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何かの異変2
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明らかにこの声はグレイシーのものである。
『まあ、あんたにとっちゃつらい現実かもしれないけど、お父さんと会えてよかったねぇ』
アロンは眉を寄せてグレイシーに応えないようにした。もっとも、ラスターが前にいる状況でうかつに口を開けない。
その間にもグレイシーはどんどん独り言をしゃべっていく。
『知ってるかい?きみの母親を助けなかったのはライネスなんだよ?憎くないのかい?』
「………」
『それともきみも他の人間と同じようにアンドロイドに骨抜きにされた?』
「………」
『あと市長のエルヴィスとあのエルドもきみの母親を見捨てていたんだよ?正確に言えば彼らはあまりきみの母親に興味がなかった。だから、きみの母があたしから逃げた際、ライネス以外誰もその所在を探らなかった。酷いと思わない?仮にも一緒に過ごして笑い合った仲なのに。本当、アンドロイドって心がない機械だよ』
ラスターの案内で部屋に戻ったアロンはドアが閉まったのを確認するや否や重苦しい声を出した。
「お前の言葉にはもう乗らない」
『ん?』
「俺をいつも狙う意味がわからないが、もうお前の言葉には惑わされない」
『へぇ、そりゃいいね。じゃあ、ライネスがどうなってもいいのかい?』
「……っ!お前何かしたのか!」
『あたしはアンドロイドが嫌いだと言ったでしょう?あんたはあんたの母親そっくりだ。いくら忠告しても聞く耳すら持たない。あの機械どもの何がいいんだか』
「確かにライネス達は……たまに変なことするけど、でも……」
『でも本気で自分を愛してくれる、もしくは人間のように感情を持てる、とかかな?アンドロイドから抜け出せない人間がよく言う言葉だよ。哀れだねぇ』
「お前はあいつらとちゃんと接してないからわからない!」
『そうかねぇ。あたしから見たアンドロイドなんてみんな同じだよ。ま、今日はあいさつをしにきたと思ってよ。じゃあね~』
「あ、おい!待て!グレイシー!」
しかしアロンがいくら呼べともうグレイシーからの返答はなかった。
どうする?ライネスに危険が及ぶんじゃないか?クラックのことも聞けばよかった!
アロンはドアを開けて廊下に出た。だがもう廊下にラスターの姿はいない。
アロンは廊下を走りながら「誰かいないのか!」と叫んだ。
ちょうど角を曲がったところで向かってきた誰かと体当たりになりそうだったが、相手の反射神経がよく、ぶつかる前にアロンの両肩に手をそえてそれ以上の進行を阻止した。
「きみは……」
顔を上げるとどこか見たことのある顔がそこにあった。
だがこればかりはこの軍部で出会う数々の軍用アンドロイドに通じる。
「だ、誰だ?」
軍用アンドロイドはみんな同じ表情をしているせいか、なかなか見分けがつかない。
「私だ。一緒に食堂へ行ったはずだ。ダロスと呼んでくれ」
「お前か!ちょうどいい!今ライネスがどこにいるのかわかるか!!」
「ライネスなら仕事で外へ出かけている」
「今連絡つけそうか?」
「できると思うが、あちら側に余裕があるのかどうかはわからない。緊急の用事でなければライネスが帰ってきてから伝えるといい」
「緊急なんだよ!今すぐライネスと話したい!」
ダロスは少し沈黙したあと、耳もとに手を持っていきどこかへ連絡し始めた。
「……私だ。ライネスは今何をしている」
アロンが緊張の面持ちで待っていると通話していたダロスの顔色が少し悪くなった。
「そうか。了解した」
ダロスは通話を終了するとアロンに向き直った。
「ライネスは今少し手が離せない状態だ。帰ってきたら私が代わりに伝えよう」
「いや、いい……」
一言や二言で伝えられるようなことではない。
「あのさ、ライネスは今危険な状態か?」
「ああ」
「……っ!?じゃ、じゃあ生きて帰ってこれるよな?」
「問題ない」
アロンがわずかにホッとした時である。
「軍用アンドロイドはメモリーカードの全てのデータは保管されている。例えメモリーカード本体が破壊されてももう一度同じ人格を保った機体を作ることができる」
「それってメモリーカードを破壊されるほどの危険があるってことじゃないかよ!」
「そうだ」
あまりにも淡々と言われ、アロンは叫ぶに叫べられない状態におちいった。
「ライネスは今いったいどんな仕事をしているんだ?」
「暴走したアンドロイドの対応だ」
「暴走?」
「近頃アンドロイドの不調が続き、暴走するケースが増えてきたため軍部でも対応に追われている。ライネスは今その対応中だ」
「不調……暴走……」
「安心していい。ライネスに何かあったとしてもその存在自体は消えない」
価値観の違いをもう一度目の前に叩きつけられた気がして、アロンは言葉を失った。
だが考えてみれば自分は何かしようとしたとこりで何も助けにならないだろう。むしろ手足まといになるのかもしれない。
それなら大人しく帰りを待った方がいい。
「それならライネスに連絡がついたならこう伝えてくれないか?」
「言ってみろ」
「グレイシーに気をつけてほしい。何かする気なのかもしれない」
