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南中心街から秋へ
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とにかく結界を張るのに集中しろと言われ、目を閉じてそれだけに集中しつつ、周りから聞こえてくる音にも耳を傾ける。
「話し声が聞こえるよ?」
「俺には聞こえぬ」
「この馬車の屋根に乗れないとか、近付けないとか……違う荷馬車に変更するって言ってるけど……この馬車が怪しいから境界まで付いてくるって。二人!二人だけ付いてくるって言ってる!」
「外の声が聞こえるのか?」
「檪は聞こえない?」
「ハッキリとは。でも二人ならば、俺だけで十分だ」
そう言って荷馬車から降りて行ってしまったが、今度は御者台の方でガタッと音がして慌てて張っていく。
「馬車を止めてくれ」
「檪、この人誰?」
「坊っちゃま、脇に停めます。ロープがあるので貸してください」
手元にあったロープを渡すと、相手が逃げられないようにぐるぐる巻きにし、口には手ぬぐいを巻いて口を塞いでいる。
「ここまでしなくっても……」
「坊っちゃま、結界を解いてもらっていいです。この者は旅の馬車を専門に狙っている野党の一味です。山賊とも言いますが、トンネルの前に役人がいるので、そこで引き渡します」
「分かった。その人どうなるの?」
「ちゃんと聞かれたことに答えれば、未遂ですので大した罪にはなりませんが、これまでどれだけ襲ってきたかにもよりますから、軽い刑ではないでしょう」
男の身なりは裾がボロボロになった紺色のズボンに、元々は白色であったであろうシャツ。なんの動物かはわからないが、動物の皮でできたベストのような羽織ものに素足。
その割に足の裏に傷がなく、靴が脱げただけなのかもしれないが、かなり汚れている。
「坊っちゃま、もうすぐ着きますのでそれまで少し辛抱してください」
「うん……」
「縄を解いたらダメですよ?」
「え?わ、分かった」
そうは言われても男が見てくるのでつい視線を合わせてしまい、慌てて目をそらすが、離れたところに座らせているとはいえ気にならない訳がない。
「檪、もう一人は?」
「逃げた」
「いいの?」
「すばしっこい奴だったし、こっちの方が色々と話しそうだったから連れてきた。この男、あまり良い気は出しておらん。近付くな」
「これ以上は近付かないけど、その人下っ端とか言うのじゃないの?何人も居たんならみんなもう逃げてるよきっと」
「そうかもしれませんが、この男の目は何やらまだ諦めてない目をしてますので、溜まり場がわかれば後はお役人様の仕事です」
影からは、紫狐を初めとしてみんなが顔を覗かせており、興味津々で見ているので、中に入っててよと紫狐にみんなを連れて行ってもらい、そのあとに紫狐だけが出てくる。
「ヒッ!」
紫狐の姿を見て小さな悲鳴を男がしたが、見たことがない訳では無いだろう。
「この方ー、狐がついてません!」
「お爺ちゃんが言ってたやつかな?」
「そうだと思いますー。でも、付いてない人は結構いますけど、匂いはしますー。誰か他の人についてる狐が常にこの人のそばにいたと思いますー」
「分かるの?」
「はいー。でもですね、匂いがするので、近くまで行けば指示してた人とか見つかると思いますよ?なので、お役人様にはそのことを伝えた方がいいと思いますー」
「捕まえられるかな?」
「専門の人が居たはずですよ?それにしても、この馬車を狙うなんて勇気ありますねー。紫狐なら絶対狙いませんよ?この馬車にいる狐の匂いがわからないわけないと思うんですけど……この方のご主人様はおバカさんだと思いますー」
「話し声が聞こえるよ?」
「俺には聞こえぬ」
「この馬車の屋根に乗れないとか、近付けないとか……違う荷馬車に変更するって言ってるけど……この馬車が怪しいから境界まで付いてくるって。二人!二人だけ付いてくるって言ってる!」
「外の声が聞こえるのか?」
「檪は聞こえない?」
「ハッキリとは。でも二人ならば、俺だけで十分だ」
そう言って荷馬車から降りて行ってしまったが、今度は御者台の方でガタッと音がして慌てて張っていく。
「馬車を止めてくれ」
「檪、この人誰?」
「坊っちゃま、脇に停めます。ロープがあるので貸してください」
手元にあったロープを渡すと、相手が逃げられないようにぐるぐる巻きにし、口には手ぬぐいを巻いて口を塞いでいる。
「ここまでしなくっても……」
「坊っちゃま、結界を解いてもらっていいです。この者は旅の馬車を専門に狙っている野党の一味です。山賊とも言いますが、トンネルの前に役人がいるので、そこで引き渡します」
「分かった。その人どうなるの?」
「ちゃんと聞かれたことに答えれば、未遂ですので大した罪にはなりませんが、これまでどれだけ襲ってきたかにもよりますから、軽い刑ではないでしょう」
男の身なりは裾がボロボロになった紺色のズボンに、元々は白色であったであろうシャツ。なんの動物かはわからないが、動物の皮でできたベストのような羽織ものに素足。
その割に足の裏に傷がなく、靴が脱げただけなのかもしれないが、かなり汚れている。
「坊っちゃま、もうすぐ着きますのでそれまで少し辛抱してください」
「うん……」
「縄を解いたらダメですよ?」
「え?わ、分かった」
そうは言われても男が見てくるのでつい視線を合わせてしまい、慌てて目をそらすが、離れたところに座らせているとはいえ気にならない訳がない。
「檪、もう一人は?」
「逃げた」
「いいの?」
「すばしっこい奴だったし、こっちの方が色々と話しそうだったから連れてきた。この男、あまり良い気は出しておらん。近付くな」
「これ以上は近付かないけど、その人下っ端とか言うのじゃないの?何人も居たんならみんなもう逃げてるよきっと」
「そうかもしれませんが、この男の目は何やらまだ諦めてない目をしてますので、溜まり場がわかれば後はお役人様の仕事です」
影からは、紫狐を初めとしてみんなが顔を覗かせており、興味津々で見ているので、中に入っててよと紫狐にみんなを連れて行ってもらい、そのあとに紫狐だけが出てくる。
「ヒッ!」
紫狐の姿を見て小さな悲鳴を男がしたが、見たことがない訳では無いだろう。
「この方ー、狐がついてません!」
「お爺ちゃんが言ってたやつかな?」
「そうだと思いますー。でも、付いてない人は結構いますけど、匂いはしますー。誰か他の人についてる狐が常にこの人のそばにいたと思いますー」
「分かるの?」
「はいー。でもですね、匂いがするので、近くまで行けば指示してた人とか見つかると思いますよ?なので、お役人様にはそのことを伝えた方がいいと思いますー」
「捕まえられるかな?」
「専門の人が居たはずですよ?それにしても、この馬車を狙うなんて勇気ありますねー。紫狐なら絶対狙いませんよ?この馬車にいる狐の匂いがわからないわけないと思うんですけど……この方のご主人様はおバカさんだと思いますー」
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