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第五章
裏切れ
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カナトはとにかく早く開けろと言わんばかりにくちばしで窓をたたいた。チラチラと馬車のあるほうを気にしながら。
イグナスが窓を開けるとカナトは部屋の中に滑り込んで早口にまくしあげた。
「いいか!アレストが戻るまで早く言わないといけないから言うけど」
だがそこまで言ってほんの迷う表情をした。
「お前にアレストの協力者を言えば、止められる勝算はあるか?」
「……対策は練れる」
「じゃあ、教える代わりにアレストを絶対に殺さないと約束できるか?」
「状況による」
カナトはまるで苦渋の決断をきめるようにぎゅっと目を閉じた。そして泣きそうな目を開けると、
「フェンデルとデオンだ。あとーーいや、今言えるのはこれだけだ!もう戻らないと」
カナトは窓から飛び出していく直前にこう言った。
「俺は別にお前たちの敵じゃない。あんたやユシルのことを好き嫌いで言うなら好きなんだよ。でもそれ以上にアレストが破滅しかない道を歩んでほしくない。だから言った。アレストはもう戻れないところまで来ている。ユシルは俺ならアレストを止められるって言うけど、やっぱり俺だけじゃ止められない」
その姿が壁に隠れて見えなくなるとイグナスは軽く咳き込んだ。
臓器の痛みを感じ取りながら、蓄えていた兵力さえ動員させる気でいた。だが、まだそこまで来ていない。魔女狩りによる不安で暴動が起きていない。
外部のから侵入に備えて準備した兵力はこんなところで使うべきではないと、イグナスの理性的な部分が言っている。それに、これは一度失敗すれば糾弾される格好のエサである。
カナトがアレストのもとに戻った頃、すでに本人は馬車の前でシドと話していた。
しまった!やっぱり遅かったか!
アレストの肩目指して一直線に飛び移り、「アレスト~」とおしかりを避けるべく甘えた声を出した。
「カナト?どこに行ってたんだ?」
「え?あー、いや、その……」
「ちゃんと待つって言うから連れてきたのに」
「ご、ごめん……」
「シドもなぜカナトを行かせたんだ?」
シドはその質問に一切の動揺も見せずに答えた。
「飛べる生き物と人間じゃ、止めたくても止められないだろ」
「じゃあきみを連れてきた意味はあるかな?」
「俺をどこにでもつけていく世話役にしたのはお前だろ」
「知っているなら最低限の仕事はしてもらわないと困るよ」
「ふん」
思ったが、シドって一応主人のアレストには敬語使わないどころか、めちゃくちゃ失礼だよな。俺だけじゃないのか。というか今は俺のせいでシドが怒られているな。フォローしねぇと。
不思議なことに、馬車で待機していたあいだ、自分が離れたい意志を伝えるとシドは簡単に見逃してくれた。
「アレスト、あんまり怒るなよ。俺が離れたいって言ったわけだし?今は帰ってきただろ?」
「そうだな。でも少し前にきみが本気で僕のそばから離れたいと言わなかった?」
その言葉にシドがちらっと気まずくなっているカナトを見た。
「そ、そうだっけ?ハハハ!言ったかなあ!」
「言った」
「うっ……お前のせいだぞ。俺を利用するから」
「そうだな。すまなかった。でも次どこかに行きたいなら一言知らせてくれ。じゃないと心配してしまうだろ?」
「……わかった」
まるで次どこかに行きたいなら行かせてもらえるような言い方だったが、邸宅に帰るとやはり足に枷が付けられた。
変わらねぇじゃねぇかよ!
それからしばらく経った頃、アレストの機嫌が悪くなり始めた。
すでに魔女に仕立てられた死刑囚が2人目になり、処刑されて間もない頃のことである。
先ほど仕事の合間にカナトと遊んでいたアレストが、いきなり入ってきたムソクに何か耳打ちをされるとタッと立ち上がった。ゴミ処理をしてくる、と言い残してアレストは出て行ってしまった。
「な、何があったんだ?」
「仕事のことで阻害でもあったんだろ」
何やら事情を知っていそうなシドが部屋に入ってきた。
ドアを閉めてカナトの前に来ると「知りたいか?」と訊く。
「知りたいに決まっているだろ!何があったんだ?大変なことか?」
「どうやら武器輸送のルートを誰かに断たれたらしい」
「武器輸送!?」
「ああ。そのルートを管理しているロンドール家が怒り心頭で元凶に問い詰めているらしい。あの家の新しい当主はかなり短気な性格だな」
ロンドールって確かデオンの家だよな。
カナトは記憶の片隅からなんとかデオンのフルネームを引っ張り出した。
いや、シドの言い方からすでに元凶が誰なのか知っているように聞こえなくもないけど……。
「そもそもお前、ずっと俺の近くから離れないのに、どうやって知ったんだよ」
「お前と違って知る方法ならたくさんある」
「そーかよ」
足枷はめられてどこにも行けない俺への当てつけかコイツ!