アロンの口からその名前が出てきたことに驚いたのか、ダロスはわずかに眉をしかめたあと、「わかった」と了承した。
『まあ、あんたにとっちゃつらい現実かもしれないけど、お父さんと会えてよかったねぇ』
アロンは眉を寄せてグレイシーに応えないようにした。もっとも、ラスターが前にいる状況でうかつに口を開けない。
その間にもグレイシーはどんどん独り言をしゃべっていく。
『知ってるかい?きみの母親を助けなかったのはライネスなんだよ?憎くないのかい?』
「………」
『それともきみも他の人間と同じようにアンドロイドに骨抜きにされた?』
「………」
『あと市長のエルヴィスとあのエルドもきみの母親を見捨てていたんだよ?正確に言えば彼らはあまりきみの母親に興味がなかった。だから、きみの母があたしから逃げた際、ライネス以外誰もその所在を探らなかった。酷いと思わない?仮にも一緒に過ごして笑い合った仲なのに。本当、アンドロイドって心がない機械だよ』
ラスターの案内で部屋に戻ったアロンはドアが閉まったのを確認するや否や重苦しい声を出した。
「お前の言葉にはもう乗らない」
『ん?』
「俺をいつも狙う意味がわからないが、もうお前の言葉には惑わされない」
『へぇ、そりゃいいね。じゃあ、ライネスがどうなってもいいのかい?』
「……っ!お前何かしたのか!」
『あたしはアンドロイドが嫌いだと言ったでしょう?あんたはあんたの母親そっくりだ。いくら忠告しても聞く耳すら持たない。あの機械どもの何がいいんだか』
「確かにライネス達は……たまに変なことするけど、でも……」
『でも本気で自分を愛してくれる、もしくは人間のように感情を持てる、とかかな?アンドロイドから抜け出せない人間がよく言う言葉だよ。哀れだねぇ』
「お前はあいつらとちゃんと接してないからわからない!」
『そうかねぇ。あたしから見たアンドロイドなんてみんな同じだよ。ま、今日はあいさつをしにきたと思ってよ。じゃあね~』
「あ、おい!待て!グレイシー!」
しかしアロンがいくら呼べともうグレイシーからの返答はなかった。
どうする?ライネスに危険が及ぶんじゃないか?クラックのことも聞けばよかった!
アロンはドアを開けて廊下に出た。だがもう廊下にラスターの姿はいない。
アロンは廊下を走りながら「誰かいないのか!」と叫んだ。
ちょうど角を曲がったところで向かってきた誰かと体当たりになりそうだったが、相手の反射神経がよく、ぶつかる前にアロンの両肩に手をそえてそれ以上の進行を阻止した。
「きみは……」
顔を上げるとどこか見たことのある顔がそこにあった。
だがこればかりはこの軍部で出会う数々の軍用アンドロイドに通じる。
「だ、誰だ?」
軍用アンドロイドはみんな同じ表情をしているせいか、なかなか見分けがつかない。
「私だ。一緒に食堂へ行ったはずだ。ダロスと呼んでくれ」
「お前か!ちょうどいい!今ライネスがどこにいるのかわかるか!!」
「ライネスなら仕事で外へ出かけている」
「今連絡つけそうか?」
「できると思うが、あちら側に余裕があるのかどうかはわからない。緊急の用事でなければライネスが帰ってきてから伝えるといい」
「緊急なんだよ!今すぐライネスと話したい!」
ダロスは少し沈黙したあと、耳もとに手を持っていきどこかへ連絡し始めた。
「……私だ。ライネスは今何をしている」
アロンが緊張の面持ちで待っていると通話していたダロスの顔色が少し悪くなった。
「そうか。了解した」
ダロスは通話を終了するとアロンに向き直った。
「ライネスは今少し手が離せない状態だ。帰ってきたら私が代わりに伝えよう」
「いや、いい……」
一言や二言で伝えられるようなことではない。
「あのさ、ライネスは今危険な状態か?」
「ああ」
「……っ!?じゃ、じゃあ生きて帰ってこれるよな?」
「問題ない」
アロンがわずかにホッとした時である。
「軍用アンドロイドはメモリーカードの全てのデータは保管されている。例えメモリーカード本体が破壊されてももう一度同じ人格を保った機体を作ることができる」
「それってメモリーカードを破壊されるほどの危険があるってことじゃないかよ!」
「そうだ」
あまりにも淡々と言われ、アロンは叫ぶに叫べられない状態におちいった。
「ライネスは今いったいどんな仕事をしているんだ?」
「暴走したアンドロイドの対応だ」
「暴走?」
「近頃アンドロイドの不調が続き、暴走するケースが増えてきたため軍部でも対応に追われている。ライネスは今その対応中だ」
「不調……暴走……」
「安心していい。ライネスに何かあったとしてもその存在自体は消えない」
価値観の違いをもう一度目の前に叩きつけられた気がして、アロンは言葉を失った。
だが考えてみれば自分は何かしようとしたとこりで何も助けにならないだろう。むしろ手足まといになるのかもしれない。
それなら大人しく帰りを待った方がいい。
「それならライネスに連絡がついたならこう伝えてくれないか?」
「言ってみろ」
「グレイシーに気をつけてほしい。何かする気なのかもしれない」
アロンの口からその名前が出てきたことに驚いたのか、ダロスはわずかに眉をしかめたあと、「わかった」と了承した。
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