小林さんと中村さん【R18】

RiTa

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その14

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「小林さーん。今日お弁当?」
「ううん。作る時間なくて」
「じゃ、ランチ一緒しよ」
「うん」

あの後中村さんは私をそのままに先に総務倉庫から出て行ってしまい
それから帰宅して今まで悶々として、寝つきが悪かったのか、木曜日の朝は寝坊してお弁当を作る時間がありませんでした。

午前中も集中力を欠き、何度も入力を間違えて、仕事が全然捗らず、ランチ前から残業を決めていました
早く帰宅して1人になってしまうより、その方がいいとも思っていたのも事実です



一方中村と幹事は会社から少し離れた定食屋で注文した物を待っていました
中村は昨日の音声をUSBに保存した物を幹事に渡そうか迷いましたが
「あー腹減ったー」
平和そうな幹事に要らぬ心配事を吹き込むのはやめようと思い止まりました



「ここね、狭くてお洒落じゃないけど穴場なの!」
「安くて美味しいんだから!」
そう言われて連れて来られたのは、本当に小さな定食屋さんでした。
同僚の1人がガラガラと引き戸を開けると
「いらっしゃい!何名様?」
「3名ですけど…あー!!」
そんな声だけが聞こえた後、2人に続いて店内に入ると…

幹事さんと中村さんの姿と
「一緒でいいって!」
「小林さんおいでー」
すっかり同じテーブルに座る同僚がいました
「はぁ…」
率直に“限りなく微妙で不安だ”と感じ
「小林さん疲れてね?大丈夫?」
「あー…はい…」
自分がどんな顔をしたのか、幹事さんには疲労が見えたようです。
わざわざ6人の席に移ったのか、幹事さんの隣1つを開けて中村さん
その向かいに肩を並べて座る同僚2人
残された席は中村さんの正面にしかありません
そこに座ると
「はじめまして。中村です」
淡々と言い放ったそれにドキリとさせられ
「………小林です」
こちらを見続ける中村さんを見ることはないまま頭を下げ、目線に困っていました




のもつかの間
ガラガラと店の引き戸が開くと同時に
「あー!ずる~い!あたしもランチ入れてくださぁ~い!」
「え?」
「なんで?」
サセコちゃんは幹事さんと中村さんの間に堂々と座りました。
私達の注文を終え、先に注文した物が届いた幹事さんと中村さんは“悪い”と言いながらそれを食べ始めます
その間サセコちゃんは中村さんを見ながら
「女子社員さん達のぉ~姿が見えたからぁ~また話聞いてもらいたくて~一緒にランチしてもらおうと思ってぇ~追いかけて来たんですよぉ~
そしたらぁ~ランチ合コンしてるじゃないですかぁ~
しかもぉ~中村さんいるし~あたしの事誘わなかったのってぇ~やっぱりそれなんですかね~中村さん?」
「っつーか、そんなに仲良くねーし(小声)」
「誘った事1度もねーし(小声)」
「やだ~社員さん達睨んでませ~ん?怖ぁ~い」
「ハハ…そんな事ないよ…多分」
同僚2人は幹事さんを睨みました

全員の注文が揃い、サセコちゃん以外は黙々と食べ続けます
「あたしぃ~こういう所初めてなんですけどぉ~美味しいですねぇ~?また来たいなぁ~中村さん?」
「そう言えばさ…」
食事を済ませた中村さんは思いついたように話し出しました
「何ですかぁ~?中村さん?」
ずっと無言だった中村さんが話してくれた事に、サセコちゃんは嬉しそうで
「総務の倉庫として使われてる部屋あるだろ?」
「…え~どこですか~?」
サセコちゃんの勢いが弱まりました
「あぁ…ロッカーと同じ階にある所?」
「そうそう。あの部屋って誰も入らないと思ってたんだけど…」
「あぁ、入ってる人見た事ないね」
「私も入った事ないわ」
「オマエは?」
「オレ?入るわけねーじゃん。入ったって人も聞いた事ねーな」
「小林さんは?」
なるべく平然を装って
「入った事…ないです…ね…」
「へー」
それは“ウソが下手すぎる”の“へー”でしょう
「キミは?」
「えぇ~?…あたしぃ~…派遣だしぃ~…入るわけ…ないじゃないですかぁ~」
その声はいつもよりボリュームが抑え目でした
「そっか…じゃあ話すけど
昨日の帰り、あそこの前通ったら、電気も点いてないのにすっげー音がしててさ…人の声も聞こえてるような気もしたんだよ」
「何?オカルト?」
「さーね」
「アレじゃね?誰かヤってたんじゃ…」
「はいバカ!オマエ以外そんな事するわけないじゃん」
「オレだって憧れはあっても流石にねーって…」
そこで1度みんながサセコちゃんを見ましたが、私も動揺がバレないように務めました
「だよな。まぁ職場でって男としては分からなくもねーけどさ…」
「ウソ?中村さんも分かっちゃうの?」
「そりゃ男だからね」
「えぇ~!あたしぃ~中村さんならぁ~…」
「でもそれをしちゃう女は普通じゃないだろ?」
元気を取り戻したサセコちゃんの言葉を私を見ながら中村さんが遮り目線を上げ
「可能性で言えば、愛人関係にある男女とか…」
サセコちゃんは顔を少し痙攣らせました
そして中村さんは私を見ると
「あんな所で欲情する女が社内にいるわけないよな?小林さん」
それに身体の奥をギュッとさせられ、何か返事をしなければと思っていたら
「あえて小林さんに降るなよ」
「あぁ…悪い」
「意外と中村さんってそういう所あるのね」
「それで?結局のところ何だったの?」
「分からないから、また帰りに行ってみるかなってさ…」
「今日行ったら分かるの?」
「さーね。もし誰かがヤってたなら、何かを落としてたり忘れてるかもしれない…だろ?」


定食屋さんから出ると、サセコちゃんは急いで会社へと向かいました
きっとお化粧直しに余念がないのだと思います
残されたメンバーを見て
「あー!せっかくだから今日みんなで飲み行かね?」
幹事さんが言ってくれたのですが
「あ…今日私残業なんで、みなさんで楽しんできてください」
これはウソではないので、スラスラと正直に伝えられました
「オレも仕事残りそうだ…悪い、先行くわ」
そういうと中村さんは行ってしまいました
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