下宿屋 東風荘 7

浅井 ことは

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温泉まで戻り、冷えるからと足湯をしていると、冬弥が「積もりますよ?雪翔が雪だるまになってしまいます」と微妙な冗談をいうので中に戻ると、何故かおでんでみんなが宴会並みに盛り上がっている。

「何してるの?」

「話したんです。勝手にと言われるかも知れませんが、この件が終わったら正式に雪翔も半分こちらの者になると」

「だからって宴会する?それにもうみんな帰ってきたの?」

「結構早かったみたいですよ?父上達は直接関係してませんでしたし、伯父達も野党を捕縛した経緯を聞かれるだけだと思います。雪翔はちょっと長くなるかもしれませんが、私も一緒ですし、蘭さんもいますから、そうかからないと思うんですけどねぇ。問題はあの男をどうするかということになりそうです」

心配はしなくていいと言われ、ぼーっとしていると、「もうすぐ夕餉ですから、先に食堂に行きましょうか」と冬弥に続いて広間から食堂へ移ると、宴会に参加してなかった祖母と航平が座って待っていた。

「バーバは?来てないの?」

「直接関係なかったので呼ばれてないんです。落ち着いたら行きます?南に」

「うん。心配かけたし……でも、フリフリの服は着ないからね!あ、でも冬に行ってないから行きたかったな」

「もう少し雪が溶けてからのがいいわよ?」

これから長く一緒にいられるんだからと祖母に言われ、夕飯を食べてから冬弥に見せたいものがあると言われて外に出る。

「ここってどの辺?」

「この浮遊城の端です。塀があるでしょう?そこから柵までは行っても落ちませんから」と壁に向かって二人で座る。

「月が良く見えるね」

「実はお気に入りの場所です」

と、徳利とお猪口を出して酒をつぎ、のんびりと「いい雪見酒になりますねぇ」と言っている。

「そうだ、見ててね?」と言って、キーホルダーを出して手のひらに小さな球状にできたものを見せ、「いい明かりになるよね?」と言いながら、今までの事、そしてこれからのことを二人で沢山話した。

「冬弥さん、今僕が航平ちゃんと同じようにしてって言ったら出来る?」

「出来ますが、多分みんな見たがりますよ?」

「だと思った。航平ちゃん見てたら、見た感じは変わらないなぁって思ったから、もう出来る時にしてもらった方がいいのかなって。それに、お城にいる天狐のまだ顔の知らない人たちが言ってた、『人であって人でないもの』って、僕が半分狐の力っていうのかな?そういうの持ったら、あの人たちの言ってた人物になるんだよね?」

「雪翔、何を考えてるんです?」

「お城に行ったらまた同じこと言われると思うんだ。前は怒って帰ってきたけど。今度はちゃんと断れると思ったの……」

「雪翔がどんな力を持っていても、人のままでも、私たちの子に変わりはないんですよ?そう急がなくてもと思ってましたが……」

今誰もいないからお願いと言って、半分冬弥の力を分けてもらうことにした。
これで、長く冬弥達と一緒にいられる。

それに、力を分けてもらうことで本当の親子になれるような気もする。


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