《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

文字の大きさ
4 / 210

4.世界の常識

しおりを挟む
 俺達獣人の間では、昔から【会えば番だと分かる】という通説がある。

 実際、俺の周りの番持ちも、そう言っていた。
その意味が、まさかこのタイミングで分かるとは。

「僕、ここに一人で住んでて、もうすぐ冬なのに、でも薪がたりないの。
去年、それで危うく凍死するかと思ったから、早く作らないといけなくて。
でも、どうしたらいいかわかんなくて、秋も終わってて、冬になっちゃって……」
「手伝いって、そんな事か?
というか君は、それより前は親といたのか?」

 俺が少年を番だと認識できても、人族である少年は違う。

 だから、もっと何か、もしかすると金銭でもふっかけてくるかと思っていたのに……。

 思わず拍子抜けする。

「えっと、だから手伝って欲しいって思って。
人手、ていうのかな。
それも無くはないんだけど、そういうの嫌がられちゃうから、なかなか頼めなくて。
どうせあんな所で見かけたら助けるしかないんだし、でもおじさんにも嫌がられたら困っちゃうなって思って。
ほら、おじさん力強そうだから、薪割りも、すぐ終わるかなって。
あ、でもやっぱり知らない家の薪割りとか、面倒だよね。
ごめんね。
親じゃなくて、もう亡くなったお爺ちゃん達から家を譲り受けたの。
親は最初からいないよ。
いたのかもしれないけど、少なくともここにはいない」

 少年が、再びしょぼーんと俯く。
いや、本当に、庇護欲そそる可愛さだから、やめてくれ。

「それくらいは手伝うさ。
君のお陰で、俺は命拾いしたんだ。
親の事は、見ず知らずの者が、無遠慮に聞くべきではなかったな、すまない。
俺はグラン=ウェストミンスター。
まだ三十歳だから、おじさん呼びはちょっと傷つく。
グランとか、ランとか気軽に呼んで欲しい」
「本当に!?
良かったぁ!
ありがとう、グランさん!
僕はレンカ=キサカ。
レンて呼んで」

 喜んだ途端の、レンの笑顔に鼻血が出そうだ。

 名字があるということは、元は豪商以上の身分だろうか?
ただの平民なら、名字がないはずだ。

 その内、ちゃんと教えてもらおう。
さすがにこれ以上は、まだ踏み込むべきではないだろう。

「あぁ、安心しろ。
騎士は一宿一飯の恩を忘れん。
他に手伝って欲しい事は、あるか?」
「うーん……ない……多分?」
「手伝える事は、手伝うぞ。
だから、ちゃんと言うんだ」

 そっと手を伸ばして、レンの頭を優しく撫でてみる。
髪の毛、さらさらだな!

 レンは、くすぐったそうに目を細めて頷いた。
その顔が、夢で見た白い幼児とどこか似ている気がした。

「ありがとう!
それより、ご飯が冷めちゃう。
食べられそうなら、食べてみて!」

 レンに促されるまま座って、差し出されたスプーンを手に取る。

「……うまい」

 まずは、ただのスープを口にして……何だこれは!?
胃に負担をかけないようにと、野菜は小さく刻んだと言ったスープは、舌をとろけさせた。

 レンは良かったと呟きながら、花が咲いたように微笑む。

 あぁ、その唇もすすりた……いや、何でもない。

「胃は平気そう?
こっちも、食べられそうなら」

 そう良いながら、出来上がったばかりの肉と野菜を炒めた料理を俺に差し出してから、正面に座る。

「これもうまいな。
食べた事がない味だが、普段は食べない野菜が、こんなに旨いとは」
「ふふふ、まともに誰かに食べて貰うの久しぶり。
だから、そんな風に褒められると嬉しい。
グランさん肉食系の獣人でしょ?
本当は、足りないよね。
いつも一人だから、食材があんまりなくて……ごめんね」

