母を訪ねて十万里

サクラ近衛将監

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第三章 ニオルカンのマルコ

3ー6 マルコと学院長 その二

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 マルコの言い様に若干の疑念を挟みながらも学院長は言った。

「フム、まあよろしい。
 では、その人から聞いた話として・・・。
 幼子が魔法を使って良くない理由は知っているかね?」

「はい、えーっと・・・。
 仮に適性の無い魔法を無理に行使しようとした場合、本来の適性のある魔法が使えなくなってしまう可能性があります。
 例えば、水や土に適性を有する子が、親や知人が風の魔法を使えるために、それを強要されたりすることで、水や土の発動に必要な魔力の伸びが失われることがあります。
 幼い子に魔法を教えるには、その子の適性を確認し、同時に魔力の保有量も確認して、その状況に見合った方法で適切に導いてやらねば育ちません。
 特に注意すべきは、無暗に魔法を連発することで、魔力量そのものの伸びが失われることがあります。
 何事にも無理はいけないということかと思います。」

「フム、その通りなのだが・・・。
 マルコ君の同級生が15人ほどいるが、その中でそうした無理をしてしまった子は何人ほどいると思うかね?」

「貴族の子女は押しなべて間違った方法で指導を受けていたようです。
 その意味で平民の子二人は、魔法の適性の確認も、その訓練も受けてはいませんので、正常な伸びが期待できると思います。
 それ以外では間違った方法で指導はされているものの、魔力量が大きい為に是正が可能なものが二人、伸びしろが期待できるものが一人、そうして良くわからない子が一人でしょうか。
 残りの子は、育てるのがかなり難しいと思います。」

 なるほど、マルコを含めて7人の子女が期待できるということか?
 期待できる子が誰のことか念のため聞いてみるか?

「因みに平民の子二人とは、ハリー君とアイリス君のことだろうが、間違った方法で指導はされていても是正が可能な者二人とは誰のことかな?」

「秘密にしていただけるなら名前を申し上げます。」

「あぁ、無論決して誰にも言わない。
 必要ならば契約魔法をするかね?」

 少し押し黙って、マルコはじっと私を見た。
 それからゆっくりと言った。

「いいえ、それには及びません。
 学院長を信頼しています。」

 ふむ、するではなくしているか・・・。
 希望的観測が多分に混じった言葉だな。

「シルヴェスター・ヴァロック君とフィリア・バーンスタインさんの二人は魔力保有量が大きいので今からでも十分に補正が効くと思われます。
 恐らくは残り二人も質問されるのでしょうから申し上げておきます。
 ラメス・パターソン君は未だ集中的な指導を受けてはいないので、魔力は比較的少ないですが、指導が適切であれば魔力保有量は増えると思います。
 残り一人は良くわからない子ですが、シルヴィア・エジンバルさんで、彼女は魔法発動を敢えて少なめに抑えているようです。
 或いは故意に魔法を過少に見せているのかもしれません。」

「なるほど・・・。
 例えば、ダレス・ウェルバーン君とイリス・ヴァルカン君辺りは、魔力量もそれなりにありそうだが、ダメなのかね?」

「ダメというわけではありませんが、二人とも土属性魔法に適正がありそうですが、それを恥と思っています。
 それが直らない限り、恐らく努力が傾注できないでしょう。」

「なるほど・・・。
 貴族の一部に土属性魔法を土方と言ってさげすむ風潮があるからのぉ。
 どのような土属性魔法なら彼らも誇りが持てるかのぉ?」

「土属性魔法が守りの魔法と思われている間は難しいでしょうね。
 せめてができるようになることでしょうか?
 欲を言えばが使えれば相当に自信も付くのでしょうけれど、二人の魔力量では顕現させるまでに至らないと思います。」

 さてさて、妙な名前が出てきたぞ。
 名前から察するに「ストーンバレット」は石礫、「ストーンランス」とは石の槍か?

 ファイアーボールやファイアーランスと同じく、それを魔力で飛ばすのか・・・。
 では、「ヤマアラシ」とは?

