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さくら優

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ともや君編

1.私の作品(攻め視点)

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※身体に絵を描く芸術家の話です。ご注意ください。

   ✦✦✦

画材と道具、部屋の準備を終え、私は時計を見上げた。

私は絵を描いて生計を立てている芸術家だ。
絵と言っても、多くの画家のように紙に描いているわけではない。石や壁、食物など、キャンバスは様々なものを使う。

だが、今回選んだのはその中でもかなり特殊な方だった。

少年。

人付き合いの苦手な私に、絵のキャンバスになってくれる少年の知り合いなどいるはずもなく、私は、ある会社にそれを探す依頼をした。

結構な額の報酬を提示したため、思っていた以上の応募があり、私はその中から1人を選んだ。そろそろ来る頃だ。

そう思った時、玄関のチャイムが鳴った。
ドアを開けると、そこには緊張した面持ちの10代後半の少年、成人しているならもう青年か? まあどちらでもいいが、待っていた彼が立っていた。

「こ、こんにちは」
「智也君ですね。どうぞ。いらっしゃい」
「よろしくお願いします⋯!」

彼は礼儀正しくペコリと頭を下げる。

私は彼を家に招き入れ、応接間に通した。お茶をいれ、改めて内容を説明する。

肌に直接絵を描くため、使っている画材、特殊な絵の具と化粧品を混ぜたものだが、それの説明やアレルギーなどの確認も怠らない。

「何か質問はありますか?」

一通り説明をし、そう訊ねると、彼は首を横に振った。

「いえ。大丈夫です。⋯あの」
「はい?」
「俺、先生の作品のファンだったので、その、ご指名頂けてすごく嬉しいです。ありがとうございます」
「そうだったんですね」

正直、顔と身体が作品のイメージに一致していたので選んだだけだったのだが、ファンである彼に喜んで貰えたようで何よりだ。
最終的に顔は作品に映ることはないが、私の製作中のモチベーションに大きく影響するため、大事な要素だった。

