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第二章 火の女神リクシスの加護
30 火の神殿での修行 ③
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「んもう、ラクトくんは魔法学園で何を勉強してたんですか?」
「いやいや、アステールの古代文字なんて、ふつう勉強しませんよ」
「……仕方ありませんね。現代文に翻訳します」
リクシスさんは手のひらをステータスに掲げた。
すると、ぱっと光って花が咲くようにステータスの文字がわかるようになった。
「おお! 読める、読めますよぉぉぉ」
すぐそばで、ピョンピョンと跳ねるクリスタルスライムである通称、クリちゃんは、「キュルルル」と鳴くと、その透明な身体をピンク色に染めた。まるで、ぼくの情報を見ないで~と言わんばかりの顔をしている。もしかして、恥ずかしいのだろうか? ふぅん、どれどれ、ちょっとラクトお兄さんに見せてみなよ。君の恥ずかしいステータスを、さあ……。
クリスタルスライム
HP 1200 MP 5800
攻撃力 370
防御力 9999
耐性 水・風・火・土
吸収 雷
弱点
獲得経験値 100000
特徴:単独行動を好むが、危機が迫ると仲間と団結して融合することも。
その強固な性質から、討伐すれば豊富な経験値を積むことが可能。
よって、冒険者のレベルアップには持ってこいの存在。
しかし、そのせいで絶滅危惧種にまでその個体を減少。
現代では神々による保護がされている貴重な魔物である。
なるほど……。
まず驚いたのが、桁違いの防御力だ。
非常に硬く、まともな物理攻撃では傷つけられないだろう。
それと、雷を吸収していた。どうりで、僕が放った渾身の雷斬りを喰らっても、ピョンピョン飛び跳ねていたわけだ。そして、そんなクリちゃんには弱点がなかった。つまり、魔法は何も効かない。物理攻撃あるのみなわけだが。
「じゃあ、消しますよ。次からラクトくんが自分でやってください」
そう言ったリクシスさんは、右手を払ってステータスを消した。
「え? 僕はステータスをだせませんよ」
「いいえ、できます。ラクトくんは賢者なんです。すべての魔法を使えます」
「すべて?」
「はい。すべてです。しかし、今はまだレベルが22しかないのでMP不足で詠唱できない魔法が多いだけです」
「まじか……僕ってよっわ」
「ちなみに、ステータスオープンするにはMP200消費します。現在、ラクトくんのMPは上限80しかないので、そもそも無理でしたね。ハハハ」
「……リクシスさん。笑うところおかしいです。それより、僕のステータスも見せてくださいよ。ギルド館では古代文字で読めなかったんです」
「仕方ないですね」
ふぅーとため息を吐いたリクシスさんは、指をパチンと弾く。
ブゥン、と僕のステータスが現れた。クリちゃんも、「キュルル」と鳴きながら興味津々でのぞいてくる。この魔物って友好的なのでは? 手のひらサイズの丸っこい水晶って、なんだか可愛いし……。そして、リクシスさんとクリちゃんは僕のステータスを、じっと見つめた。
ラクト 賢者 レベル22
HP 200 MP 80
攻撃力 6800
防御力 7500
耐性 水・風・火・土
吸収 雷・光
弱点 優しい心
装備 クリスタルソード
クリスタルヘルム
クリスタルメイル
クリスタルのこて
特徴:男性。十六歳。身長165センチ。
黒い髪に黒い瞳。平凡な顔。
心が優しいがゆえに戦闘意欲がない。
努力が嫌いで向上心もない。弱虫ですぐ泣く。
環境の変化に弱く。家に引きこもりがち。
自主的に行動できず、誰かの命令でしか動けない。
自分の評価を自分で下げ、こんなものかとすぐに諦める。
しかし、初恋の僧侶ノエルにたいしてだけは強い欲望を抱き……
「あわわわわっ! 見ないでくださぁぁい!」
そう叫んだ僕は、すっとリクシスさんの前にでた。
「何をしているんですか? ラクトくん」
僕は腕を振りながら身体を張って自分のステータスを隠した。なぜなら、特徴の欄がとんでもない情報が載っていたからだ。僕の初恋がバレちゃう……ヤバい。それでも、リクシスさんにはすでに見えていたのか、黙念とした表情で語る。
