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第2章 入学初日からハードすぎる!

12.変な担任

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 四月なんてすぐ来る。そう思っていたら、本当にあっという間に四月が来てしまった!
 四月八日。数日前に宅配便で届いた、所々に赤い線が入っている黒の制服を着て、私は家を出た!
 桜がひらひらと舞い散る道を走って、私は向かう! MCCアカデミーに!
「やあ。朝火さん。久しぶり」
 校門の前に、レンさんが立っていた。レンさんもしっかりと制服を着ている。
「レンさん! お久しぶりです! ……あれ? 線の色が違う」
 私と違って、レンさんの制服には緑の線が入っていた。
「火属性の魔法が得意な学生は赤、水は青、風は緑、地は黄……といった具合に、制服の刺繍の色がそれぞれ違うんだよ。オシャレだよね」
「へえー!」
 じゃあカヤトくんは青で、ウィガルくんは緑、チトセちゃんは黄の線が入った制服を着ているんだ。四人揃ったらきっとカラフルだろうなあ。
「さあ、早く教室に行くといいよ。もうすぐ授業が始まるからね」
「あれ? 入学式はないんですか?」
「長々と話をするのは疲れるし、聞く方も疲れるだろうからめんどくさい式はしない。それが校長から預かった言葉だよ」
 うわ。校長がどんな人かは知らないけど、めっちゃ変わり者っぽい! でも長い話を聞くのは疲れるってのは同意! 私としてもめんどくさい式がないのは嬉しい!
「代わりに、今日は午後から寮で歓迎会があるよ。楽しみにしていてね」
「分かりました!」
 ひらひらと手をふるレンさんに頭を下げた後、私は教室に向かった!

 §

 教室にたどり着くと、そこには一緒に試験を乗り越えた仲間たちが居た!
「みんな! おはよう!」
「おはようアンドお久しぶりなのです。ヒナコさん」
 真っ先に返事してくれたのはチトセちゃんだった。
「おう。相変わらず元気だな」
 続いて、カヤトくんが真顔で返事をする。相変わらずクールだなあ。
「おはようでござる。元気なのは良いことでござるな」
 ウィガルくんは、尻尾をゆらゆらと揺らしながらあいさつをしてくれた。
 みんなも元気そうで良かったなあ。そう思いながら、私は空いている席に座る。
「……あれ? 私たちだけなの?」
「はいなのです。入学試験に受かったのはチトセたちだけだったようなのですよ」
「少なくない!?」
 校舎がめちゃくちゃ大きいのに、新入生がたったの四人!? 教室に入った瞬間に、席が四つしかないなんておかしいなあとは思ったけれど! まさかの四人!?
「ちなみに二年生も四人で、三年生は八人らしい」
「少なくない!!??」
 つまり、全校生徒が十六人!? 少なすぎる!
「ここの試験は厳しいことで有名でござるから……」
「まあ、確かに厳しかったよね……」
「死にかけたしな、オレ」
 厳しい試験を受けたがる人は少ないだろうし、その試験をクリアする人も少ない。だから生徒の数も少ないんだなあ。

「おはよう諸君ッ! そして入学おめでとうッ!」
 大きな声とともに、教室のドアが勢いよく開いた! と思った次の瞬間、赤いジャージを着た虎の魔族がのしのしと教室に入ってきた!
「ワシは『トガラム』ッ! 諸君らの担任であり、放射型魔法学の教師だッ! よろしく頼むぞッ!」
 このマッチョな虎さんが私たちの担任!? そして放射型魔法学の教師!?
「あ、暑苦しい……」
 隣の席のカヤトくんがぽつりとそう呟くのが聞こえた。
「ハッハッハッ! ワシは火属性の魔法が得意だからなッ! 暑苦しいのは当然だッ!」
 へえ。このトガラム先生も私と同じで火属性の魔法を使うんだ。それに、放射型魔法学の教師ってことは、きっと放射型の魔法が得意ってことだよね。なんか気が合いそう。
「さあ、放射型魔法学の授業を始めるぞッ! 全員、グラウンドに集合だッ!」
「いきなりすぎてびっくりなのです……。入学後のオリエンテーションなどはないのです?」
 チトセちゃんが目をパチパチさせながら質問すると、
「ここでは魔法の勉強が優先だッ! それ以外のことは生活していく内に自然と覚えるはずだからなッ!」
 トガラム先生は拳を天に突き上げながらそう言った! そんなトガラム先生を見て、カヤトくんが私の耳元でこう囁く。
「お、おい。オレたちの担任、変じゃねえか?」
「そう? 元気いっぱいだし、私は好きかも」
 私がそう答えると、カヤトくんはがっくりと肩を落とした。
「……そういえば、ヒナも変人だった。やっぱ、変なやつは変なやつに耐性があるのか……」
「わ、私は変じゃないもん!」
「ヒナコどの。私『は』と言うと、トガラム先生は変と言っているようなものでござる……」
 ウィガルくんに突っ込まれてしまった! なんかショック! 否定できないし!
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