下宿屋 東風荘 7

浅井 ことは

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秋の国

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「今だ!」

相手が消えていなくなる前にと、前からみんなに持たせておいた『縛』の札を黒に使わせる。

それと同時に金と銀、白も戻ってきて同時に九堂の身体に札を貼り、四肢と頭に貼ることが出来たので、すぐに冬弥を呼ぶ。

その間に『影縛り』の札を影の上に付け、影にも戻れないようにし、冬弥と戻ってきた狐たちと一緒に九堂を囲む。

「貴様ぁぁぁ!」

「あ、こっちが聞いたこと話すのはいいんだけど、それ以外に話すと今巻きついてる札で体が締まるようになってるから気をつけてね?」

「坊っちゃま、蛇が消えました」

「雪翔、良くやりましたね」

「何故?なぜこんな術が使える?」

苦しそうにしながらも、聞いてくるので「僕が何も出来ないと思ってたおじさんのミスだよ。あの本読めなかったんでしょ?持ってるのも偽物で、おじさんが使えるのは式と影から影への移動。あの変な空間のことは分からないけど、前に壊した時に、僕となにか術が違うと思ったんだ」

「この解読書は……」

「うん、偽物。本物はもう解読が終わったから、違うところに封印してもらってる。だから紙だけなら誰でも持てるから、今日は冬弥さんに持ってもらってたんだ」

「残念でしたねぇ。昨晩夜中に起こされましてね、いきなり本や巻物なども封印してきてくれと言われて焦りましたが、天狐数人で行えば、気配も消し去ることが出来るんですよ。うちの可愛い雪翔の作戦勝ちです」

「こんな物でいつまでも私を縛っておけると──」

力づくで札を剥がそうとしたのだろうが、隅々まで読んで作った札。それも何重にも複雑に織り込んで書いたものだから外れることはないだろう。

それに気づいたのか、畳に腰を下ろした九堂が何を聞きたい?と聞いてきた。

「全部」

「それは無理ですね。話が長くなるので」

「冬弥さん、解読した紙貸して」

冬弥から受け取り、テーブルにあったマッチで紙に火をつけて燃やす。

「なんて事を……そんなことをすれば君だって……」

「僕はもう要らないもん。コレがあるから、おじさんは僕や家族とか友達に嫌なことするんでしょ?だったら無いほうがいいよ、こんなの……」

火をつけて燃やしながら、紙を囲炉裏の中に投げ捨て、冬弥が術で灰にしてしまった。

一旦旅を中断し、城の方の役人に突き出すというので、荷馬車ごと冬弥に社を経由してもらって、城の門に着く。

冬弥が手続きを終わらせ、「何度か雪翔も呼ばれると思うので、浮遊城に来てください」と言われ、ちょっと旅を続けたかったなと思いながらも冬弥の言う通りにする。

「雪翔!」

「航平ちゃん、大丈夫?どこもおかしな所はない?」

「何があったんだ?戻ってきたってことは何かあったんだろ?」

「う、うん」

あのね、と夜中に九堂が来たことなどを簡単に説明すると、部屋まで連れていかれて「寝ろ!」と布団に寝かされる。

「坊っちゃま、薬を……。お、航平坊ちゃんもおいででしたか」

「昼の薬だよね?朝の薬は飲んでないのか?」

「ご飯食べ損ねちゃって」

「あーもう、肝心なことを後回しにするんだから。重次さんもですよね?雪翔はそこに居て」

重次と航平が出ていってしばらくしてから、卵粥が持ってこられ、食べてから薬を飲んで寝ろと言われる。
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