「ヤマアラシとはどんな魔法かね。」

「アッ、えーっと・・・・。
 ヤマアラシとは、地面からハリネズミのように棘を生やさせる魔法です。
 上手くはまれば、標的となる動物や敵をまとめて串刺しにできます。」

「ほう、ほう。
 イメージは何となくわかるが、それを離れた場所から放てるのかね?」

「はい、・・・・。
 土属性魔法ではかなり高度な技になると思います。
 少なくとも高さ二尋ほどの壁をわずかな時間で築けるほどの魔力量が無ければ実現は難しいと思います。」

「ふむ、で、マルコ君はそれができると?」

「いえ、・・・。
 私も知っているだけで試したことはありません。」

「フム、できないとは言わんのだな。
 最後に一つ聞いておこう。
 今聞いた生徒の評価について君が言ったことは誰にも言わない。
 だが、君のことやこの学院の現状は王家に報告しなければならないのだが、・・・。
 君自身のことは伏せておきたいかね?」

「可能であれば、目立ちたくありませんので伏せておいていただけるとありがたいのですが・・・。」

「ふむ・・・。
 判った。
 可能な限り君のことは伏せておくが、他の者の口から洩れることは防げないぞ。
 特に、生徒と教員だな。
 それに、君の父であるカラガンダ殿に一度会いたいのだが、可能かな?」

義父様とうさまとお会いするのですか?
 義父様も交易に出ることはもう無いと申されて、家で暇そうにしていらっしゃいますから、あらかじめご連絡を頂ければいつでもお会いできるかと存じます。」

「そうか・・・。
 では次の休みが三日後なので、その午後二つ時にお会いしたいと申し上げてくれるかな。
 私の方からご自宅の方へ伺うとしよう。
 明後日までに返事がいただければありがたい。」

「畏まりました。
 明日にはご返事ができると存じます。」

「フム、よろしくお願いする。」


 =================================

  参考=マルコが読み取った生徒たちの魔力量と伸びしろ

 ◆◇◆◇ 平民 ◇◆◇◆
① アイリス:
 ニオルカン公爵家配下の薬師の娘、水属性魔法>光属性魔法に適正あり、魔力―中

② ハリー:
 オブライエン商会(ニオルカン市内の大手商人である)の次男坊、火属性魔法と無属性魔法に適正あり、魔力―大?

 ◆◇◆◇ 魔力量が多いので修正可能な者 ◇◆◇◆
③ シルヴェスター・ヴァロック:
 ニオルカン公爵家配下の男爵の三男、雷魔法属性に適正あり、魔力―大

④ フィリア・バーンスタイン:
 ニオルカン公爵家配下の子爵の長女、水属性魔法に適正あり、魔力―大

 ◆◇◆◇ 伸びしろがある者 ◇◆◇◆
⑤ ラメス・パターソン:
 ニオルカン公爵家配下の騎士爵の長男、氷属性魔法、魔力―小(伸びしろ有)

 ◆◇◆◇ 良くわからない者 ◇◆◇◆
⑥ シルヴィア・エジンバル(シルヴィア・ディラ・サリバン):
 ニオルカン公爵家配下のエジンバル男爵の次女と詐称、商都ニオルカンが属するベルン王国の大公であるエシャール・ファブレ・サリバンの妾腹の次女、風属性魔法、魔力―大(同級生の中ではマルコを除き最大)

 ◆◇◆◇ 魔力量―中の者 ◇◆◇◆
⑦ ダレス・ウェルバーン:
 ニオルカン公爵家配下の準男爵の長男、土属性魔法>無属性魔法に適正あり、魔力―中

⑧ イリス・ヴァルカン:
 ニオルカン公爵家配下の男爵の三男坊、土属性魔法と風属性魔法に適正あり、魔力―中

⑨ ナルガ・ヘンダースン:
 ニオルカン公爵家配下の騎士爵の三男、火属性魔法、魔力―中、体格―大

⑩ ノエル・ヤング:
 ニオルカン公爵家配下の子爵の三男坊、土属性魔法、魔力―中

⑪ ピヨートル・アルバン:
 ニオルカン公爵家配下の騎士爵の次男坊、風魔法属性、魔力―中

⑫ ソニア・デビッドソン:
 ニオルカン公爵家配下の騎士爵の長女であり、風属性魔法、魔力―中

 ◆◇◆◇ 魔力量―小の者 ◇◆◇◆
⑬ エレバン・ファルス:
 ニオルカン公爵家の騎士爵の次男坊、火属性魔法、魔力―小

⑭ オスカー・リビングストン:
 ニオルカン公爵家配下の騎士爵の長男、火魔法属性、魔力―小

⑮ テリー・ハドル:
 ニオルカン公爵家配下の男爵の次男、火属性魔法、魔力小(同級生で最小)魔法師に向かない

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