転生と未来の悪役

那原涼

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第ニ章

スーパーエリート

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ダッと立ち上がってカナトはドアを開けた。

イグナスがアレストのえり首をつかんで壁に押し付けていた。

その光景に思わず叫びそうになる。カナトは恐れ知らずにも2人のあいだに体をねじねじとねじ込んでイグナスを押し返す。

壁に押し付けられたアレストを振り返ってあわあわとした。

「大丈夫か!」

えり首を整えながらアレストが笑う。

「大丈夫だよ」

「何があったんだ?」

「なんでもない。ただ小さい誤解を招いたみたいだ」

その青い瞳がスッとカナトの後ろを見る。

「そうですよね。辺境伯?」

「……ああ、その通りだ」

カナトは2人を見比べて、本気でそんなことを信じるわけではないが、今は問い詰める場面ではない。

「イグ、ナス?」

ユシルの柔らかい声が響いた。その柔らかさの中にいくばくぎこちなさが聞き取れた。

イグナスがハッと振り返る。ユシルならぬカツラギが戸惑いげにドアそばへ来て、3人を見回すと気弱そうに言った。

「今は少し休みたい。いいかな?」

「かまわん。疲れただろ」

いいチャンスだとカナトも声を張り上げる。

「じゃあ俺たちは帰るな!カツ、じゃなくて、ユシルちゃんとご飯食べんだぞ?体を大事にな!いいな!」

「わかったわかった。早く行け…違う、早く行って」

「じゃあな!ユシル!辺境伯!」

カナトはアレストの手を引くとバタバタ外に向かった。

アレストの寿命縮むかと思ったぁ!!なんでこの2人あんな険悪な雰囲気になっていたんだ!?

外では帰り用の馬車が待っていた。その前にいた人物が振り返った。御者はどうやらクモらしい。

クモの顔が見えた瞬間カナトは足に急ブレーキをかけた。

なぜこいつが!

「お待ちしておりました。どうぞ、馬車をお使いください」

今さっきで想像できるのは監視である。

絶対監視だ!馬車の中で余計なことを言わないようにしないとな。

馬車の中で屋敷に到着するまで、カナトは石像のように静かに座っていた。

送りの馬車が遠ざかっていくのを見届けるとほっと息をつく。

「やっといなくなった。なあ、お前なんで辺境伯と喧嘩してたんだ?なんの誤解があってああなるんだよ」

「ちょっとだけ言い方が悪かったかもしれない」

屋敷の中に戻りながらアレストは仕方なさそうに言った。

「言い方?」

「そう。きみがあまりにも長居するから強行連行しようと思って、それを伝えたら壁に押し付けられた」

言うほど長居してないだろ!そんなに短気だったか?こいつ。

「ともかく、もう辺境伯と衝突起こすな!」

「……僕の心配?それとも……」

カナトは思わず、しまった、と思った。慌てて手を振りながらなんとか誤解を解こうとする。

「ほら!色々と噂のある人だろ?な!」

「そうだな。気をつけないと」

やけに寒気がするな。

外出が急だったため、カナトはマントを羽織っていないせいにした。

そして数日後、なぜかイグナスとカツラギが屋敷を訪れた。











「なんで来たんだ……」

門前で出迎えたカナトは微妙に距離のある2人を見た。

「カナト、少しだけ2人きりで話さないか?」

カツラギが必死にアイコンタクトを送っている。

イグナスの機嫌を気にしてのぞき見すると、あちらはただそっぽを向いているだけだった。

阻害なく2人が門前から離れて建物の角に来た。

「無理だ!!」

来るなりカツラギがカナトの腕をつかむ。

「何言ってんだ?」

「あのイグナスという人、勘が鋭すぎる!!すでに中身が違うことに気づき始めている!」

「任せろとか言った時の気概どこにいった!」

「何より距離が近くて耐えられない!手を握ってこようとしたり、抱き寄せようとしたり、果てには一緒に寝ようとするんだ!!俺は男が好きじゃないんだよ!」

カナトはうなずきそうになったが、しかし、うん?と首を傾げる。それらの行為が自分とアレストとの接し方とあんまり変わらない気がした。

「俺も恋愛対象女だけど、別にそれくらい普通じゃないか?」

カツラギが恐ろしい表情で一歩後ずさった。

「お前……BLの世界で毒され過ぎてないか?恋愛対象でもない相手とそこまで親密に接することができるか!しかも男相手!全部断ったらマシになったけど、耐えられない!」

「というか、そうやって断るから怪しまれてるんじゃないか?手を握るとか、抱き寄せるとか普通だろ。俺だってアレストとよくするし、いやよくされる側だけど、寝ることだってあるぞ。なんともなかった」

「……お前本当にストレートか?恋愛対象女で間違いないんだよな?」

「当たり前だろ!」

真剣な様子のカナトにカツラギも渋々納得した。

「まあ、距離感なんて人それぞれだしな……とにかく、お前たちのところで住まわせてくれ。前まで一緒に住んでいることは聞いた。とりあえずお前と一緒にいると容態が落ち着くことにした」

「テメェ、何余計なこと言ってんだ……」

アレストが今どんな状態か知らねぇだろ!俺がちょっとでもユシルの名前を出すと笑顔が恐ろしいものになるんだぞ!!

最近アレストはますますカナトの言動に注意を払っていた。ことユシルに関しての言動にその反応は顕著だった。

だから最近心配しているという様子も見せられない。それが今こんな事態である。

「頼むから今から撤回しても遅くない!そもそも帰る方法を調べるんだろ?イグナスの屋敷にはユシルの魔法書や道具があるはずだ!ユシルの正体について教えただろ?」

「それについてなら問題ない。俺は誰だ?現代のスーパーエリートだぞ?」

カツラギはフッと笑って前髪をかき上げる。

「ユシルの体でそんな自惚うぬぼれたポーズするなよ……」

「まあ、とっくにおおかたの方法は知った。だから逃げ、じゃなくて来た!!」

「はあ……え?マジなのか!本当にわかったのか!」

「まあな。ただ、方法に関しての書籍が見当たらない。この屋敷にもユシルの荷物あるから探してみないといけない。だから頼んだ。現代人の友!」

クソッ!!もうどうでもいい!ユシルの体を取り戻して一刻もこの鬱陶しいやつを送り返すのが先だ!アレストは……んん、まあなんとかするしかない!!





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