《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

文字の大きさ
5 / 210

5.非常識

しおりを挟む
「お爺ちゃん達から多少聞いてたけど、それがこの世界の常識なの?
くれぐれも森から出るな、知らない獣人を見たら、親の仇と思って逃げろ。
それが最後の遺言だったんだけど、納得。
あれ、でもグランさんも獣人····」

 おい、レンよ。
納得してくれたのは、嬉しい限りだが、最後に不安そうな目を俺に向けるな。

 番を売るような獣人は、そもそもいない。
まぁ人族のレンに、番なんてわからないだろうが。

 そう思って、俺はわざとらしくため息をいた。

「俺は騎士だ。
それなりの立場だし、誇りもある。
何より互いが望む情事以外、興味がない。
そもそも、この国では人身売買を禁じている。
俺は人族を保護する立場にあるんだ。
もちろんレンが望むなら、安全な場所での生活を斡旋してやれる。
そうするか?
レンはこの部屋を見る限り、一人暮らしだろう?
どこに斡旋しても、集団生活にはなってしまう。
いきなり生活環境を変えるよりは、ここで気ままに生活する方が、レンには良いと思うが」

 レンが、あからさまにほっとした。

 そんなレンに、少し傷つく。
売られるとでも思ったんだろうか?
それとも、襲われるとでも?

 そんな無体を働くつもりは、もしレンが番でなくとも考えない。

 まぁ、いずれはお前を番として、伴侶にはしたい。
それでも成人して、乳の匂いがなくなるまでは待つぞ。

「このまま、ここで暮らしたいな。
あんまり人と群れるのが、得意じゃないんだ。
それに、ここでいる方が多分、安全。
友達も守ってくれてるんだよ。
グランさんが良ければ、もう少し外の事を、色々と教えて?
ここ以外の事って、実はよく知らなくて……常識っていうのが、わからないの。
まともに話す獣人も、何人かしかいないし、時々しか話さないから」

 レンの言葉の端々に、引っかかりを覚える。

「外の事?
それに友達というのは、獣人じゃないのか?」
「うん、ここは森の外れじゃないし、友達も獣人じゃないよ。
待ってて、呼べば来てくれるから」

 レンが立ち上がって、ドアを開ける。

「ウォンちゃーん!
キョロちゃーん!」

 ドアの外に向かって、レンが叫んだと思ったら、扉を少しだけ開けたまま、再び俺の前に座った。

「少し待ってて」
「あ、あぁ。
それより、ここがどこか聞いていなかったんだが?」

 獣人としてなのか、騎士としてなのかわからないが、俺の勘が嫌な予感がすると告げている。

「魔の森のど真ん中?」

 レン、何で疑問系で答えた?
小首を傾げて、あざと可愛い過ぎるぞ。

「何で、そんな場所で無事に住めてんだよ……」

 予想外過ぎて、喉をごくりと鳴らしながら呟いてしまう。

 魔の森のど真ん中で生活って、魔獣の餌になるようなものだろう。

 そうか、レンは黒持ちだ。
魔法を使って……。

「うーん……お婆ちゃんが、この森の黒竜のお母さんでしょ?
お爺ちゃんが、後夫さんだったから?」

 んん!?
え、えぇ……何て?
駄目だ、言葉が理解できるのに、頭が理解を拒絶してる。

「あ、お婆ちゃんはね、白竜なの!
お爺ちゃんは、兎の獣人さんだったよ!」
 
 ……何て?
もう……何も言えねぇ。
何、それ?
白竜って、獣人じゃないよな?
兎獣人の爺さんは、後妻じゃなく、後夫?
てことは、白竜がΩ性で、兎獣人がα性?
確かにお婆ちゃんとお爺ちゃんで、呼び分けてたけれども!

 レンの常識が、俺の非常識すぎる!

