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【続編②】これからの事
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夜遅くになって、レオはリビングへやってきた。
広いリビングの薄暗い間接照明で飾られたバーカウンターで、クヌギは一人バーボンウイスキーを嗜んでいた。
「君は寝なかったのかい?」
クヌギはレオの姿に気づき、声をかけた。
「はい。ソラの寝顔を眺めていました。」
「ずっとかい?」
「やっと再会した大切な恋人ですから。」
レオは、"恋人"を強調する様に言うと、クヌギとの間に一つ席を空けて座った。
「恋人…か。空は、よくレオ君の話をしては、目を潤ませていたよ。どんな人なのだろうと思っていたが、想像通りだったよ。見た目の美しさもさることながら、内面も精神的に自立している。若いのに大したものだよ。空が好きになるのもわかる。」
クヌギは、半分独り言のように言うと、手元のバーボンを喉に通した。
「…クヌギさんは、ソラが好きなの?」
レオのストレートな質問に、クヌギは少し驚くが、レオの方に向き直って答えた。
「好きだ。俺は惚れっぽい性格じゃないが、空に出会って、年甲斐もなく本気で恋をしている。正直、君には渡したくない。」
「ソラは渡しません。ボクは明日、ソラを連れて帰ります。」
「それは、レオ君自身の気持ちだろう。空が悩んでいる事は分かっているだろう?君の事が好きだからこそ、一緒に帰れば君に被害が及ぶと思っている。それに、レオ君自身も空をずっと守っていられる訳ではない。いつまた拉致されるか分からないだろう。君には想像がつかないかもしれないが、この界隈の男達は虎視眈々と空を狙っている。今日のマフィアが良い例だ。この先、空を守り続けないといけないよ。君にそれが出来るかい?」
「‥‥。」
レオはすぐに言い返すことが出来ず、考え込む様子を見せた。
それを見て、クヌギが話を続けた。
「提案があるんだ。」
「提案?」
「俺とレオ君。2人で空を守るんだよ。」
「…え?」
思いもよらぬ言葉にレオは驚いて聞き返した。
「ここで2人とも暮らすんだ。ここは豪邸だ。何でもある。暮らしに困る事はない。実際、空は今日までここで暮らしてきた。行く宛てがなかったという理由もあるだろうが、居心地は悪くなかった筈だ。」
「でも、安全かどうかは分かりません。今日だってマフィアに襲われた。」
「セキュリティは強化するつもりだ。それに、君たちの街に戻る方が危険だ。裏社会の男達は執念深い。空のような美少年を手に入れる為なら何処へでも行くだろう。家にボディーガードがいるかい?10代の君に雇う費用があるかい?それにレオ君自身も標的になる可能性だってある。空とはタイプが違うが、君も長身でヨーロッパ風の美少年だ。ハーフなんだろう?そういう子も人気が出るよ。」
クヌギはそこまで言うと一息ついて、「空が一番心配しているのはそこなんじゃないのかい?」と付け加えた。
「…仮にそうするとしても、ソラの画像や動画をSNSに載せてお金を稼ぐような事は絶対にさせられない。」
「それはもう辞めようと思っている。金の為とはいえ、空の体を晒すような事は本当はしたくない。俺は写真家だが、好きな子の美しい姿は自分のフィルムに収めていたい。」
「でも、辞めたら、どうやって生計を立てていくつもりなんですか?」
「バーを始めるつもりなんだ。まだ空にも話をしていなかったがな。空のお陰で資金は随分集まったし、実は話も随分進んでいる。今回もその件で留守にしていた矢先にマフィアに乗り込まれたんだ。まぁ、そういう訳で、今のビジネスはずっと続けるつもりはなかった。空と2人でバーをしたかったんだよ。」
クヌギの真剣な表情に、レオは息を吞んだ。
レオは、クヌギが空との将来を描いていたなどと思いもしなかった。
少しの間、沈黙が流れた。
「僕、それでもいいよ。」
突然、後ろから小さくつぶやく声が聞こえ、2人が振り向くと、空が立っていた。
「ソラ、もう大丈夫なの?」
「空、もう平気なのか?」
レオとクヌギが同時に言った。
「うん、体は大丈夫だよ。」
空は、ハモった2人の声に少し驚きながらも答えた。
「ソラ、それでもいいってどういう意味?」とレオが聞いた。
「今のクヌギさんの話。僕はそれでもいいかなって思う。」
「ソラ、でも…。」
「もちろんレオの気持ちもわかるよ。でも、クヌギさんの言う通りなんだ。もう僕は色んな人や組織に目を付けられていて、普通の生活には戻れないんだ。」
「ソラ…」
レオは、空に近づいて、そっと抱きしめた。
空もそれに応えるようにレオの背に手を回した。
「大事なことだからレオも考える時間が必要だと思う。でも、僕はクヌギさんの提案に賛成する。僕はレオと一緒に居られるならそれでいいの。」
空はレオの目をみて言った。
「レオ君の部屋も用意出来るよ。シェフがいるから好きな物も食べられるし、風呂も広い。海も近い。学校には通えなくなるが、オンライン教育の受講も可能だ。そして何より、最愛の空を守る為には最高の砦だよ。悪い話ではないと思う。」
クヌギがレオを説得するように言った。
クヌギは結局のところ、空と離れたくなかったのだ。
「ソラと2人で話をしてきてもいいですか?」とレオが言った。