「まあ、ラクトくんも一丁前に男の子ってことですね」
「……変態とは思いませんか?」
「うーん、ふつうでは?」
「はあ……よかった」
「むしろ、シコシコしていないようなのでラクトくんの健康面が心配です。そろそろ精通する時期だと思いますから」
え? 僕は耳を疑った。「セイツウ?」
うふふ、と鼻で笑ったリクシスさんは竜槍ゲイブルガを一振りすると口を開いた。
「そんなことよりも、サクッとクリちゃんを倒してレベルアップしてください」
「……わかりました」
「素直でよろしい。それでは、ヒントを与えましょう」
「はい」
「では、ここ火の神殿を仮想の戦場としましょう。地形は四角。フラットな平面。身を隠す場所はない。岩もなければ、川も流れていない。つまり、何もない場所です。さて、どうしましょう。ラクトくん」
「……ないですね。ここには何もない」
「兵法では、まず天候と地形を考えて戦術を練ります。それから、敵の戦力と自分の戦力を視野に入れ、どんな場所で、どんなタイミングで攻撃をすることが敵に対して大ダメージを与えられるかどうかを探るのですが……このように何もない空間の場合はどうしたらいいのでしょう。さて、ラクトくん、わかりますか?」
「うーん、つまり……」
僕は頭のなかで二者選択に悩んだ。
それなら逃げる それでも戦う
さて、どっちだろう。
悩んだ末に、僕が選んだのは、
「それなら逃げます」
と答えた。
ぱちぱちぱち、とリクシスさんが拍手すると、クリちゃんが、キュルルと鳴いて一回転した。僕のことを一瞥しバカにしたように笑ったように見えた。え、なにあいつ?
「非常にラクトくんらしい回答に、私は感動しました……が、これは修行ですよ!」
「あ、そうですね。あはは」
「んもう、時間の無駄です。回答を教えます」
「はい」
「地形を魔法で作るのです」
「え? どういうことですか?」
ふふ、と不適に笑ったリクシスさんは、すっと手のひらの上で魔法陣を浮かべた。妙に冷たい風が吹き、空間が震え始める。ふぅーと息を吐いたリクシスさんは、涼しげな表情で言った。
「罠を仕掛けて魔物を仕留めるんです。戦場において基本中の基本ですよ、ラクトくん」
「いやいや、アステールの古代文字なんて、ふつう勉強しませんよ」
「……仕方ありませんね。現代文に翻訳します」
リクシスさんは手のひらをステータスに掲げた。
すると、ぱっと光って花が咲くようにステータスの文字がわかるようになった。
「おお! 読める、読めますよぉぉぉ」
すぐそばで、ピョンピョンと跳ねるクリスタルスライムである通称、クリちゃんは、「キュルルル」と鳴くと、その透明な身体をピンク色に染めた。まるで、ぼくの情報を見ないで~と言わんばかりの顔をしている。もしかして、恥ずかしいのだろうか? ふぅん、どれどれ、ちょっとラクトお兄さんに見せてみなよ。君の恥ずかしいステータスを、さあ……。
クリスタルスライム
HP 1200 MP 5800
攻撃力 370
防御力 9999
耐性 水・風・火・土
吸収 雷
弱点
獲得経験値 100000
特徴:単独行動を好むが、危機が迫ると仲間と団結して融合することも。
その強固な性質から、討伐すれば豊富な経験値を積むことが可能。
よって、冒険者のレベルアップには持ってこいの存在。
しかし、そのせいで絶滅危惧種にまでその個体を減少。
現代では神々による保護がされている貴重な魔物である。
なるほど……。
まず驚いたのが、桁違いの防御力だ。
非常に硬く、まともな物理攻撃では傷つけられないだろう。
それと、雷を吸収していた。どうりで、僕が放った渾身の雷斬りを喰らっても、ピョンピョン飛び跳ねていたわけだ。そして、そんなクリちゃんには弱点がなかった。つまり、魔法は何も効かない。物理攻撃あるのみなわけだが。
「じゃあ、消しますよ。次からラクトくんが自分でやってください」
そう言ったリクシスさんは、右手を払ってステータスを消した。
「え? 僕はステータスをだせませんよ」
「いいえ、できます。ラクトくんは賢者なんです。すべての魔法を使えます」
「すべて?」
「はい。すべてです。しかし、今はまだレベルが22しかないのでMP不足で詠唱できない魔法が多いだけです」
