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第五章
バッドエンドの未来1
しおりを挟む長い時間のあと、カナトは尽き果てた。
見つからねぇ。
いくら探そうとしても自分が死ぬかアレストが死ぬかのどちらかである。しかも自分が死ぬ際はその多くがアレストが関わっている。そしてアレストが死ぬ場合は必然というべきかイグナスだった。
自分が死なないタイプの未来は何かしら酷い目に遭っているし、なんだかどの未来でもアレストの悪役キャラが定着している。
もはや悪役というポジションから離れさせることはできないようである。
それもそうだよな……魔女狩りとかしようとするし、他の悪役と雑魚キャラ集めるし。
本当に止められるのかどうか自信がなくなってきた。とはいえ、ここであきらめるわけにはいかない。
クモの言った通り、ここで一番理想的な未来を見つけて現実を動かさないといけない。
使命感に駆られてカナトは次々と球体を見た。しかしどれも欲しくない未来である。
その中でひとつだけ、自分が窓の前に座って遠くを見ている未来があった。
「おっ!これさ良さそうじゃないか?」
どんな未来なのか、これは体験したほうがいいと、カナトは自ら吸い込まれに行った。
パチパチと目をしばたたかせた。
窓の向こうの風景は穏やかなもので、ヴォルテローノ家の屋敷の庭に見える。
周りを見渡すとそこはアレストの部屋ではない。
「どこだここ」
座っている椅子から降りようとしたその時、ふと違和感を覚えた。脚の感覚がない。
見ると、両脚にブランケットをかけられているがーー
まさか!
バッとブランケットを取り払うとハーフパンツのすそが垂れているのがみえるも、脚だと思われる部分はひざより下がなくなっている。
ない……脚がない!!?ナゼッ!!
「嘘だろ!!」
思わず大きな声を出してしまった。それにつられて外にいた誰かがドアを開けた。
「カナト!どうかしたのか!」
振り返って見ると入ってきたのはシドだった。
「シ、シド……俺」
「カナト…なのか?」
シドはどこか訝しげに眉をひそめた。
「俺の脚、ないんだけど……」
「それは前からだろ」
「前から!?なんでこんなことに……」
「覚えてないのか?」
「まったく!」
「今日は、いつもより機嫌良さそうだな」
「どこが!?」
シドはまぶしげに目を細めた。
「いつもより表情も明るい。薬の副作用か?」
「薬?なんの話だよ」
「……本当に何も覚えてないのか?」
「覚えてないって言ってるだろ!なあ、脚なんでないんだよ!マシな未来だと思ったらこれかよ!俺とアレストにハッピーエンドないのかよチクショウ!!」
「落ち着け。とりあえずアレストを呼んでくる」
「ま、待って!」
立ち上がったシドが不思議そうにするが、すぐに眉をひそめた。
「やっぱりアレストには会いたくないのか?」
「やっぱり?じゃなくて、その、確認しておきたいことがあるんだけど」
「なんだ」
「アレストって、俺のこと殺そうとかしてないよな?」
慎重深い目にシドはうなずき返した。
「してない」
カナトはほっとしたように息を吐き出した。シドはその反応に疑惑的な目を向けるが、すぐに部屋を出ていった。
ほどなくするとアレストが部屋に入ってくる。
窓辺に座っているカナトを見つけると、外にいるシドに目で合図をし、そっとドアを閉めた。驚かせないよう慎重に歩みを進めていくと、カナトが不思議そうに首を傾げた。
「なんでそんなにゆっくりなんだ?」
「きみが…いやがると思って」
「俺が?なんで?」
「……本当に何も覚えていないのか?」
そう聞かれて、覚えていないと言えばなんだか悪い気がして、カナトは頭の後ろをかいた。
「ごめん……覚えてなくて……その、教えてくれないかな?なんてハハハ!」
「何が知りたい?」
アレストは試すように手を伸ばした。顔に近づいてくる手のひらを見つめて、カナトは恥ずかしそうにしながらも頬をくっつけた。
するとアレストがぴたっと固まったように目を見開いた。
今の行動いけなかったのかと、カナトがパッと離れる。
「ご、ごめん」
「いや、きみが謝る必要なんてない。きみを…抱きしめてもいいか?」
「もちろん!」
カナトは温かい抱擁に包まれると気持ち良さげに顔をこすりつけた。
「なあ、アレスト」
「なんだ?」
「何を聞いてもいいんだよな?」
「……ああ」
「じゃあさ、俺の脚って、なんで……」
「今はまだ知らないほうがいい」
「なんでも聞いていいじゃないのかよ!?」
「今はまだ教えたくない。もう少しだけ待っていてほしい」
いや、それだと俺帰ってしまうかもしれないし……。
いつもどちらかが死ぬか、絶望したタイミングで球体から出てしまう。
「カナト、お願い。もう少し待ってもらえないか?」
「わ、わかった……お前が、そう言うなら」
「ありがとう」
しかし、その後、カナトが心配するようなことは起きなかった。
帰ることもなければ、脚がなくて困ることもほぼない。
基本シドやムソク、アレストが周りで手伝ってくれるせいでかなり快適に過ごしている。たまに脚がないことを忘れそうになるほどであった。
しかし、待てとなぜ脚がないのかを教えてもらうことはなかった。誰に聞いても教えてくれない。
まさか事故で……そんないやな憶測が浮かんでくる。
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