【完結】白雪くんはりんごアレルギー〜家政夫だと思っていたら嫁入りでした!

墨済

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2章 鏡よ鏡

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結論から言うと、万里子のことは「万里子さん」、隆平の父親は「パパさん」と呼ぶことに決まった。その上、いつの間にか花城邸に居候することまで決まってしまった。


由起也が万里子と初対面した日は、花城家での家政夫アルバイトを引き受けるかどうかは保留した。しかし翌日、由起也はあらためて万里子を訪問した。

万里子はそれをとても喜んだ。由起也と万里子の会話は、最初はぎこちなかったが次第に打ち解け、気がつけば随分長く話し込んでいた。話題の中にはもちろん、由起也が隆平と知り合ったきっかけもあった。そして、バラ科食物アレルギーの話も。
そうして楽しく話をしていると、枕元の医療機器からそれまでとは違うアラーム音が鳴った。驚いた由起也は、慌てて隆平を呼びに行った。アラームが鳴ってしまったのは、万里子が楽しすぎて自分の体調のことを忘れ、血圧がずいぶん下がってしまったせいだった。

「白雪くん、ごめんね。これでここに来るのが嫌になったりしないでね」
「奥様、白雪はやめてほしいんですけど……」
「じゃあ、奥様もやめて。万里子ママって呼んで」
「ええっ!? うーーん。じ、じゃあ、万里子さんで」
「ふふ。ありがとう、由起也くん」
こちらはそんな経緯で「万里子さん」と呼ぶことになったのだった。
そこで満足した万里子は、その会話を見守っていた隆平に苦笑されながら、寝かしつけられた。


由起也が万里子の部屋を辞しリビングに戻って、花城邸から帰ろうとした時、隆平に夕飯に誘われた。加奈子が張り切って用意しているらしい。今日のところは隆平の大学の友達扱いをしてくれるようだ。
由起也は、もうここで働くと心に決めたので、早速台所へ行って加奈子の手伝いを始めた。

夕飯の準備が整った頃、隆平の父親が帰宅してきた。
「白石くん、だったね? 私が隆平の父の寛治です。はじめまして」
「初めまして! 白石です。お、お邪魔してます!」
隆平の父親も背が高く、がっしりした体格。うわー、イケメンのお父さんは、やっぱりイケオジだー。と、由起也は遺伝子の神秘に感心した。

そして由起也は、隆平と寛治と一緒に夕飯の食卓を囲んだ。テーブルの上には、大根おろしの乗った和風ハンバーグをメインに、サラダや副菜がずらりと並んだ。ご飯と味噌汁もあり、和洋中と入り乱れているが、一人暮らしの由起也はきっと家庭的な食事に飢えているだろうという、加奈子の気遣いがあらわれたメニューだ。

食事の最初の頃は緊張していた由起也だったが、寛治や隆平が今日の万里子の様子をニコニコと聞くので、次第にその緊張はほぐれていった。
そこで由起也は、ようやく隆平とその父親を観察する余裕が出てきた。父子揃って精悍な顔つきだが、隆平の方がちょっと甘い雰囲気だ。これは万里子に似たのだろうか。いずれにせよ、隆平と寛治は親子だと一目でわかる容貌だ。
けれど、由起也にあれこれ話しかける様子は、二人ともどことなく空元気のようでもあった。
やはり、万里子の病気のことが常に心のどこかにあるのだろう、と由起也は感じざるを得なかった。

そして、食事がほぼ終わりに差し掛かった頃、寛治が真面目な顔で由起也に尋ねた。
「では、うちでのお手伝いの件、引き受けてもらえるんだね」
「はい。オレでよければ、万里子さんの……お手伝いをさせてください」
由起也も決意を込めて、真剣な眼差しで答えた。すると、寛治は一転、包容力を感じる笑顔を見せた。
「大歓迎だよ。この家と万里子のことを、どうぞよろしく」
「はい! こちらこそ、よろしくお願いします!」
由起也の決心は、正しく寛治に伝わったようだ。

ふと隆平の方を見ると、満足そうな、そして見守るような眼差しで由起也を見ていた。その温かな視線に気づいた由起也は、胸がどきりとするのを感じた。
ああ、イケメンは本当に罪深い。その笑顔でオレみたいな男でもドキッとさせるんだもんなー。ちょっと赤面したのを誤魔化すように、由起也はお茶を口に運んだ。

「ところで白石くん。万里子のことを万里子さんと呼ぶなら、私のことも寛治さんと呼んでよ」
「ブッフォ」
由起也はお茶を吹いた。
「なんならパパって呼んでもいいんだよ」
「父さん、ずるい! じゃあ俺のことは隆平さんって呼んでよ!」
「は、花城先輩まで……」
「ほら、この家にいるのはみーんな花城なんだから、名前の方が分かりやすいだろう」
「そうだよ! 白石くん! 俺も隆平って呼び捨てでもいいよ!」
「寛治パパでもいいねぇ」

何この家の人たち、距離感バグってない?!
由起也はたいそう戸惑った。知り合ったばっかりの自分を、早々に受け入れすぎじゃないか? ちょっと怖いんですけど!

だがしかし、その次に寛治が放った言葉に、由起也はさらに驚愕した。
「せっかくだし、うちに住めばいいんじゃないか?」
「は、はい?」
「そうだよ! 由起也、ここに引っ越しておいでよ!」
「部屋は一つ空いてるだろう、隆平?」
「うん、空いてる。狭いけど、一人なら十分な広さだと思うよ」

どうやら花城邸には、使用人用の部屋が2部屋もあり、一つは加奈子や訪問の看護師が荷物置き場として使っており、もう一部屋は空いているらしい。

「由起也くんは運転免許は持っているかい?」
寛治の突然の話題転換に驚きながら、由起也は答えた。
「いえ、まだです」
「運転免許は持っていた方がいいと思うんだがね」
「教習所に通いたいとは思っているんですけど、お金が」
「だったらうちに住んだら、家賃が浮く。教習所に通うお金も溜まりやすいんじゃないかい?」
「そ、それはその通りだと思いま、す?」
「うん、決まりだね。申し訳ないが、しばらく使っていないから、自分で掃除してね」

そんなわけで、まんまと丸め込まれた由起也は、花城家に住み込みで働くことになったのだった。


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