転生と未来の悪役

那原涼

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第五章

監禁

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劇場が火に包まれたことで首都が騒いでいた。ある者は魔女の呪いだと、またある者は誰かの陰謀だと言う。しかし、こんな状況の最中なためか、周りは魔女の呪いだと信じる者が多かった。

何より劇場で処刑される魔女の噂が民衆に広まったせいで、怒った魔女が呪いをまいたとして魔女狩りが少し落ち着いていた。劇場でカナトの言葉を聞いていた貴族たちもなぜかその説を信じている。

劇場の火災で魔女が行方不明になり、貴族たちに集まるよう手紙を出した者は実在しない人物だと判明したため、事態は一気に謎を極めた。












劇場の件から、カナトは火の中からアレストに助けられて邸宅へ戻っていた。

アレストは忙しいようで、なかなか帰ってこれなかったが、今日はやけに機嫌がよさそうにしている。

「カナト、いいところへ連れて行ってあげる」

足枷を外してアレストはカナトを抱き上げた。

「いい、ところ?」

「ああ、気に入ってくれるといいが」

カナトは劇場の件からなぜ怒られないのかわからず、ただ優しくしてくれるアレストに気まずさを感じていた。

「どこに行くつもりなんだ……?」

いいところに連れて行くと言われて馬車で知らない屋敷についたが、なぜかその地下へ進んでいる。

「ついたらわかるよ」

カナトはランプを持ってアレストの代わりに暗い道を照らしていた。お姫抱っこされた姿勢で不安気味に周りを見渡している。

「こんなところに何があるんだ?」

「ついてからのお楽しみ」

「そ、そうか……」

怒ってない?本当か?

あの劇場の件以降、アレストはひと言もそのことに触れない。態度だけ見るなら気にしていないように見える。しかし、足枷が両足につけられるようになったので、表面上のように気にしていないわけではないだろう。

「アレスト」

「ん?」

「俺のこと、助けようとしていたのか?」

「劇場の時か?」

「ん……。あそこで俺を見捨てて、魔女に惑わされたって言えば悪目たちもしなくなるだろ?」

「きみのことを手放すはずがないとわかった上での発言か?」

いつになく厳しい口調にカナトの体が強張った。

「何を失うことになっても、きみだけは手放さない」

その言葉に少しうれしくなるが、アレストはまだ魔女狩りをあきらめたようには見えない。

カナトは少し迷ってから口を開いた。

「俺はもう魔女だって認識されていると思うけど、大丈夫なのか?一応俺がお前の専属使用人だってわかる人いると思うし」

「大丈夫だよ。なぜ貴族たちが僕の言うことを聞くのか、忘れたのか?」

「あっ……そっか。じゃあお前には打撃はないのか?」

「さすがに少しもないことはないけど、かすり傷程度かな」

「へ、へぇ」

かすり傷程度か……。じゃあ魔女狩りを止めるには俺じゃ力不足ってことか?

「ついた」

「へ?」

「いいところ」

アレストはカナトを地面に下ろし、目の前にある鉄製のドアを開けた。

光が入るように、部屋正面の壁上部には格子窓がはめられている。薄い光が灰色の部屋をほの暗く照らしてその全容が見えた。

ベッドに椅子、テーブル、棚、そこに乗せられるお菓子類。そして、ベッドの上には鎖が見えた。

「部屋……?」

まるで人が住むこと前提に設置されたような部屋にカナトが不思議そうな声を出した。そして目がベッドの上にある鎖を映して少しいやな予感がした。

「地下にしては素敵な部屋だな!でも俺あんまりここの雰囲気は好きじゃないから、上に行ってもいいか?」

言いながらカナトはすでに逃げ腰でドアから離れようとした。その背中に大きな手のひらが添えられた。

「どこに行くつもりなんだ?」

「いや、その……上に?」

アレストはどこかおかしそうに笑ってカナトの両肩に手を置いた。

「カナトがこれから暮らす場所はここだ」

「ここ……?」

「この部屋がカナトの部屋だよ」

どういうことだ?

カナトの頬に冷や汗が流れた。勘が今すぐここを離れたほうがいいと警鐘けいしょうを鳴らしている。

「で、でも俺ここの雰囲気はあんまり好きじゃーー」

「急いで準備したから足りないかもしれないけど、カナトが脱走できないようにしておいた。それにほら、この国は冬が厳しいから、寒さ対策に暖炉も用意したよ。望むなら領地に置いてきた猫やオウムも連れてこよう」

カナトは視た未来で確か屋敷が首都に移したということを思い出した。

まさか、この屋敷なのか?

「ほら、カナトが好きなお菓子も用意したし、つまらなく感じるなら部屋でできる遊び道具を買ってくるよ」

「ま、待って!ここで?俺が暮らすのか?なんでだよ!」

「きみが何度も逃げるからだ」

「………っ」

「しかも人前で自分が魔女だと言うなんて、何を考えているんだ?」

「それはっ!」

「イグナスの差金か?」

「ぁ、いや……」

「僕は怒っているんだ。どれほど危険なことかわかるか?もし万が一に処刑された場合、僕はどうすればいい?きみを失うくらいなら………。あれから色々と考えたんだ。きみは受け入れられないかもしれないが、こうして閉じ込めてしまえばどこにも行けないのだろう?」

アレストの目にだんだんと恍惚としたものが浮かび出た。

「ほら、入ってみて。他に何か必要なら出来る限り準備する」

「いや、待っーー!」

反抗する暇もなくカナトは部屋の中に押し入れられた。

暴れても簡単に押さえ込められ、またも足首に枷をはめられてしまった。









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