
『あ……』
『馬車移動も疲れますし、普段使わない筋肉を使って筋肉痛もあるのですよ?
いくらグラース側は父が良い宿を手配してくれて快適に過ごせても自室ほど快適ではありません
これでも気も遣っているのですよ』
『すまない』
ショックだった。
夜も遅いというのにユゲットとブリアック、アクエリオン、ヤニックが出迎えた。
ユ「お待ち申し上げておりました。
部屋にお食事をお持ちいたします。
湯浴みがよろしければ先にご用意いたします」
ミ「食事を先にお願いします。厨房が片付きませんもの」
ユ「かしこまりました」
ア「姉上の部屋は後宮に用事しました」
レ「ちょっと待て。後宮?」
ミ「あ、それ、私がお願いしていたんです。どの宮を使いたいかと聞かれて。
王太子妃宮はあれですし、王太子宮は悪いですし、王太子の後宮は修繕工事中だと聞きました」
レ「王妃の部屋か貴賓室でいいじゃないか」
ミ「まだ王妃の部屋はダメです。
それに側妃様達が側にいてくだされば楽しいと思いまして。
いいですよね?」
レ「あ……ああ」
ミ「さて、皆様。私はまだ侯爵令嬢です。かしこまらないでください」
ユ「ミーシェ様、私のことはユゲットとお呼びください」
ミ「はい。ユゲット様」
こうしてミーシェは後宮に消えていった。
翌日から仕事に追われることになるのは分かっていた。
だがミーシェが気になる。
「ヒリス。ミーシェは何してるんだ?」
「午前中は医療棟で腕を診てもらっていました。午後は分かりません。
今後は把握いたしますか」
「頼む」
「かしこまりました」
「それと、王族の居住エリアに勝手に忍び込んだ者は処刑しても違法ではないな?」
「はい。
王族担当の使用人、近衛騎士は配属の時に任命をしていますので出入りできます。
他の者は都度命じられないと入れません。
何かございましたか」
「とにかく誤解されたくない。
女が忍び込めないようにしてくれ。
担当外の使用人達には再度念を押してくれ。
城門をくぐる女には例外なく警告してくれ。
立入禁止エリアに注意するように。
特に王族居住エリアに足を踏み入れた者はどのような身分でも極刑にできると、必ず二人以上が立ち会って告げてくれ。
後で聞いてない言われていないなどと言い訳ができないようにしてくれ」
「かしこまりました」
「警備にミーシェは通せと言っておいてくれ。
忍び込んでいるところを見つけても、壁をよじ登っていても、見なかったことにしろと言ってくれ」
「はい?」
「あ~でも、壁をよじ登っている場合は見届けてくれ。一応本人にも外からは止めろと言っておく。
城壁を超えて外に出ようとしている場合は保護してくれ」
「あのご令嬢がですか?」
「そうだ」
「かしこまりました」
「何で後宮なんだ」
「………後宮は陛下のものなのですから訪ねていけばよろしいのでは?」
「そうだ。婚約はどうなった」
「シオン国王陛下に書簡を送ったところです」
「伝書だよな?」
「いえ、馬車です」
「馬車!?」
「ミーシェ様が送りたい物があるからついでに一緒に送ってくれと申されましたので」
「そこは別便でいいだろう」
「それほど急がれるものだと存じ上げませんでした」
「なあ、やっぱり閨は婚姻してからか?」
「正妃様ならそれが無難かと」
「もう手を付けた場合は?」
「陛下!?」
「婚姻を承諾したかのようにみせて連れてきた愛しいミーシェが側にいて我慢できなくて……頼んだ」
「合意はあったということなら良いとは思います。今後のこともミーシェ様が応じてもいいと仰ればこっそりとどうぞ」
「手遅れだ。バレてる」
「つまり?」
「移動中の馬車で手を付けた挙句、食事の席でその出来事に触れてしまって、騎馬隊は知っている。今頃噂されているかもしれない」
「……左様でございますか。馬車ですか。
淡白だと思っておりましたが違ったようですね。世継ぎを急いでいるとかではありませんね?」
「婚姻しても直ぐには作らない」
「ところで先程不思議なお言葉を耳にしたのですが、“婚姻を承諾したかのようにみせて連れてきた”というのはどういう意味でしょう」
あの時のことを説明すると冷静な男が騒ぎ出した。
「それは詐欺ではありませんか!」
「確かに外堀には誤解させたがミーシェに強要はしていない」
「令嬢の外堀を埋めたら強要と同じです!」
「ミーシェなら嫌なら嫌と言うし、本気でミーシェが嫌で無理強いしたら私は既に生きていない。だから好意はあるはずなんだ」
「………」
「嫌いな相手に抱きついたり頬擦りしたりしないだろう?」
「そうですが、詐欺は詐欺です」
「………」
翌日朝にミーシェの報告を受けた。
「昨日のミーシェ様はアクエリオン殿下とお過ごしになりました。医療棟と城内の薬草畑や温室をご覧になったようです。
その後は病室でお過ごしになったそうです」
「アクエリオンと?」
「アクエリオン殿下のお仕事について説明を受けたそうです。ミーシェ様の希望だそうです」
「病室で何をしたのだ」
「治療中の患者の話し相手になったり手伝いをしたそうです。
本日は治療リハビリを終えたらヤニック殿下とお過ごしになるそうです」
「………では明日はブリアックのところか」
「はい 」
「はぁ~」
「陛下は早くたまった仕事をお済ませください。ミーシェ様とのお時間を作るためです」
城に着いたのは夜も更けていた。
ミーシェも疲れた様だし、馬車で言われたこともある。
『私とレオン様はまだ夫婦ではありませんよ?』
『え?』
『婚約さえしていませんからね?』
『あ……』
『馬車移動も疲れますし、普段使わない筋肉を使って筋肉痛もあるのですよ?