「もちろん。2人で結論を出してほしい。」とクヌギが答えた。
広いリビングの薄暗い間接照明で飾られたバーカウンターで、クヌギは一人バーボンウイスキーを嗜んでいた。
「君は寝なかったのかい?」
クヌギはレオの姿に気づき、声をかけた。
「はい。ソラの寝顔を眺めていました。」
「ずっとかい?」
「やっと再会した大切な恋人ですから。」
レオは、"恋人"を強調する様に言うと、クヌギとの間に一つ席を空けて座った。
「恋人…か。空は、よくレオ君の話をしては、目を潤ませていたよ。どんな人なのだろうと思っていたが、想像通りだったよ。見た目の美しさもさることながら、内面も精神的に自立している。若いのに大したものだよ。空が好きになるのもわかる。」
クヌギは、半分独り言のように言うと、手元のバーボンを喉に通した。
「…クヌギさんは、ソラが好きなの?」
レオのストレートな質問に、クヌギは少し驚くが、レオの方に向き直って答えた。
「好きだ。俺は惚れっぽい性格じゃないが、空に出会って、年甲斐もなく本気で恋をしている。正直、君には渡したくない。」
「ソラは渡しません。ボクは明日、ソラを連れて帰ります。」
「それは、レオ君自身の気持ちだろう。空が悩んでいる事は分かっているだろう?君の事が好きだからこそ、一緒に帰れば君に被害が及ぶと思っている。それに、レオ君自身も空をずっと守っていられる訳ではない。いつまた拉致されるか分からないだろう。君には想像がつかないかもしれないが、この界隈の男達は虎視眈々と空を狙っている。今日のマフィアが良い例だ。この先、空を守り続けないといけないよ。君にそれが出来るかい?」
「‥‥。」
レオはすぐに言い返すことが出来ず、考え込む様子を見せた。
それを見て、クヌギが話を続けた。
「提案があるんだ。」
「提案?」
「俺とレオ君。2人で空を守るんだよ。」
「…え?」
思いもよらぬ言葉にレオは驚いて聞き返した。
「ここで2人とも暮らすんだ。ここは豪邸だ。何でもある。暮らしに困る事はない。実際、空は今日までここで暮らしてきた。行く宛てがなかったという理由もあるだろうが、居心地は悪くなかった筈だ。」
「でも、安全かどうかは分かりません。今日だってマフィアに襲われた。」
「セキュリティは強化するつもりだ。それに、君たちの街に戻る方が危険だ。裏社会の男達は執念深い。空のような美少年を手に入れる為なら何処へでも行くだろう。家にボディーガードがいるかい?10代の君に雇う費用があるかい?それにレオ君自身も標的になる可能性だってある。空とはタイプが違うが、君も長身でヨーロッパ風の美少年だ。ハーフなんだろう?そういう子も人気が出るよ。」
クヌギはそこまで言うと一息ついて、「空が一番心配しているのはそこなんじゃないのかい?」と付け加えた。
「…仮にそうするとしても、ソラの画像や動画をSNSに載せてお金を稼ぐような事は絶対にさせられない。」
「それはもう辞めようと思っている。金の為とはいえ、空の体を晒すような事は本当はしたくない。俺は写真家だが、好きな子の美しい姿は自分のフィルムに収めていたい。」
「でも、辞めたら、どうやって生計を立てていくつもりなんですか?」
「バーを始めるつもりなんだ。まだ空にも話をしていなかったがな。空のお陰で資金は随分集まったし、実は話も随分進んでいる。今回もその件で留守にしていた矢先にマフィアに乗り込まれたんだ。まぁ、そういう訳で、今のビジネスはずっと続けるつもりはなかった。空と2人でバーをしたかったんだよ。」
クヌギの真剣な表情に、レオは息を吞んだ。
レオは、クヌギが空との将来を描いていたなどと思いもしなかった。
少しの間、沈黙が流れた。
「僕、それでもいいよ。」
突然、後ろから小さくつぶやく声が聞こえ、2人が振り向くと、空が立っていた。
「ソラ、もう大丈夫なの?」
「空、もう平気なのか?」
レオとクヌギが同時に言った。
「うん、体は大丈夫だよ。」
空は、ハモった2人の声に少し驚きながらも答えた。
「ソラ、それでもいいってどういう意味?」とレオが聞いた。
「今のクヌギさんの話。僕はそれでもいいかなって思う。」
「ソラ、でも…。」
「もちろんレオの気持ちもわかるよ。でも、クヌギさんの言う通りなんだ。もう僕は色んな人や組織に目を付けられていて、普通の生活には戻れないんだ。」
「ソラ…」
レオは、空に近づいて、そっと抱きしめた。
空もそれに応えるようにレオの背に手を回した。
「大事なことだからレオも考える時間が必要だと思う。でも、僕はクヌギさんの提案に賛成する。僕はレオと一緒に居られるならそれでいいの。」
空はレオの目をみて言った。
「レオ君の部屋も用意出来るよ。シェフがいるから好きな物も食べられるし、風呂も広い。海も近い。学校には通えなくなるが、オンライン教育の受講も可能だ。そして何より、最愛の空を守る為には最高の砦だよ。悪い話ではないと思う。」
クヌギがレオを説得するように言った。
クヌギは結局のところ、空と離れたくなかったのだ。
「ソラと2人で話をしてきてもいいですか?」とレオが言った。
「もちろん。2人で結論を出してほしい。」とクヌギが答えた。
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