ブレイブ&マジック 〜中学生勇者ともふもふ獅子魔王の騒動記〜

神所いぶき

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第2章

13.ゆがむ景色

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「悪いガ、ここは通さんゾ」
 黒のローブをまとった魔族が手をかざした瞬間、突風が吹いてヴォルフの身体は吹き飛ばされた。
「うおおおおっ!?」
「ヴォルくん!」
 吹き飛ばされたヴォルフを、ゼーゲンさんが慌てて全身で受け止め、床に倒れ込む。おかげでヴォルフは壁に叩きつけられずに済んだ。
「悪い、兄貴……」
「オイラはなんともないッスよ。それより……」
 ゆっくりと立ち上がりながら、ゼーゲンさんは叫ぶ。
「何でお前がここにいるッスか!? ティガ!」
 ティガ。どうやら、それが白虎の魔族の名前のようだ。
「ゼーゲンさんの知り合いか?」
「知り合いなんてもんじゃないッスよ。こいつは元々、オイラと同じように魔王様に仕える執事だった男ッス!」
「執事、だった……?」
 だった、ということは今は執事ではないようだ。
 それと、ゼーゲンさんと仲が良くないのが分かる。何故なら、ゼーゲンさんが歯をむき出しにして、怒っているからだ。こんなゼーゲンさんの顔、今まで見たことがない。一体何があったのだろう。
「久しぶりだナ、ゼーゲン。まだ、あのできそこないの魔王に仕えているようだナ」
 白虎の魔族――ティガはフードを取り、不敵に笑った。
 怒りをあらわにするゼーゲンさんに、動じていない。
「ふざけるなッス! まさか、この騒ぎもお前が起こしたんスか!?」
「無論ダ」
「酷い! 何でこんなことをするの!」
 この騒ぎを起こしたことを認めたティガに対して、ナハトが非難の声をあげる。すると、ティガは涼しげな顔でこう答えた。
「この世界の、勇者の力を見てみたいと思ってナ」
 ナハトとヴォルフ、そしてゼーゲンさんの視線がオレに集まる。
「ひょっとして、オレの力を見たかったってことか?」
 恐る恐る尋ねると、ティガは深く頷いた。
「そうダ。だが、期待ハズレだっタ。貴様は、弱イ」
「オレが、弱い?」
 何で初対面のヤツに期待外れとか弱いとか言われなくちゃいけないんだ。腹が立つ!
「貴様がもし強者であれば、魔王を倒すための手駒にしようと思っていタ。しかし、戦力にはならなそうダ」
「なんだと……?」
「ティガ! お前はまだ魔王様を倒すなんてふざけたことを考えてるッスか!」
「当然ダ。力で異世界を支配するのが、魔王の役割なのに、あいつはその役割を放棄していル。役割を放棄した魔王など、必要なイ」
 そう言って、ティガがパチン、と指を鳴らした。その直後、ティガの首元にぶら下がる黒い宝石のペンダントが妖しく輝き、ゲートから出てくるヘビとコウモリのモンスターの数が増した。
「ちくしょう! 数が多すぎるだろ!」
 ヴォルフが現れたモンスターに片っ端から魔法をぶつけるも、倒した数よりもゲートから現れるモンスターの数の方が増えていく。とにかく、オレも倒せるだけ倒さないと。
「飛べ、炎よ! フォイア……」
「遅イ」
 オレが魔法を発動させるよりも早く、ティガはオレの目の前に接近してきた。まずい、と思いすぐに距離を取ろうとしたが、間に合わない。
 あっという間に、オレは羽交い締めにされてしまった。
「勇者くん!」
「クオンさん!」
 ナハトとユウくんが心配そうにオレを呼ぶ声が聞こえた。
「おいてめえ! クオンを放せ!」
「そうはいかン。こいつは戦力にはならないガ、人質としての価値はありそうだからナ」
「人質だと? オレが?」
「うム。魔界から観測していたから知っているのダ。できそこないの魔王が、何故か勇者である貴様に執心していることをナ」
 ワケがわからないことだらけだ。だけど今は、どうにかしてこいつの手から逃れないと。
 ……でも、身体に力を込めてもビクとも動かない!
「こんな卑怯な手を使うなんて、最低ッスね」
「なんとでも言エ。目的を達成するために手段は選ばないのが強者の証ダ」
 オレを抱えたまま、ティガがゲートに向かって歩き出す。
 ひょっとして、このままゲートの中に入るつもりか!?
「できそこないの魔王に伝えロ。一時的にこのゲートを閉じル。だが、今夜、日が変わる頃に再びゲートを開けてやル。勇者の命が惜しければ、その時間に単身でこのゲートの中に来いト」
 ダメだ。こいつめちゃくちゃ力強い。ゲートの中に連れ込まれてしまう!
「クオンさん!」
「ユウくん!?」
 ゲートの中に連れ込まれる寸前、ユウくんがオレの元に走りよって来るのが見えた。その直後、景色がぐにゃりと歪む。その瞬間にオレは理解した。ゲートの中に、入ってしまったのだと。
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