「まじか……僕ってよっわ」
「ちなみに、ステータスオープンするにはMP200消費します。現在、ラクトくんのMPは上限80しかないので、そもそも無理でしたね。ハハハ」
「……リクシスさん。笑うところおかしいです。それより、僕のステータスも見せてくださいよ。ギルド館では古代文字で読めなかったんです」
「仕方ないですね」
ふぅーとため息を吐いたリクシスさんは、指をパチンと弾く。
ブゥン、と僕のステータスが現れた。クリちゃんも、「キュルル」と鳴きながら興味津々でのぞいてくる。この魔物って友好的なのでは? 手のひらサイズの丸っこい水晶って、なんだか可愛いし……。そして、リクシスさんとクリちゃんは僕のステータスを、じっと見つめた。
ラクト 賢者 レベル22
HP 200 MP 80
攻撃力 6800
防御力 7500
耐性 水・風・火・土
吸収 雷・光
弱点 優しい心
装備 クリスタルソード
クリスタルヘルム
クリスタルメイル
クリスタルのこて
特徴:男性。十六歳。身長165センチ。
黒い髪に黒い瞳。平凡な顔。
心が優しいがゆえに戦闘意欲がない。
努力が嫌いで向上心もない。弱虫ですぐ泣く。
環境の変化に弱く。家に引きこもりがち。
自主的に行動できず、誰かの命令でしか動けない。
自分の評価を自分で下げ、こんなものかとすぐに諦める。
しかし、初恋の僧侶ノエルにたいしてだけは強い欲望を抱き……
「あわわわわっ! 見ないでくださぁぁい!」
そう叫んだ僕は、すっとリクシスさんの前にでた。
「何をしているんですか? ラクトくん」
僕は腕を振りながら身体を張って自分のステータスを隠した。なぜなら、特徴の欄がとんでもない情報が載っていたからだ。僕の初恋がバレちゃう……ヤバい。それでも、リクシスさんにはすでに見えていたのか、黙念とした表情で語る。
「まあ、ラクトくんも一丁前に男の子ってことですね」
「……変態とは思いませんか?」
「うーん、ふつうでは?」
「はあ……よかった」
「むしろ、シコシコしていないようなのでラクトくんの健康面が心配です。そろそろ精通する時期だと思いますから」
え? 僕は耳を疑った。「セイツウ?」
うふふ、と鼻で笑ったリクシスさんは竜槍ゲイブルガを一振りすると口を開いた。
「そんなことよりも、サクッとクリちゃんを倒してレベルアップしてください」
「……わかりました」
「素直でよろしい。それでは、ヒントを与えましょう」
「はい」
「では、ここ火の神殿を仮想の戦場としましょう。地形は四角。フラットな平面。身を隠す場所はない。岩もなければ、川も流れていない。つまり、何もない場所です。さて、どうしましょう。ラクトくん」
「……ないですね。ここには何もない」
「兵法では、まず天候と地形を考えて戦術を練ります。それから、敵の戦力と自分の戦力を視野に入れ、どんな場所で、どんなタイミングで攻撃をすることが敵に対して大ダメージを与えられるかどうかを探るのですが……このように何もない空間の場合はどうしたらいいのでしょう。さて、ラクトくん、わかりますか?」
「うーん、つまり……」
僕は頭のなかで二者選択に悩んだ。
それなら逃げる それでも戦う
さて、どっちだろう。
悩んだ末に、僕が選んだのは、
「それなら逃げます」
と答えた。
ぱちぱちぱち、とリクシスさんが拍手すると、クリちゃんが、キュルルと鳴いて一回転した。僕のことを一瞥しバカにしたように笑ったように見えた。え、なにあいつ?
「非常にラクトくんらしい回答に、私は感動しました……が、これは修行ですよ!」
「あ、そうですね。あはは」
「んもう、時間の無駄です。回答を教えます」
「はい」
「地形を魔法で作るのです」
「え? どういうことですか?」
ふふ、と不適に笑ったリクシスさんは、すっと手のひらの上で魔法陣を浮かべた。妙に冷たい風が吹き、空間が震え始める。ふぅーと息を吐いたリクシスさんは、涼しげな表情で言った。
「罠を仕掛けて魔物を仕留めるんです。戦場において基本中の基本ですよ、ラクトくん」
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