【完結】白雪くんはりんごアレルギー〜家政夫だと思っていたら嫁入りでした!

墨済

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2章 鏡よ鏡

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翌日から由起也は早速、花城邸に通い始めた。
朝に訪れて、万里子の様子を確認し、パパさんと隆平の朝食を準備する。万里子の食事介助を終えたら、大学へ向かう。講義を受けた後は花城邸に戻り、万里子とおやつを食べ、加奈子を手伝って夕食の支度をする。隆平やパパさんが戻ってきてから夕食を一緒に食べ、そして自分のアパートに戻る。そんな生活を送っていた。

オレ、家政夫なのにご飯を一緒に食べていいんだろうか? と疑問に思うこともしばしばだが、花城家の人たちがそれを喜ぶので、1週間もしたらすっかり馴染んでしまった。

そんな家政夫バイトと並行して、由起也は引越しの準備も進めた。
空いているという使用人部屋は、花城邸の勝手口の近くにあった。よくある学生向けワンルームより少し広いくらいの部屋に、由起也はたいそう驚いた。はー、お金持ちってすごい、と。キッチンこそないものの、ユニットバスまで付いている。
聞けば、運転手兼庭師が3年くらい前まで住んでいた部屋だという。結婚することになり奥さんになる人の故郷に移住するため、花城家の仕事を辞めたのだそうだ。

「それ以来この部屋は使ってないよ。エアコン、ちゃんと動くかな?」
そう説明しながらエアコンの試運転を始めた隆平に、その使用人がここに住むことになった経緯を、由起也は尋ねてみた。
「元は地上げ屋まがいのことをしてたらしいよ。父さんの不動産会社とやり合った時に負けて、改心してうちに来たって聞いてる」
なるほど、拾われたのはオレが初めてじゃなかったんだ。花城家の人たちがなぜこんなにあっさりと自分に住まいを提供できたのか、由起也はようやく腑に落ちた。要は拾い癖のある人たちなのだった。

「先輩は、犬とか猫とか拾ったことはありますか?」
「ないよ。残念だけど、犬や猫が捨てられてるのに出会ったことがないんだよね」
うん。出会ってたら確実に拾ってきてたな、この人。

一方、由起也が今住んでいるのは、いかにも学生用ワンルームという狭く細長いアパートだ。荷物もわずかしかない。母が亡くなって、二人で住んでいたアパートを出る時に大半を処分してから、モノが増えなかったのだ。隆平が、荷造りの手伝いで初めてこの部屋に来た時、あまりのモノの少なさに絶句していた。
増えなかったというか、お金がないから買えないんだけど。そう由起也は自嘲しながら、荷造りをした。

大切なものは、母さんの位牌と遺影と遺骨。それくらいだ。

***

大学3年生ともなると、それまで真面目に単位を取っていれば講義の数は減るものだ。そうなると友人に会える機会も減る。そして夏ともなると就職活動に向けての準備に入っていくので、グループで行動することも減っていく。なので、由起也が狩山と顔を合わすのも久しぶりだった。

「へ~、それであのイケメンの先輩の家に居候することになったんだ。白雪姫通り越してシンデレラかよ」
「メルヘンに寄せるのやめろ」
「弁当の中身も、豪華になってんじゃん」
「加奈子さん……元からいるお手伝いさんが、晩御飯を多めに作っておいてくれるんだ。だからその残りを弁当にさせてもらってる」
「良かったなぁ、白雪」
「うん、本当に助かってる」

そうやって口では良かったと言いながら、狩山がなぜか複雑な顔をしている。
「狩山、なんでそんな顔してんの?」
「いや、まぁ、その……」
モゴモゴと口ごもる狩山に、由起也はさらに問うた。
「だから、何? なんか言いたいことあるの?」
「あのな、白雪。あのイケメンの、花城先輩のことなんだけど」
「何?」
「ゲイだって噂を聞いた」

ふーん。なんで狩山は、人に聞かれてはまずいとでもいうように、声をひそめてるんだ? 由起也は狩山がひそひそと話す様子に苛立ち、あっさりとした返事しかできなかった。
「そうなんだ」
「なんだよ、白雪。俺はお前を心配して言ってるんだぞ」
「いやいやいや、ゲイの人たちだって、相手くらい選ぶでしょ。あんなイケメンが、オレなんかに手を出すと思う?」
「あ~、まぁ、言われてみれば」
「だろ?」
だいたい、本人の預かり知らぬところで、プライバシーに関わることを噂話の種にするなんて、良くない。由起也はそういうことが好きではなかった。

「白雪の言う通りかも。花城先輩に振られた女がそんな噂を流した、っていう説もあるし」
「ほらな。どっちにしろ、先輩に失礼だよ」
「そうだな」

その話はそこで収束し、話題は迫りつつある前期試験へと移っていった。
けれど、由起也の胸にはなぜかモヤモヤが残った。
そりゃー、隆平先輩は超のつくイケメンだし。そりゃー、女の人にもモテるだろうし。
根拠不明の噂より、隆平がモテる方にモヤモヤしていることに、由起也はこの時まったく気づいていなかった。



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