 申し訳なさそうに謝るが、むしろ貴重な食材を使わせてしまった俺の方が、謝るべきだろうに。

 ああ……俺の番、良い子だな。

 胸がほわりと温かくなるのを感じながら、全てたいらげた。

 レンはスープだけでいいと言っていたが、そんな少食で大丈夫なのかと心配になる。

「俺の方こそ、貴重な食糧を使わせて申し訳ない。
薪も食材も、後で俺が調達するから安心してくれ。
布団や衣類も買い足そう。
去年は暖冬だったんだ。
それでどうにかしのげたんだろう。
だが今年の冬は、例年通りならぶり返しがきて、寒さが厳しくなるはずだ。
見た限り、あの布団と今の君の服では、下手をすると凍死するぞ」
「えっ、去年は暖冬だったの!?
そっかぁ……でもお金ないから、買い足せないんだ。
きっと薪があれば、大丈夫だよ。
あんまり寒かったら、寝る時は友達にお願いして、暖を取らせてもらうから」
「……友達?
暖を取れるって、まさか昨日の俺達みたく、誰かと添い寝する気か!?
これでも俺は騎士としては、そこそこの立場なんだ。
金には余裕があるから、金の心配はしなくていい。
レンが拒否しても、俺が絶対に買うからな。
だから身売りするような真似は、よすんだ!」

 番への独占欲が、思っていた以上に膨らんでいく。
気づけば怒鳴っていた。

 ビクリと体を震わせるレンが、いじらしくも憎らしい。
友達とは誰だ!?
まさか……まさか体の関係があるのか!?

「大体、自覚が無さすぎる。
その顔も体躯も、獣人の庇護欲をそそる。
挙げ句、レンは黒目黒髪だ。
珍しいどころじゃない、目立つ色を体に持ってるんだぞ。
俺は騎士だ。
自制心も、騎士としての誇りもある。
だから何かする事はあり得んが、獣人とは本来、獣として色々と奔放な性質を持ってるんだ。
恐らく、ここは魔の森の外れ辺りだろう。
レンはずっと、ここで平和に暮らしているはずだ。
今まで人身売買する人拐いや、加虐思考の獣人に会わなかった事が奇跡だと、しっかり自覚するんだ」

 そこまでまくし立てて、ふと冷静になった。

 やばい、言い過ぎた!
嫉妬に駆られて、騎士達にすら厳ついと言われる顔で、よりによって睨み付けてしまった!

 目の前にあったレンの顔を、チラッと盗み見る。

 きょとんと、して……いる?
瞳に恐れの感情は……ない、のか?

「あー、すまない。
つい怒鳴ってしまった。
心配になったんだ。
攫われれば、主に性に関する虐待を受けたり、孕み腹と言って、子を孕みにくい獣人の後継ぎの道具に使われかねない。
特に黒を纏う人間は、例外なく魔力量が多いんだ。
黒持ちは子を授かり易く、人族は体の具合も良いというのが、獣人の間では常識でな。
獣人同士での妊娠率が低い我々にとって、無防備な人間ほど、都合がいい。
その友達は信用できるのか?」

 俺が何を心配しているのか、慌てて伝えていけば、レンがどんどん青ざめていく。

 しかしレンは、やっぱり知らなかったのか?
もしレンが外見通りの年齢なら、人族なら、周りの者が必ず教えておく情報だ。

 それくらい、人族は獣人に狙われ易い。

 申し訳無さが募る。
だが添い寝する友達という存在については、どうしても気に食わない。

 本当に、安全な友達なのか?
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

目覚めたら魔法の国で、令嬢の中の人でした

エス
恋愛
転生JK×イケメン公爵様の異世界スローラブ 女子高生・高野みつきは、ある日突然、異世界のお嬢様シャルロットになっていた。 過保護すぎる伯爵パパに泣かれ、無愛想なイケメン公爵レオンといきなりお見合いさせられ……あれよあれよとレオンの婚約者に。 公爵家のクセ強ファミリーに囲まれて、能天気王太子リオに振り回されながらも、みつきは少しずつ異世界での居場所を見つけていく。 けれど心の奥では、「本当にシャルロットとして生きていいのか」と悩む日々。そんな彼女の夢に現れた“本物のシャルロット”が、みつきに大切なメッセージを託す──。 これは、異世界でシャルロットとして生きることを託された1人の少女の、葛藤と成長の物語。 イケメン公爵様とのラブも……気づけばちゃんと育ってます(たぶん) ※他サイトに投稿していたものを、改稿しています。 ※他サイトにも投稿しています。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。

アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~

ma-no
ファンタジー
 神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。  その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。  世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。  そして何故かハンターになって、王様に即位!?  この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。 注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。   R指定は念の為です。   登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。   「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。   一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。

処理中です...