小林さんと中村さん【R18】

RiTa

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その15

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中村はその足で総務倉庫へと向かうと、そーっとドアを開けました

「何か落としてたか?」
「ひゃっ!」

倉庫内で床に這いつくばっていたサセコが驚きで立ち上がると

「変な噂を立てられたくないからドアを開けたまま話しがしたいけど、誰かが通って聞かれたら、マズイのはそっちだ…身の安全を保障してもらえたらドアを閉めるよ」
「何で?帰りに来るんじゃ…」

サセコはまだこの状況に納得していないようで会話になりそうにありません

「とりあえず棚の向こうに行こうか?質問はその後で」

サセコは棚の向こうで中村と話すと思い
それに従いましたが、中村はドアの前から動きません
棚を挟んだ荷物の間越しに中村が見える位置へと移動すると
それを見届けた中村は音を立てないようドアを閉めました。

「中村さん違うの!これは…」

棚を隔てたまま会話がなされます

「落ち着いて。誰にも言うつもりはない。話がしたいんだ」

サセコがパニックにならないよう、中村は丁寧に話します

「あたしもこんな所でなんて…誰かな…と思って来ただけで…」
「残念だけど、昨日の音声は録音してある。もちろん今もだ。下手げな事言わない方がいい」
「………」
「今後オレとかオレの周りがどこかに飛ばされたり、不本意に違う部署に異動になったり…派遣社員から迷惑をかけられたり…そんな事がないと約束してくれないか?」
「そんなの…あたしと…関係なくない?」
「それなら音声の入ったUSBを人事部長の奥さんに送っても問題ないか…」
「止めて!」
「じゃあどうする?」
「…約束する。でも、あたし、そんな事するつもりないもん」
「知ってる。キミの行動でそうなる可能性があるってだけだ
中途半端に権力がある男の嫉妬は女より面倒だから」
「………」
「人事部長だけじゃないんだろ?」
「………うん」
「贅沢する為だけならリスクもあるし安すぎるんじゃね?
じゃ…この事はお互い秘密って事で」

中村はその部屋を出て午後の業務に向かいました




『やっぱり終わらない』
就業時間を迎えた時、想定を超えて仕事が残っていました。
長い事パソコンに向かっていると、人が減って行くのと共に雑音が減り、作業に没頭する事が出来ました
時間の感覚を忘れ、うっすら課長の“じゃ…電気とセキュリティよろしく”という声が聞こえたようにも思います。

もうすぐ終わると思った頃お腹がキュルッと鳴りましたが、仕事を終わらせる事を優先しようとお腹に力を込めた時

「本当に残業してんだな」

「な…中村さん…入ってきて…大丈夫ですか?」

見回せば室内の電気は半分消され、同じ部署の人はいないのですが違う部署の中村さんがここにいる事は、あまりよろしくないように思います

「何とでも言えるし大丈夫だろ。飯、買って来たから食おう」

時間を見たら8時を過ぎています。ご飯を買って来てくれたとは驚きました。

「ありがとうございます。もう少しで終わるので、中村さんは食べちゃってください」
「じゃ、遠慮なく」

中村さんの持つ袋から、焼き肉屋さんの焼き肉弁当の良い匂いが漂って来て、人参をぶら下げた馬の如く残った仕事のスピードが上がりました。

「それ」
「え?」
「グラフが間違ってる」

中村さんはご飯を食べずに隣のデスクで肘をついて、私のパソコンを見ていたのです

「え?合ってますよ?」
「多分そっちから違うんだろ」
そもそも渡された資料のグラフが間違っていたようで
「ちょっと借りる。飯、食ってて」

ノートパソコンを奪うように自分に向け、何やら打ち込み始めました

「あの…中村さん…」

私の声は届かず、存在すら忘れているようで
食い入るように作業する中村さんを食い入るように見る続ける事しか出来ませんでした。

時間にして2、3分でしょうか
さほど待たされる事なく

「オッケー」

そう言ってこちらを見て

「あ?まだ飯食ってないのか?」
「はい…全部終わらせてからじゃないと…」
「もう終わってる」
「え?」

それには早すぎるはずなのですが確認してみると、“間違ってる”と言ったグラフはそのままで、残されていた物が完璧に仕上がっていました。

「ありがとう…ございます…お茶、入れて来ますね」
「あぁ、ありがとう」

中村さんはいつもと変わらないはずなのに、なぜか私だけがドキドキしてしまいました


緊張で食べ物が喉を通らないかと思ったのですが

「美味しい…」

空腹に与えられた焼き肉弁当は心の声が漏れてしまう程美味しくて、1口食べたら、箸が止まる事なく最後まで食べ切ってしまいました
部署の後片付けをしたら、暗くなった社内の移動まで中村さんは“付き添う”と付いて来てくれたのです
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