「最近庶民のあいだで武器が横流しされている。そのせいで魔女狩りと合わせて傷害事件が増えた。むしろ武器の輸送ルートを邪魔することでこういう事態をなるべく防げると思わないか?」
「そ、そうなのか?そんな事態なら、確かに防げると思うけど……」
だがなぜそれを自分に言う?そんな疑問がカナトのなかで湧き上がった。
「たぶん横流しのことに目をつむっているのがロンドール家とアレストだ」
「……どういうことだ?」
「カナト、本当にアレストを止めたいんだな?」
「そりゃもちろんだけど……お前なんでこんな話……」
「この部屋から出してやれる」
「は?」
「アレストを裏切れ」
「は!!?」
イグナスが窓を開けるとカナトは部屋の中に滑り込んで早口にまくしあげた。
「いいか!アレストが戻るまで早く言わないといけないから言うけど」
だがそこまで言ってほんの迷う表情をした。
「お前にアレストの協力者を言えば、止められる勝算はあるか?」
「……対策は練れる」
「じゃあ、教える代わりにアレストを絶対に殺さないと約束できるか?」
「状況による」
カナトはまるで苦渋の決断をきめるようにぎゅっと目を閉じた。そして泣きそうな目を開けると、
「フェンデルとデオンだ。あとーーいや、今言えるのはこれだけだ!もう戻らないと」
カナトは窓から飛び出していく直前にこう言った。
「俺は別にお前たちの敵じゃない。あんたやユシルのことを好き嫌いで言うなら好きなんだよ。でもそれ以上にアレストが破滅しかない道を歩んでほしくない。だから言った。アレストはもう戻れないところまで来ている。ユシルは俺ならアレストを止められるって言うけど、やっぱり俺だけじゃ止められない」
その姿が壁に隠れて見えなくなるとイグナスは軽く咳き込んだ。
臓器の痛みを感じ取りながら、蓄えていた兵力さえ動員させる気でいた。だが、まだそこまで来ていない。魔女狩りによる不安で暴動が起きていない。
外部のから侵入に備えて準備した兵力はこんなところで使うべきではないと、イグナスの理性的な部分が言っている。それに、これは一度失敗すれば糾弾される格好のエサである。
カナトがアレストのもとに戻った頃、すでに本人は馬車の前でシドと話していた。
しまった!やっぱり遅かったか!
アレストの肩目指して一直線に飛び移り、「アレスト~」とおしかりを避けるべく甘えた声を出した。
「カナト?どこに行ってたんだ?」
「え?あー、いや、その……」
「ちゃんと待つって言うから連れてきたのに」
「ご、ごめん……」
「シドもなぜカナトを行かせたんだ?」
シドはその質問に一切の動揺も見せずに答えた。
「飛べる生き物と人間じゃ、止めたくても止められないだろ」
「じゃあきみを連れてきた意味はあるかな?」
「俺をどこにでもつけていく世話役にしたのはお前だろ」
「知っているなら最低限の仕事はしてもらわないと困るよ」
「ふん」
思ったが、シドって一応主人のアレストには敬語使わないどころか、めちゃくちゃ失礼だよな。俺だけじゃないのか。というか今は俺のせいでシドが怒られているな。フォローしねぇと。
不思議なことに、馬車で待機していたあいだ、自分が離れたい意志を伝えるとシドは簡単に見逃してくれた。
「アレスト、あんまり怒るなよ。俺が離れたいって言ったわけだし?今は帰ってきただろ?」
「そうだな。でも少し前にきみが本気で僕のそばから離れたいと言わなかった?」
その言葉にシドがちらっと気まずくなっているカナトを見た。
「そ、そうだっけ?ハハハ!言ったかなあ!」
「言った」
「うっ……お前のせいだぞ。俺を利用するから」
「そうだな。すまなかった。でも次どこかに行きたいなら一言知らせてくれ。じゃないと心配してしまうだろ?」
「……わかった」
まるで次どこかに行きたいなら行かせてもらえるような言い方だったが、邸宅に帰るとやはり足に枷が付けられた。
変わらねぇじゃねぇかよ!
それからしばらく経った頃、アレストの機嫌が悪くなり始めた。
すでに魔女に仕立てられた死刑囚が2人目になり、処刑されて間もない頃のことである。
先ほど仕事の合間にカナトと遊んでいたアレストが、いきなり入ってきたムソクに何か耳打ちをされるとタッと立ち上がった。ゴミ処理をしてくる、と言い残してアレストは出て行ってしまった。
「な、何があったんだ?」
「仕事のことで阻害でもあったんだろ」
何やら事情を知っていそうなシドが部屋に入ってきた。
ドアを閉めてカナトの前に来ると「知りたいか?」と訊く。
「知りたいに決まっているだろ!何があったんだ?大変なことか?」
「どうやら武器輸送のルートを誰かに断たれたらしい」
「武器輸送!?」
「ああ。そのルートを管理しているロンドール家が怒り心頭で元凶に問い詰めているらしい。あの家の新しい当主はかなり短気な性格だな」
ロンドールって確かデオンの家だよな。
カナトは記憶の片隅からなんとかデオンのフルネームを引っ張り出した。
いや、シドの言い方からすでに元凶が誰なのか知っているように聞こえなくもないけど……。
「そもそもお前、ずっと俺の近くから離れないのに、どうやって知ったんだよ」
「お前と違って知る方法ならたくさんある」
「そーかよ」
足枷はめられてどこにも行けない俺への当てつけかコイツ!
「最近庶民のあいだで武器が横流しされている。そのせいで魔女狩りと合わせて傷害事件が増えた。むしろ武器の輸送ルートを邪魔することでこういう事態をなるべく防げると思わないか?」
「そ、そうなのか?そんな事態なら、確かに防げると思うけど……」
だがなぜそれを自分に言う?そんな疑問がカナトのなかで湧き上がった。
「たぶん横流しのことに目をつむっているのがロンドール家とアレストだ」
「……どういうことだ?」
「カナト、本当にアレストを止めたいんだな?」
「そりゃもちろんだけど……お前なんでこんな話……」
「この部屋から出してやれる」
「は?」
「アレストを裏切れ」
「は!!?」
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