下宿屋 東風荘 7

浅井 ことは

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「主に野菜や果物だけど、仕入れ前でよかったよ。この雨じゃ、明日に立つのは難しそうだからね」

「やっぱり明日も雨酷いのかなぁ?」

「土砂降りだろうね。あ、食事が運ばれてきた!ここの食事はおいしいんだよ。大部屋だから自分で取りにいかないといけないんだけど」

重次を見ると取りに行って来ると運ばれてきた食事の方を指さすので、お願いと目で訴えて来るのを待っている間に意識を集中させ、周りに何もおかしい気が無いことを確認する。

『ゆっきー、ここは安全そうです。紫狐も冬弥様から気の欠片をもらってますからそのぐらいは分かりますー。でもあの青年大丈夫なのですか?』

『どうして?優しくしてくれてるよ?』

『そういう人ほど危ない時があるのですー。だから重次さんの気もピリピリしてましたよ?ゆっきーは騙されやすいんですから……』

『僕だってもう攫われたくないし。だから自分に出来る範囲で嫌な気がないかだけでも調べてたのに』

『何かあればすぐに紫狐たちを呼んでください』

紫狐達がかなり気にしてくれていたようだが、お盆を二つ持って戻ってきた重次に畳の上に置いてもらい食事をし、お風呂に入りに行ってから地図を広げる。

「今ここだよね?」

地図に指をさすと、「ここからこの道で行こうと思ってたのですけど、また雨が降ることを考えるとちょっと考えた方がいいかもしれません。必ず町を通過した方がいいと思います」

「そんなに降るの?」

「一度降ると続けて降ることが多いので、秋に行くのにはこの海沿いから行くと必ず宿はあります。夏は海の家も沢山出ますから、宿も多いんです」

「遠回りになっちゃうね」

「徒歩でしたら三か月では無理だったでしょうが、荷馬車がありますから。この海の方から行くか、山には近くなりますが、町を抜けていくか……」

「天気だったらもう一つの山に近い道のが早かったんでしょ?なら、間の道で行こうよ。見て回るところはあるの?」

「海ぐらいですから、この辺りには何も。隣の街に行けば芝居小屋がありますよ?東とは出し物が違うので見て行かれます?」

「こっちの出し物って歌舞伎みたいで僕よくわかんないんだけど……」

「ここだと動物が出ます。こちらの動物ではないのですが、各地から集められた動物の芸が見れるとか。私もまだ見たことないんです」

「サーカス?」

「向こうではそう言われているのですか?」

「うん。動物なら見てみたいな。移動しないの?」

「そこはしてません。真夏は秋の方に行くこともあるようですが、基本はここでやってます」

楽しみが増えたと、夜の薬を飲んで布団に横になり、小さな地図を見ているうちに眠ってしまった。

朝はみんなが騒がしいのでそれで起きたが、雨が小降りのうちにと出ていく商人がいるようで、まだ外は薄っすらと明るくなっただけだった。

「みんなもう出かけちゃうのかな?」

「おはよう。良く寝れたか?」

「あ、おはようございます。騒がしくて起きたから……半分ぐらいの人が荷物まとめてるのでもう出かけるんだなって……」

「あぁ、あの商人たちは秋の国の方に行くんだ。だから時間がかかるから、少しでも進んでおきたいんじゃないかな。たぶん国境の街での仕入れだと思うよ」

「へぇ……」
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