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第ニ章
所有権
しおりを挟む誤字箇所は見つけたら直していたのですが、見過ごしや誤用箇所も多いみたいで悩みです。
( ・ᴗ・̥̥̥ )
わざわざ教えていただくこともあって本当に感謝です!!
これから気を引き締めていかねばと思っております!
◇—————————————————————
アレストをなんとかするしかない!!そう思うもーー
ダンッ!!と力強い手がカナトを壁ドンした。猫たちはとっくにベッドの下へ避難し、檻の中のオウムに関してはもう背中を向けていた。
カナトは目の前で笑うアレストが怖くて直視できなかった。
冷や汗を流しながらひたすら体を直線にする。
「だから嬉々とユシルを部屋に連れていったと?」
「は、はい……記憶が混乱しているから、自分の部屋もわ、わからないと思って……」
「カナト、僕は言わなかったか?あまり……」
「わかっている!わかっている!でもしょうがなくないか!?辺境伯の意向もユシルをここへ帰らせることにあるし!」
アレストは目線を横へ流し、辺境伯、とつぶやきながらその目に鋭い光を横切らせた。
イグナスと衝突する考えなんじゃないかと思ったカナトはますます焦る。
「その、ユシルは今色々と覚えてないから、たぶんあんまり近づいて来ないんじゃないかなぁ……」
何よりカナト自身がカツラギに近づかないよう忠告していた。
どうにもカツラギがこの小説のことを知らないように思えた。
「そうか」
そう言ってアレストは離れた。
その時、外から呼びかける声が聞こえた。
「おーい!いるか!メイドからお前がアレスト?という人の部屋にいるって教えられた!話があるから出て来い!」
あんのバカヤローォオオォ"ッ!!!なんつータイミングで来やがるんだ!!
「カナト」
「はい!!」
カナトがバッと両腕で頭をかばった。
「行っておいで」
「はい………え?」
予想していたような答えじゃないことに思わず本人を見る。アレストは明るい笑みでドアを指差す。
「ユシルだろ。記憶が混乱しているなら仕方ない。きみといるほうが容態がよくなるんだっけ?」
「えーと、それは……」
「それなら行っておいで」
「本当に、いいのか?」
「ああ」
「じゃ、じゃあ行くぞ、本当に」
「うん、もちろん!」
カナトは不思議に思いながらもそろりそろりとドアに移動して、パッと開けてパッと閉めた。
急にどうしたんだあいつ?
「おい、カナト」
肩に置かれた手でカナトは元凶を思い出した。振り返ってカツラギの腕をつかむと自分の部屋へ連行する。
「お前狙ってるだろ!」
「何を?それより聞くといい。見つかった!」
「あ?」
「現代へ帰る方法!」
「嘘だろ!?いやっ、早くないか?」
「俺の勤勉さをナメるな。ユシルの部屋には今のところ魔法関係の書籍は3冊しか見つかってないけど、うちの一冊が『異世界への門』というタイトルがある。ただ、準備するにはほんの時間が必要みたいで、んー……」
「なんだ?」
「もしかしたら、1年近くかかるかもしれない」
「1年近く!?なんの準備が必要でそんな……」
「とある木の樹液が必要で、その樹液は秋にしか取れないらしい。生えている場所も探さないといけないし、見た目もわからないからなぁ」
カツラギは頭痛するように額を押さえた。
「まあ、それまでサポートのこともよろしく」
「簡単に言いやがって……秋って、今冬だぞ」
カツラギは仕方ないように肩をすくめて頭を揺らした。そこでふと何かを思い出したように、あっ、と声に出す。
「ずっと気になっていたけど、あんたいくつなんだ?」
「俺?こっちでなら成人年齢の17歳。生前の年齢なら23歳だ」
「そうなのか?」
カツラギが少し驚いた顔をした。
「俺は現代だと25だが、お前を見ているともっと小さいのかと思っていた」
「……テメェ、何が言いたい」
「なんでもない。エリートの俺と比べれば周りはいつも実年齢より幼く見えていたが、お前の場合14そこらの思春期の中学生にしか見えなかった」
「殴られてぇか?」
「まあ何を言いたいのかといえば、もう少し成長したらどうだ?」
「説教か?あぁ?言っておくけど、この世界で暮らした年数なら俺のほうが多いんだよ。俺が先輩だ!」
「……それ以外に見せびらかすものがないんだな」
「その生温かい目やめろ!もう用がないなら出ていけよ!」
「あっ!おい!サポートのこと忘れるな!」
ドアの外に押し出して、
「わかっている!俺だって早くユシルに帰ってきて欲しいんだよ!クソッ!」
バンッとドアが思い切り閉められた。
追い出されたカツラギはない眼鏡をぐいっと上げて頭を揺らす。
「やっぱり精神年齢幼いな。あれで本当にサポートできるのか?」
何しろ今のところこの世界で1年近く暮らさないといけない。
心許なく、自室でもう少し書籍を読み込もうと向かおうとした時、突然目の前に立ちはだかんだ人物に驚いた。
見上げると、背が高く、短く濃い金髪に白い貴族服を着た明るい青年である。青く澄んだ瞳は見る者を引き込んでしまいそうなほど綺麗だった。
すぐに誰なのか思い出した。前にカナトと一緒にいた人物である。
しかし、その目と合った瞬間、カツラギは本能的に固まってしまった。
この感覚………。
家柄も良く、頭も良かったカツラギは長年嫉妬の眼差しに晒されてきた。そのため他人の視線に一倍と敏感だった。
勘でなんとなく目は善意的なものじゃないとわかった。
この人だ。カナトが言っていたのはこの人だ。
この屋敷で近づかないほうがいい人物の中で特別注意されたのがアレストという人物だった。カツラギはちらっと隣のドアを見る。もちろんカナトが出てくる様子はない。
背丈が縮んだことで視線の高さに未だ慣れず、カツラギは目の前の青年を見上げた。
「あの、何か?」
「僕のことを忘れたのか?」
「すみません……記憶が混乱してて」
もちろん提供された情報の中で血縁のない兄だということはわかる。
「そうか。じゃあこれからが大変だな。何かあれば僕に聞くといい」
明るい笑顔にカツラギは自分の勘が間違ったのかと疑いそうになる。
「それと」
アレストの手がカツラギの肩に置かれた。目をのぞき込むように見られ、思わず固唾を飲み込む。
「カナトは僕の専属使用人だ。用がある際は僕にひと言知らせてくれ。そばにいないとよく困るからな」
「わ、わかりました」
「うん。それじゃ、また夕食で」
そう言ってアレストは廊下に消えた。
しばらくしてからやっとカツラギは動けるようになった。なんとなくカナトから近づかないほうがいいと言われた理由がわかった。
あの人は危険だな……さっきのあれは所有権を自分に示すために言ってきたはずだ。
「あの背丈、190cm超えてないか?」
カツラギはアレストが去った方向を見て、これからこの名目上の兄を避けたほうがいいと判断した。
そして夕食は体調が悪いことを理由に参加しなかった。
50
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