【完結】白雪くんはりんごアレルギー〜家政夫だと思っていたら嫁入りでした!

墨済

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4章 深い森の中には

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隆平が入れてくれたコーヒーを飲みながら、由起也は自分の気持ちを話した。まだ整理しきれていない気持ちだから、順序立てて話せなかったけれど、隆平は真剣に聞いてくれた。
もう一生知ることはないと思っていた父親のフルネーム。足を運べば、父が育った場所も見られること。けれど、本当に自分が知ってもいいのかどうか、不安でたまらないこと。母が隠し通したことを自分が知ってしまって良かったのか。
そんなことを訥々と由起也は話した。

「ごめんね、由起也。俺は、知ることができるなら、知った方がいいと思ったんだ」
「オレもそう思います。けど、今は気持ちが追いついていなくて。……決心がついたら、一緒に行ってもらえますか?」
「もちろん! 喜んで!」
「ふふ。居酒屋じゃないんですから。……ありがとうございます」
――隆平先輩はいつも、オレが行き詰まったら道を拓いてくれる。そして寄り添ってくれる。
由起也は、隆平と出会えたことを心から感謝した。

***

クリスマスイブの夜は、パパさんも早めに帰ってきてくれて、小さなパーティをした。
由起也が、加奈子に習いながら作った料理は大好評だった。メインはチキンステーキ。リースの形に盛り付けたブロッコリーと生ハムのサラダを万里子はたいそう喜んでくれた。前菜にもなるし、お酒のおつまみにもなると作ったサーモンと野菜のテリーヌは、パパさんと隆平に大好評だった。
みんなの喜ぶ顔が見られて、由起也も大満足だった。

これまた由起也作のチーズケーキをみんなの前に並べ終わった時、パパさんが由起也へのプレゼントを取り出してきた。
「由起也くん、いつもありがとう。これは私たち3人からのクリスマスプレゼントだ」
「あ、ありがとうございます!」
由起也が包み紙を丁寧に剥がすと、タブレット端末が出てきた。
「きっと役に立つと思って」
「あると何かと便利だろう?」
「俺、設定を手伝うよ」
「はい! すごく助かります! ありがとうございます!」
由起也は子どものようにタブレットを胸に抱きしめて、礼を言った。

「あの……、オレからもプレゼントがあるんです」
そう言って由起也は立ち上がり、自分の足元に置いておいた紙袋から、3つのプレゼントを取り出した。
万里子には手触りふわふわのルームソックス、パパさんにはちょっと高級なおつまみチーズのセットを渡した。二人はとても喜んでくれた。

そして、隆平にはコーヒー豆と紅茶のセットだ。
「先輩。資料探しで、先輩も修論の準備が遅れてるんじゃないですか? オレも公務員試験の勉強がかなり遅れているし。それを飲みながら、一緒に挽回しましょう」
「うん、そうしよう。由起也、ありがとう」
とろけそうな笑顔で礼を言う隆平と目が合い、由起也は胸が締め付けられるような幸せを感じた。
寛治と万里子の温かな視線が、そっと二人を包んでいた。

***

花城家のクリスマスパーティが終わった後、珍しく隆平が皿洗いを手伝ってくれた。手を動かしながら、今日の料理の感想や今後の勉強計画など、とりとめのない話をした。そんな何気ない時間にも、とても幸せな気持ちが胸に湧いてくるのを由起也は感じた。

作業が終わった時、隆平が改まった顔をして「由起也」と声をかけてきた。
「これ、さっきのタブレットとは別に、俺からのプレゼント」
「わ。ありがとうございます。開けていいですか?」
「うん。気に入ってもらえるといいんだけど」
隆平が差し出したのは、小さな紙袋。それを由起也は受け取り、中に入っていた小箱を開いた。
キーケースだ。
「実は、俺とお揃い」
隆平がスウェットパンツのポケットから、色違いのキーケースを取り出した。
「良かったら、使ってくれると……嬉しい」

由起也は胸の奥が熱くなるのを落ち着かせるように、しっとりと滑らかな皮の表面をそっと撫でた。
「ありがとうございます。大切に使います」
――この人と一緒なら、きっと前に進める。

由起也は顔を上げて、隆平の顔をまっすぐ見ながら静かに伝えた。
「先輩。父さんの街へ、……一緒に行ってくれますか?」
隆平は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに満面の笑顔で答えた。
「うん。いいよ。一緒に行こう」

相談の結果、年明けの大学が始まる前に行ってみようということになった。


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