黄泉津役所

浅井 ことは

文字の大きさ
35 / 243
研修期間

.

しおりを挟む
帽子は麦わら帽子と聞いて思わず笑いそうになったが、帽子の周りの紐の色は青色で、ゴムがついているから飛ばされたとかはないはずだという。

「確か、建物にはいる時にはあって……」

「困り事かい?」

「大宜都さん、帽子をなくしたみたいで。建物まわりとか探しに行ってもいいですか?」

どよーんと悲しみにくれた河童君。

泣くのを我慢してるのか、小さな黄色いお口をギュッとしていて可愛い……いや、可哀想。

「そうだねぇ。手は繋いでてあげることと、河童君、お名前は?」

「僕、二郎です」

「二郎君もこのお兄ちゃんから離れないって約束できるかい?」

「できます」

「八上さんには話しておくから外まで見てきてあげていいよ。でも、敷地内までだからね?」

「人間の役所の敷地内までなら行動可能って事ですか?」

「そう。道路に出たらこの子が普通の人に見つかっちまうからねぇ」

「わかりました。連絡お願いします。あ、お母さんが迎えに来られたら、待つように伝えて貰えますか?」

「はいよ。二郎君も走ったりしたらダメだよ」

「はい!」

またおて手を繋いでまず案内所へ。

八上さんが居ないということはコーヒーでも飲みに行ったのか……

「ここに来た時、手紙を受け取った時には帽子は被ってなかったんだ。どっちの入口から来た?」

「こっち!」

「走ったらダメだって。ゆっくり行こう」

「ごめんなさい。僕、お使い初めてだから全部珍しくて」

「じゃあ、地図かなにか持ってきたの?」

「えっと、近くに川がありますよね?」

「うん」

まさかのまさか、泳いできたとか言わないよな?

「おうちから泳いできて、そこからここまで歩いてきて」

ほんとに泳いできたのか!!!

「でも服は?」

頭に括って泳いでここまで来て、その時に川で着替えて帽子をかぶって役所まで来た。

河童と言えば川ったイメージは強いが、帽子は被ったんだな……

「着替えた時に帽子は被った?」

「もちろんです。人に見られたら連れていかれるって聞いたから、しっかり隠して、それで地図にせいもん、て書いてあったからこの入口から入りました」

「ここ、西門……」

「えっ?」

「初めてきたんだから仕方ないよ。この時にはどうだったか覚えてる?」

「んー、僕、お手紙と案内のところって思いながら入って……」

覚えてないんだな?

という事は、もしかしたら二郎君は建物にはいる時は帽子を取ると教えられてたのではないだろうか?

人の家に入る時には帽子を脱げ的に。

「二郎君、お友達のお家とか、どこかのお店に行く時には帽子を取るように言われてる?」

「はい。でもゴム紐ついてるから、後ろにいつも帽子があるはずで……」

「ゴムが切れたのかな?」

「新しくつけてもらったから、取れたりしないはず……くすん」

「ほら、男の子は泣かない!入口周りみてみようか」

「う、うん」

とはいえまだ小さい河童君的には、お使いなども初めてで、さらには大切な帽子の無くし物。

泣いちゃっても仕方ないよなぁ。

入口を出たところで、来た方向を聞き周辺を探すと、青色の何か。

「うわ、飛ばされたのかな?」

「あんな上の方に……この棒みたいなのを外したらとれますか?」と配管にしがみついて引っ張り出すので、子供にも俺にも無理だ!と引き離し、「この高さなら俺がとってこれるから」とちょっと座る。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

7番目のシャルル、狂った王国にうまれて【少年期編完結】

しんの(C.Clarté)
歴史・時代
15世紀、狂王と淫妃の間に生まれた10番目の子が王位を継ぐとは誰も予想しなかった。兄王子の連続死で、不遇な王子は14歳で王太子となり、没落する王国を背負って死と血にまみれた運命をたどる。「恩人ジャンヌ・ダルクを見捨てた暗愚」と貶される一方で、「建国以来、戦乱の絶えなかった王国にはじめて平和と正義と秩序をもたらした名君」と評価されるフランス王シャルル七世の少年時代の物語。 歴史に残された記述と、筆者が受け継いだ記憶をもとに脚色したフィクションです。 【カクヨムコン7中間選考通過】【アルファポリス第7回歴史・時代小説大賞、読者投票4位】【講談社レジェンド賞最終選考作】 ※表紙絵は離雨RIU(@re_hirame)様からいただいたファンアートを使わせていただいてます。 ※重複投稿しています。 カクヨム:https://kakuyomu.jp/works/16816927859447599614 小説家になろう:https://ncode.syosetu.com/n9199ey/

月弥総合病院

僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

アブナイお殿様-月野家江戸屋敷騒動顛末-(R15版)

三矢由巳
歴史・時代
時は江戸、老中水野忠邦が失脚した頃のこと。 佳穂(かほ)は江戸の望月藩月野家上屋敷の奥方様に仕える中臈。 幼い頃に会った千代という少女に憧れ、奥での一生奉公を望んでいた。 ところが、若殿様が急死し事態は一変、分家から養子に入った慶温(よしはる)こと又四郎に侍ることに。 又四郎はずっと前にも会ったことがあると言うが、佳穂には心当たりがない。 海外の事情や英吉利語を教える又四郎に翻弄されるも、惹かれていく佳穂。 一方、二人の周辺では次々に不可解な事件が起きる。 事件の真相を追うのは又四郎や屋敷の人々、そしてスタンダードプードルのシロ。 果たして、佳穂は又四郎と結ばれるのか。 シロの鼻が真実を追い詰める! 別サイトで発表した作品のR15版です。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった

海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。 ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。 そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。 主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。 ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。 それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。 ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。

処理中です...