《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

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6.レンの友達

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「血は、綺麗に洗い流したの。
遺体や甲冑は、下手に運んで、血の臭いで夜の魔獣が寄ってきそうだったし、重くて運べなかったんだ」

 差し出されたプレートを受け取る手が、自然と震えてしまう。

 プレートは、騎士証だ。
万一の時、生き残った誰かが、必ず家族の元に返すのがしきたりであり、義務とされている。

 だからもし、最後に一人だけが生き残ったとしても、騎士は最後まで、死に抗わなければならない。

「約束を、守ってくれたんだな。
ありがとう、レン」

 俺は震える手で受け取ったプレートを、二つ共、首にかける。
亡くなった騎士部下達の安らかな死を願い、悼む為に片手で握って、黙祷する。

「レンのお陰で、まだ騎士を続けられそうだ」

 黙祷を終えて、レンに礼を伝える。

 上手く笑えたかわからない。
だが、できるだけ微笑んで、小さな頭をワシャワシャと撫でた。

 もし仲間のプレートを持ち帰れなければ、俺は騎士を辞めていただろう。

 俺達の任務は、騎士団長の指示だった。

 だが商人達を追ってあの場に入り、早急に離脱しなかったばかりか、部下を守れなかったのは、隊長である俺の責任だ。

「そっか、良かった」

 レンがホッとしたように微笑んだ。

 その時だ。
脈絡なく、ドアがギィ、と音を立てて開いて……。

「レン!
こっちに!」

 中に入った、ソレを確認した瞬間、全身が粟立ち、臨戦体制になる。

 ソレは、真っ黒な魔狼だった。

 更に、開いたドアの隙間から見えたのは、真っ黒な魔鳥。

 四つ足の魔狼は、立った俺と同じくらいの背丈だし、魔鳥も魔狼の頭くらいには大きい。
それも二匹は黒。
魔獣の黒は、魔力と強さの象徴色だ。

 やばい!
レンが魔獣側にいる上に、部屋へ入られた!
武器はテーブルの甲冑くらいしかない!

 そう思いながら、レンの手を俺の方に引っ張ろうとした時だ。

「ウォンちゃん!
キョロちゃん!
おはよう!」

 歓喜の声をあげてレンが駆け寄る。
もちろんレンに伸ばした俺の手は、空振り。

 挨拶するように「ウォン」と吠えた魔狼の胸元へ、レンが飛び込む。

「……嘘だろ」

 俺はただ、呆然とするしかなかった。

 あ、魔鳥が「キョロ~」と鳴きながら、魔狼の肩に止まった。
レンの頭を嘴がソフトタッチで、毛繕いを始める。

「レン……友達って……それ、魔獣……」
「うん!
魔狼のウォンちゃんと、魔鳥のキョロちゃん!」

 魔狼の黒い胸毛にもたれるレン。
満面の笑みを浮かべてるとこ悪いが……どんな反応すればいいんだ!?

「……えっと、ウォンとキョロで、鳴き声から名付けたの……」

 俺の無反応で、不安になったんだろう。
そりゃ二匹共、黒持ちの魔獣だからな。
レンが不安そうな顔で、わかりきった名の由来を教えてくれた。

「あ、あぁ、悪い、ちょっとびっくりしちまった。
グランだ。
よろしくな、ウォン、キョロ?」
「ウォン!」
「キョロ~!」

 ……挨拶を返してくれたのか?

「ふふ、ウォンちゃんもキョロちゃんも、よろしくだって」
「そ、そうか」

 レンがドアを閉めようと、ウォンから離れる。
するとウォンが、キョロを肩に乗せたまま、俺に近づく。

 フンフンと、ウォンが俺の臭いを嗅いできた。
キョロは微動だにせず、俺をじっと見つめてくる。

 ……俺、食われないし、突かれないよな?

「ほう、ウォンもキョロも気に入ったのか」

 些か身を固くしていると、唐突に第三者の声がした。

 声がしたドアの方へ目を向けると、長身で長い黒髪に金の目をした黒衣の青年がいた。

 何でレンを、抱き締めてんだよ!?

 思わず睨んでしまうも、レンの様子から、危険人物ではないと判断する。

「レン、その男は誰だ?
どうしてレンを抱き締めてるのか、教えてくれるか?」

 レンを怖がらせないよう、睨みを緩和して笑いかける。
表情筋を総動員しても、頬がひくついてしまう。

「黒竜のファルだよ!
人の姿も取れるの。
おはようのギューだよ!
ファル、おはよう!」
「おはよう、レン。
おい、獣人。
獣ごときが俺の名を呼ぶなよ」

 黒竜だと!?
人の姿が取れるのか!?

 いや、そんな事より壮絶に艶っぽい顔で、レンを撫でるな!
名前なんぞ、誰が呼ぶか!

 レン……黒竜に可愛らしい笑顔をふりまかないでくれ……。

「ねぇ、ファル。
これからグランさんと薪を調達しに、森の散策がしたいの。
いい?」
「…ろ本気か?
ただでさえ貧血持ちが、ソイツに血を分け、モガッ」
「ファル!」

 思い切り背と腕を伸ばしたレンが、慌てて黒竜の口を手で覆う。

 明らかに、何かを隠したな?

「レン、どういう事だ?
貧血持ちはともかく、血を分けるとは?」
「何でもないよ。
ふふふ~」

 レン、誤魔化すのが下手くそすぎる。
まぁそこが可愛いんだが、俺以外の男の、それも唇に触れるのは許せん。

「レン?
嘘は駄目だと言っただろう?」
「うぇ、え、えと……嘘は吐いてな……」
「レンが魔法で、お前の手足をくっつけた」


 そう言いながら、黒竜はレンの左右の手を、それぞれ逆手に取って向かい合う。
レンの顔を見つめて、艶やかに笑った。

「しかしお前は、血を流しすぎてショック状態に陥ったから、レンが自分の血を輸血した」
「ファル!?」

 言葉を続ける黒竜は、レンの手をクロスさせた状態で、バンザイさせる。
するとレンをクルリと俺の方へ回転させ、向き合わせた。

 レンの焦った顔を正面から眺めるのは、約得だ。
だがレンよ、俺以外の男に何をされてるんだ!?

「お前は三日間、意識不明で寝こけていた。
だがレンも二日間、動けなくなっていた。
血が足りないレンは、眠ると息苦しくなるようでな。
二日間、何度も寝たり起きたりを繰り返して、まともに横にすらなれない日々を過ごしていたんだ」
「ちょっ、そんなの、言わなくていいでしょ!」

 相変わらずバンザイ状態のまま、レンは必死に後ろを振り返り、抗議の声を上げる。

 レンと身長差もある黒竜は、笑顔を引っ込めていた。
射殺すかのような眼差しを、俺にぶつけてきた。
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