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4章 深い森の中には
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「由起也、家についたよ」
隆平にそう声をかけられて、由起也はハッと気づいた。
あのカフェを出てからの記憶がない。
――父さんはやっぱり、亡くなっていた。
分かっていた。ずっとそう思って生きてきたから、今更ではある。けれど、あらためて事実として知って、衝撃を受けてしまった。
「すみませんでした。無駄足を踏ませてしまって」
由起也は、平坦な声で隆平に謝った。
「こっちこそ……かえって悲しませてしまって、ごめん」
「……」
そろそろ晩御飯の支度をしないと、と思うが、車から降りる気力が湧いてこない。ぼんやりとダッシュボードを眺めていると、
「由起也。……泣いてもいいんだよ」
隆平が、低く、やさしい声でそう言った。そうしたら由起也はもう、我慢できなかった。涙腺が決壊し、止めどなく涙がこぼれる。
「父さん……。……父さん!」
膝の上に乗せた手を握りしめて、由起也は嗚咽を漏らしながら泣いた。
すると、隆平の長い腕が伸びてきて、由起也を力強く抱きしめてきた。
「うわーーーっっ! 父さん! 父さん……母さん!」
由起也は隆平の腕の中で、大声をあげて泣いた。それは12年分の涙だった。
泣きながら思った。――母さんはこんな気持ちで泣いていたんだ、と。
***
「先輩。本当にすみませんでした」
由起也の部屋の前までついてきた隆平に、あらためてお詫びを言うと、隆平はなぜか悔しそうな顔をした。
「謝ることなんてないよ。こっちこそ謝らないと」
「どうしてですか?」
「由起也をこんなに悲しませるなんて。俺は、自分の浅はかさが情けない」
逆に隆平に謝られて、由起也は困ってしまう。
父さんが亡くなっていたことを確認できたのは良かったと、思いっきり泣いた後の今ではそう思っている。一つ区切りがつけられたので、一緒にあの街へ行ってくれた隆平には感謝こそすれ、謝られることなんてないと思う。
「先輩がいてくれたから、オレ、ちゃんと事実を知ることができました。祖父らしき人が生きているってことも分かりましたし。……会うつもりはありませんけど。でも、地に足がついた気がしてます。だから、ありがとうございました」
由起也は顔を上げて、隆平の顔をしっかり見ながら礼を言った。泣き腫らした後だから、きっとブッサイクな顔をしていると思うけど。そう思って、ちょっと照れ隠しに笑ってしまった。
すると……
高い背をかがめた隆平の顔が、すぐ目の前までゆっくりと迫ってきた。え、と思っているうちに、額のあたりに柔らかい感触がした。
なにこれ。もしかして、キスされた?
由起也が状況を理解できないでいる間に、隆平の顔が離れていった。そして、とろけそうな笑顔で隆平は言った。
「由起也、好きだよ。……今日はもう、おやすみ」
そして、もう一度由起也の額に軽くキスを落として、颯爽と2階へ上がっていった。
由起也はしばらく部屋の扉の前で呆然と立っていた。呆然としたまま扉を開けて部屋に入り、扉を閉めた瞬間、顔が沸騰したように熱くなった。
え、えーーーーー!!!
隆平にそう声をかけられて、由起也はハッと気づいた。
あのカフェを出てからの記憶がない。
――父さんはやっぱり、亡くなっていた。
分かっていた。ずっとそう思って生きてきたから、今更ではある。けれど、あらためて事実として知って、衝撃を受けてしまった。
「すみませんでした。無駄足を踏ませてしまって」
由起也は、平坦な声で隆平に謝った。
「こっちこそ……かえって悲しませてしまって、ごめん」
「……」
そろそろ晩御飯の支度をしないと、と思うが、車から降りる気力が湧いてこない。ぼんやりとダッシュボードを眺めていると、
「由起也。……泣いてもいいんだよ」
隆平が、低く、やさしい声でそう言った。そうしたら由起也はもう、我慢できなかった。涙腺が決壊し、止めどなく涙がこぼれる。
「父さん……。……父さん!」
膝の上に乗せた手を握りしめて、由起也は嗚咽を漏らしながら泣いた。
すると、隆平の長い腕が伸びてきて、由起也を力強く抱きしめてきた。
「うわーーーっっ! 父さん! 父さん……母さん!」
由起也は隆平の腕の中で、大声をあげて泣いた。それは12年分の涙だった。
泣きながら思った。――母さんはこんな気持ちで泣いていたんだ、と。
***
「先輩。本当にすみませんでした」
由起也の部屋の前までついてきた隆平に、あらためてお詫びを言うと、隆平はなぜか悔しそうな顔をした。
「謝ることなんてないよ。こっちこそ謝らないと」
「どうしてですか?」
「由起也をこんなに悲しませるなんて。俺は、自分の浅はかさが情けない」
逆に隆平に謝られて、由起也は困ってしまう。
父さんが亡くなっていたことを確認できたのは良かったと、思いっきり泣いた後の今ではそう思っている。一つ区切りがつけられたので、一緒にあの街へ行ってくれた隆平には感謝こそすれ、謝られることなんてないと思う。
「先輩がいてくれたから、オレ、ちゃんと事実を知ることができました。祖父らしき人が生きているってことも分かりましたし。……会うつもりはありませんけど。でも、地に足がついた気がしてます。だから、ありがとうございました」
由起也は顔を上げて、隆平の顔をしっかり見ながら礼を言った。泣き腫らした後だから、きっとブッサイクな顔をしていると思うけど。そう思って、ちょっと照れ隠しに笑ってしまった。
すると……
高い背をかがめた隆平の顔が、すぐ目の前までゆっくりと迫ってきた。え、と思っているうちに、額のあたりに柔らかい感触がした。
なにこれ。もしかして、キスされた?
由起也が状況を理解できないでいる間に、隆平の顔が離れていった。そして、とろけそうな笑顔で隆平は言った。
「由起也、好きだよ。……今日はもう、おやすみ」
そして、もう一度由起也の額に軽くキスを落として、颯爽と2階へ上がっていった。
由起也はしばらく部屋の扉の前で呆然と立っていた。呆然としたまま扉を開けて部屋に入り、扉を閉めた瞬間、顔が沸騰したように熱くなった。
え、えーーーーー!!!
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