「えっと……ごめんね?
グランさん、怒ったよね?」

 黙り込んだ俺に、レンが何か勘違いしたらしい。
怯えたように、レンがおずおずと謝る。

「どうして、レンが謝る?」
「だって……その、グランさん達を襲ったのは、青竜でしょ?」
「……この森の竜だったのか?」

 二匹の青竜は、俺達が追っていた商人達の竜だ。
違うとわかっていて、あえてレンにそう言った。

「ううん、違う。
けど二匹とも、この森にいる黒竜が出した警告を無視して、森へ無理矢理入ったんだ。
青竜達が最初に降りたのが、この家の近くだったせいで、黒竜が怒っちゃって。
黒竜が容赦なく青竜達を攻撃した後、ぶっ飛ばして……·それでグランさん達の所に、二匹共、手負いの状態で……だから、その……ごめんなさい」

 レンが表情も見えないくらい、深く頭を下げる。

「それは……レンのせいじゃないだろう?
本当に、わかってないのか?」
「でも……結局、黒竜が僕を守ろうとして……」

 レンが頭を下げたまま、言葉を詰まらせる。
心から、悪いと思っているのが伝わってくる。

「そもそも青竜達がこの森に降りたのは、俺達が追ってた商人達が、竜笛で誘導したからなんだ。
ここは魔の森なんだろう?
魔獣だらけの森だが、商人達はこの森にしか生えない毒草が、どうしても欲しかったようだ。
採取する為に、小飼の青竜を二匹も森に放った。
商人達も結局、青竜達が手負いになったと知らずに、竜笛を吹いて呼び寄せたせいで、我を忘れた青竜達に、真っ先に食い殺されたけどな」

 小さくて形の良い頭を、わざと片手でガシッと掴んで、少し荒っぽく顔を上げさせる。
申し訳なさげな黒目と、目が合った。

 思わず苦笑して、掴んでいた手で、ぽんぽんと頭を優しく叩く。

「そんな顔は、しなくていい。
元々、悪いのは商人達だ。
魔の森は、黒竜の縄張りだと分かっていながら、青竜を放ったんだからな。
黒竜が縄張りを守るのも、生物として当然だ。
それに俺達騎士は、魔の森の外れに危険な魔獣が出やすい事を知っていた。
なのにたった三人の騎士で追いかけた俺達にも、責任がある。
なぁ、レン。
もしかしてレンが森の外れまで、あんな時間に出てきたのは、ぶっ飛ばされた青竜達が気になったからか?」
「ウォンちゃんが……森の外で人が争ってるって言ったから、気になって。
行ったらグランさんが、最後の一匹になった青竜の首を、はねたとこだった。
他に倒れてた人達も確認したけど、息があるのはグランさんだけだったの。
それで、これ……」

 レンがテーブルの隅に寄せていた、俺の甲冑の下から、折り畳んだ白い布を取り出す。
そっと布を開いて、隅に穴を開けて紐を通しただけの、銀でできた小さな長方形のプレートを二つ見せた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

目覚めたら魔法の国で、令嬢の中の人でした

エス
恋愛
転生JK×イケメン公爵様の異世界スローラブ 女子高生・高野みつきは、ある日突然、異世界のお嬢様シャルロットになっていた。 過保護すぎる伯爵パパに泣かれ、無愛想なイケメン公爵レオンといきなりお見合いさせられ……あれよあれよとレオンの婚約者に。 公爵家のクセ強ファミリーに囲まれて、能天気王太子リオに振り回されながらも、みつきは少しずつ異世界での居場所を見つけていく。 けれど心の奥では、「本当にシャルロットとして生きていいのか」と悩む日々。そんな彼女の夢に現れた“本物のシャルロット”が、みつきに大切なメッセージを託す──。 これは、異世界でシャルロットとして生きることを託された1人の少女の、葛藤と成長の物語。 イケメン公爵様とのラブも……気づけばちゃんと育ってます(たぶん) ※他サイトに投稿していたものを、改稿しています。 ※他サイトにも投稿しています。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

遊鷹太
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

処理中です...