いくらグラース側は父が良い宿を手配してくれて快適に過ごせても自室ほど快適ではありません
これでも気も遣っているのですよ』
『すまない』
ショックだった。
夜も遅いというのにユゲットとブリアック、アクエリオン、ヤニックが出迎えた。
ユ「お待ち申し上げておりました。
部屋にお食事をお持ちいたします。
湯浴みがよろしければ先にご用意いたします」
ミ「食事を先にお願いします。厨房が片付きませんもの」
ユ「かしこまりました」
ア「姉上の部屋は後宮に用事しました」
レ「ちょっと待て。後宮?」
ミ「あ、それ、私がお願いしていたんです。どの宮を使いたいかと聞かれて。
王太子妃宮はあれですし、王太子宮は悪いですし、王太子の後宮は修繕工事中だと聞きました」
レ「王妃の部屋か貴賓室でいいじゃないか」
ミ「まだ王妃の部屋はダメです。
それに側妃様達が側にいてくだされば楽しいと思いまして。
いいですよね?」
レ「あ……ああ」
ミ「さて、皆様。私はまだ侯爵令嬢です。かしこまらないでください」
ユ「ミーシェ様、私のことはユゲットとお呼びください」
ミ「はい。ユゲット様」
こうしてミーシェは後宮に消えていった。
翌日から仕事に追われることになるのは分かっていた。
だがミーシェが気になる。
「ヒリス。ミーシェは何してるんだ?」
「午前中は医療棟で腕を診てもらっていました。午後は分かりません。
今後は把握いたしますか」
「頼む」
「かしこまりました」
「それと、王族の居住エリアに勝手に忍び込んだ者は処刑しても違法ではないな?」
「はい。
王族担当の使用人、近衛騎士は配属の時に任命をしていますので出入りできます。
他の者は都度命じられないと入れません。
何かございましたか」
「とにかく誤解されたくない。
女が忍び込めないようにしてくれ。
担当外の使用人達には再度念を押してくれ。
城門をくぐる女には例外なく警告してくれ。
立入禁止エリアに注意するように。
特に王族居住エリアに足を踏み入れた者はどのような身分でも極刑にできると、必ず二人以上が立ち会って告げてくれ。
後で聞いてない言われていないなどと言い訳ができないようにしてくれ」
「かしこまりました」
「警備にミーシェは通せと言っておいてくれ。
忍び込んでいるところを見つけても、壁をよじ登っていても、見なかったことにしろと言ってくれ」
「はい?」
「あ~でも、壁をよじ登っている場合は見届けてくれ。一応本人にも外からは止めろと言っておく。
城壁を超えて外に出ようとしている場合は保護してくれ」
「あのご令嬢がですか?」
「そうだ」
「かしこまりました」
「何で後宮なんだ」
「………後宮は陛下のものなのですから訪ねていけばよろしいのでは?」
「そうだ。婚約はどうなった」
「シオン国王陛下に書簡を送ったところです」
「伝書だよな?」
「いえ、馬車です」
「馬車!?」
「ミーシェ様が送りたい物があるからついでに一緒に送ってくれと申されましたので」
「そこは別便でいいだろう」
「それほど急がれるものだと存じ上げませんでした」
「なあ、やっぱり閨は婚姻してからか?」
「正妃様ならそれが無難かと」
「もう手を付けた場合は?」
「陛下!?」
「婚姻を承諾したかのようにみせて連れてきた愛しいミーシェが側にいて我慢できなくて……頼んだ」
「合意はあったということなら良いとは思います。今後のこともミーシェ様が応じてもいいと仰ればこっそりとどうぞ」
「手遅れだ。バレてる」
「つまり?」
「移動中の馬車で手を付けた挙句、食事の席でその出来事に触れてしまって、騎馬隊は知っている。今頃噂されているかもしれない」
「……左様でございますか。馬車ですか。
淡白だと思っておりましたが違ったようですね。世継ぎを急いでいるとかではありませんね?」
「婚姻しても直ぐには作らない」
「ところで先程不思議なお言葉を耳にしたのですが、“婚姻を承諾したかのようにみせて連れてきた”というのはどういう意味でしょう」
あの時のことを説明すると冷静な男が騒ぎ出した。
「それは詐欺ではありませんか!」
「確かに外堀には誤解させたがミーシェに強要はしていない」
「令嬢の外堀を埋めたら強要と同じです!」
「ミーシェなら嫌なら嫌と言うし、本気でミーシェが嫌で無理強いしたら私は既に生きていない。だから好意はあるはずなんだ」
「………」
「嫌いな相手に抱きついたり頬擦りしたりしないだろう?」
「そうですが、詐欺は詐欺です」
「………」
翌日朝にミーシェの報告を受けた。
「昨日のミーシェ様はアクエリオン殿下とお過ごしになりました。医療棟と城内の薬草畑や温室をご覧になったようです。
その後は病室でお過ごしになったそうです」
「アクエリオンと?」
「アクエリオン殿下のお仕事について説明を受けたそうです。ミーシェ様の希望だそうです」
「病室で何をしたのだ」
「治療中の患者の話し相手になったり手伝いをしたそうです。
本日は治療リハビリを終えたらヤニック殿下とお過ごしになるそうです」
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「はい 」
「はぁ~」
「陛下は早くたまった仕事をお済ませください。ミーシェ様とのお時間を作るためです」
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