説明が終わると、彼を浴室へ案内する。
リラックス効果のある入浴剤をいくつか用意しておいたので、ゆっくり入って来るよう伝えると、彼は嬉しそうに礼を言った。

しばらくして風呂から彼が戻って来ると、いよいよ仕事部屋へと向かう。普段はアトリエを使うが、今回はベッドを用意する必要があったので、別の部屋だ。

「では、服を脱いで、うつ伏せになってください」
「はい」

そう言うと、彼は下着だけの姿になり、ベッドにうつ伏せになった。

今回は、背中に絵を描き、それを写真に収めることで作品にする。

「寒くないですか?」
「大丈夫です」

彼は顔を横に向け、枕を抱いて横になっている。背中からでも緊張しているのが伝わってきた。

私は彼の胸の横辺りに腰掛けるとそっと頭を撫でた。

「ふふ。緊張しないで。と言っても、難しいですよね」
「う⋯。すみません」
「いきなり描くとびっくりすると思うので、少し触りますね」
「はい⋯」

私は手の平で、肩から肩甲骨の辺りを撫で、背中に手を滑らせた。きめ細かい素肌はしっとりと手になじむようで、ずっと撫でていたくなるほどだった。

「ん⋯」

彼は頰を赤く染め、潤んだ瞳を隠すように目を閉じる。

しばらく肌を撫でた後、私は筆を手に取った。

「では、次は筆で撫でていきますね。まだ絵の具は付けていないので、リラックスしていてください」
「ぁ、はい」

絵の具は付けないが、乾いた状態よりも実際に描く時の状態に近付けた方が良いので、水を付けて筆先を整える。

背中の中心より少し右の辺りを柔らかい筆で撫で上げると、ビクっと身体が震えた。

「あっ、ん⋯」

小さく声を上げ、枕をギュッと抱き締める。
だが、その後は時々熱い溜息を吐くだけで声は出さなかった。

私は、絵の下書きをするつもりで、実際に描く時と同じように筆を動かした。
予測のつかない筆の動きに、彼は肌を震わせた。

そっと腋の下に筆先を差し込む。

「ひゃっ!」

咄嗟に腕を下げて腋を閉めるが、すぐにまた元の姿勢に戻ったので、私は再度、腋下をくるくると筆で撫でた。

「んっ、ふふ⋯、あっ」
「くすぐったい?」
「は、い⋯、んふ」

枕を抱き締めて耐えているが、顔はくすぐったそうに緩んでいる。

「この辺りまで描きますが、我慢出来ますか?」
「ぁ⋯、が、頑張ります」

腋下の窪みのところをなぞると、健気にそう返事をしてくれた。私は、もう1本筆を用意する。

「慣れれば多少くすぐったくなくなると思うので、少し我慢してください」
「はい⋯、あっ、ひゃあっ」

両側の脇腹から腋下までを筆先で撫で上げると、高い声が上がった。そのまま、何度かゆっくり往復させる。

「ん、ん⋯っあ! ふふ⋯」
「声は出して構わないので、動かないで」
「はい⋯、ひゃっ!」

私の言うことを素直に聞き、甘い声を上げながら身体を震わせて必死に耐える姿はとても可愛らしく、少しだけ意地悪をしたくなった。

脇腹を撫でていた筆を、スッとお腹の方に滑らせる。

「ひあっ! あっ、先生っ、そ、んなに⋯?」
「ふふ。冗談です。智也君がすごく可愛いので」
「可愛く、なんて⋯、んあ!」

優しく撫でていると少しずつ慣れてきたのか、震えが収まり蕩けた表情を浮かべる。

私は筆を置き、水と汗で湿った肌にタオルを当てた。

「では、描いていきますね」
「はい⋯」

絵の具を付けた筆を肌の上に滑らせる。敏感なところに差し掛かると、彼は身体を震わせて喘ぐような呼吸を繰り返した。

「はあ⋯、あ、ふ⋯」

今までは彼の反応を窺いながらゆっくり触れていたが、ここからは完全に私のペースだ。

少し可哀想な気もするが、私のファンだと言ってこうして自らを差し出してくれた彼のためにも、中途半端な作品にするわけにはいかない。

1時間ほどかけて、作品がほぼ完成した。
最後に極細の筆を手にとり、背中の中心をスーッと撫で下ろした。

「あっ! っ――⋯!」

必死に動かないよう努めているが、それでも小さく身体が震える。それがそのまま線に表れ、作品に乗った。

完成すると、私はしばらくの間、ただそれを眺めた。彼は息を整えるように何度か深呼吸をした後、そっと目を閉じる。

美しい。

思い描いていた以上の出来に、私は目を細める。ただの紙に描いたのではこうはいかない。生きているものの生命力があってこその、この存在感。

本当ならこのまま作品として飾って置きたいくらいだが、そんなことは出来るわけがないので、しばらく眺めてから私はそれを写真に収めた。本物の、完成した作品の彼を見ることが出来るのは、私だけの特権だ。

何度もシャッターを切り、簡単な指示を出してポーズをとってもらう。時々優しく身体に触れると、肌が上気し色気が増した。

写真を撮り終わると、カメラを置いてそっと彼の頭を撫でた。

「では、これで終了です。お疲れ様でした」
「はい⋯。ん、はあ⋯」

大きく息を吐いてから起き上がる。

「シャワー浴びますか?」
「はい⋯」

彼は背中を向けたまま、足を閉じて身体を隠すようにしている。私はくすっと笑みをこぼした。

「手伝いましょうか?」
「え? だ、大丈夫です」

明らかに動揺した様子で首を横に振った。

「そうですか? でも、背中だと洗うのも大変でしょう」
「い、いいぃえ! 大丈夫です!」

今度は激しく否定した。ニヤッと笑って手を伸ばすと、逃げるようにベッドの端に移動する。

「だ、だめです!」

必死な様子に、私はくすくすと笑う。

「わかりました。シャワーだけでもだいぶ落ちるはずなので、あまり擦らないように」

マジックでも擦らず落ちると言うテレビCMをやっていたものだ。

バスタオルを渡すと、彼は受け取り微笑んだ。
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