52 / 68
第三章 勇者パーティの没落
15 勇者パーティには戻れません
しおりを挟む「ラクト、強くなったな……」
アフロ様の言葉はラクトくんを称えるものだった。
青く光り輝く剣を鞘に収めるラクトくんは、やおら口を開く。
「強くなったのは……実は、この剣のおかげなんです」
「おや? その剣はもしや……クリスタルソードじゃないか!? っていうか、鎧も兜も小手もすべてクリスタルだな……おまえ、買ったのか?」
「はい。全財産を使い果たしましたけどね、ハハハ」
そう笑いながら答えるラクトくんは、ビュンッと剣を放り投げた。
虚空で回転する剣を見据え、パチンと指を鳴らす。
すると、剣は音もなく消えた。きらきらと光る粒子がほのかに舞っている。なんとも、摩訶不思議な現象を目の当たりにしたアフロ様は、口をぱくぱくと動かして何かをささやいていたが、やがて意を決して、「おい」と言葉を放つ。
「やっぱり戻ってこい! ラクト」
ぽかん、とした顔のラクトくん。
アフロ様はさらにラクトくんを誘う。
「皇帝からクエストをもらった」
「どんなクエストですか?」
「どうやら、フルールの西の砦が魔族に襲撃にあっているらしい」
「西の砦……あそこは防衛上の要地ですね」
「ああ、フルールに物資を輸送する陸路があるのだが、その道を守る重要な関所となっている」
「じゃあ、その西の砦が没落したら、フルールは……」
「うむ、陸路を絶たれたら、一気に魔王軍から戦争を仕掛けられるだろう。そうなれば、フルールが滅亡するのは時間の問題だ」
「では、つまりクエストは、西の砦を魔族から奪還すること、ですね?」
「そうだ」
「……なるほど」
「そこでだ。ラクト、おまえもう一度、俺たちのパーティに戻ってくれないか? おまえの力が必要なのだ。賢者になったおまえの力が……」
「……」
「頼む、この通りだ」
アフロ様は頭をさげるとつづけた。
「ラクト、おまえをいじめたことは謝る、本当にすまなかった」
「……いえ、もう終わったことです」
ラクトくんは下を向いている。
アフロ様の弁解はつづく。
「おまえは知らないと思うが、いつか賢者になる息子がいると、おまえの母親から言われたことがあるんだ。俺はこれも何かの縁だと思い、おまえをパーティに入れた。もしかしたら、俺のことを父親代わりになればと、おまえの母親は思っていたのかもしれない」
「……そんなことが」
「ああ、そして、おまえを戦場に連れて行った。だが、おまえはまったく役に立たない戦力外だった。それでも、おまえはおまえなりに健気にがんばっていたと、俺は思う、だがな……戦場はそんな甘いものじゃない。生きるか死ぬかなんだ」
「たしかに……」
「だから、おまえを死なせてでもしてみろ! 俺はなんて言って母親に説明したらいい? とても顔なんて合わせられない。だから俺はおまえを追放した。いじめたのは未練をなくすためと、それでもおまえが根性を見せるかどうか、試していたのもある」
「嘘だろ……そんなことが……」
いやいや、違うっ! と叫んだアフロ様が大仰に首を振った。
「すまない、そんなのは言い訳だ! 俺がおまえを追放したのは、怖くなったからだ! 責任が取れないからだ。ああ、そうだ、俺はおまえの教育を放棄したんだよ」
「でも、それを言ったら、ミルクちゃんやアーニャさん、それにノエルさんだって、戦場で死ぬことがあるのではないですか? なぜ、僕だけに責任を感じるのですか?」
「あいつらは友達だからだよ」
「え?」
「ミルクもアーニャもノエルも俺の命に変えても守るし、死ぬときは一緒だ」
「……そ、それなら、僕も友達にしてくれればよかったじゃないですかっ! なんで、なんで、僕だけ仲間外れにするんですかっ」
「……すまない、本音を言うと、俺は努力しない人間は嫌いなんだ。親のスネをかじってのうのうと生きているやつも嫌いだ。戦場においてでも、後方支援しているだけで、仲間の命を救えないやつは、もっと嫌いなんだ……わかってくれ、俺はおまえが嫌いだったんだ……そんなやつとは友達になれない」
ラクトくんは眉をひそめ、アフロ様をにらんでいた。
アフロ様はラクトくんを、まっすぐに見つめ返すと言葉を放つ。
「だが、なにがあったか知らないが、おまえは賢者になった」
「……はい」
「強くなったのなら話は別だ。もう一度、勇者パーティに戻ってきてくれないか? ラクト」
真剣な眼差しのラクトくんは、スッと息を吸いこんでから答えた。
「ごめん、女神様とパーティを組んでるから戻れません」
なっ、なんだと!? と言ったアフロ様の額から、たらーと汗が流れる。その顔は落胆の色が濃く、次の言葉は何かと、頭のなかを探しても、見つかるのはラクトくんをいじめた記憶だけだろう。わたしだって、後悔と自責の念で、胸が張り裂けそうになっているのだから。すると……。
ぱちぱちぱち、と拍手が火の神殿に響きわたる。
「誰だッ!?」
と、大きな声で尋ねるアフロ様。
その言葉に合わせるように、わたしたちが首を振っていると、赤く光るクリスタルの奥から、すぅーっと人影が浮きあがる。そよそよと揺れる金髪、赤銅色の瞳、はためく白いマント……。
(火の女神リクシス!)
0
あなたにおすすめの小説
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる