《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

文字の大きさ
8 / 210

8.酷い貧血

しおりを挟む
「レンの事は、誰にも洩らすな。
レンの番であろうが、レンが望まなかろうが、レンの害になると判断した瞬間に殺す。
まぁ、どうせすぐ、この森を出るのだろう?」
「ああ。
だが、そう時間を空けずに戻ってくる」
「そうか。
番である以上、森に入る事は許可してやる。
レンを外に連れ出す事は、許さんがな。
だから何を聞くにしても、今はレンの体調がかなり悪い。
この森に再び戻った時、改めて聞け」
「わかった」

 挙動不審とも取れる俺の行動など、気にも留めない黒竜は、幾つか釘を刺す。

 しかし黒竜のテリトリーである、この森への出入りを許してくれたのは、意外だ。

 獣人なら、番と出会ったにも拘らず、引き離される事で、下手をすれば精神を病み、番もろとも心中しようと凶行に走る事を本能的に理解して、番を共有する事に肯定的だ。

 しかし黒竜は、魔獣だというのに……。

 白竜の伴侶であり、黒竜にとっては義父となる、兎の獣人の影響か?

 そのあたりも、いつかレンに聞いてみよう。

 そう考えながら、まずは薪を用意する為に、ウォンの案内で森の奥へ進む。

 それにしても、レンは黒竜に薪を頼まなかったのか?
いや、レンは人手があっても、嫌がられると言っていた。
魔獣である黒竜なら、薪作りという人間臭い作業を嫌がっても仕方ないのかもしれない。

 薪になりそうな木は、すぐに見つかった。
風魔法で裁断し、レンが手にしやすいサイズで薪を作る。
次に乾燥と防水処理をして、紐で纏めると、ウォンが咥えてどこかへ運ぶ。
恐らく、レンのいる小屋のどこかに運んでくれた……と、思う。

 薪は、もしもの時を考え、当面の量より、少し多めに作っていく。

 その間も、何度か視線を感じた。
魔獣が多いのが、この森の特徴だ。

 黒竜が抑えてくれているのだろうが、俺を餌にしたい魔獣が、どこからか見ていても不思議ではない。

「よし、薪は十分、確保できたな!
ウォン、それを運べば終わりだ」
「ウォン!」

 ウォンが返事をするように、一声鳴く。

 すると突然、体躯が二倍に大きくなった。

「へ?
デカくなれるのか!?
黒持ちだからか?
普通、魔獣は体を伸縮できないんだぞ?」
「ウォン!」

 驚いていると、また鳴いて、俺の前に伏せをする。

 どうやら乗れと言っているらしい。

「ありがとう、ウォン。
森の端まで、送ってくれ!
そこから俺は獣体になって、近くの町に移動する。
レンの布団と、防寒用の服を購入してくるから、数時間したら、同じ場所で待っててくれるか?」
「ウォン!」

 こうして俺は、レンへの貢ぎ物を買い込んだ。
小屋に戻った時には、日が傾いていた。
ウォンのお陰で、日が落ちきる前に戻れた。

「レン、入るぞ」

 俺を送ったウォンは、既にどこかへ走り去ってしまった。

 俺はレンの小屋に入る前に、小さく声をかけてみる。
しかしレンの返事がない。

 中に入ると、ベッドに腰かける黒竜がいた。
だがキョロの姿はなかった。

 恐ろしい魔獣が闊歩する、魔の森の主とは思えない程、黒竜は優しい目で、眠るレンを見つめ、頭を撫でていた。

「それは?」

 目線を向ける事もなく、黒竜は眠る番に気を使ってか、小さく俺に問う。

「レンの布団と服。
それから食料もある」

 布団以外をテーブルに置くと、黒竜が中をのぞきにくる。

 俺はレンに歩み寄り、手にしていた新しい布団を、そっと掛ける。

 除虫の為に、小屋の前で火魔法を使って乾燥させた。
まだ温かいはずだ。

 それにしても……レンの寝顔はあどけなくて、かなり庇護欲をそそるな。

「ん……」

 はぁ……俺の視線に気づいたわけじゃないだろうが、小さく唸って、タイミング良く俺の方に寝返りを打つとか、たまらない。

 顔にかかった黒髪を、レンが起きないよう注意しながら、そっと耳にかけてやる。

 ついつい、小さくて形の良い唇に、目が行ってしま……。

「襲うなよ。
殺すぞ」

 くそ、黒竜め。
見てやがったか。

「いくら番でも、子供を襲う趣味はない。
良く寝ているが、いつから寝ている?」
「二時間程、前からだ。
そろそろ起きる」
「短いな」
「最近では、まだ寝ていられた方だ」
「そんなに寝れなかったのか?」
「元々、眠りが浅い。
その上、デカイ獣がベッドを占領していたからな。
何より貧血が、相当に酷かったんだ。
寝ると酸欠状態になり、呼吸が苦しくなって起きるのを繰り返していた。
もちろん元凶は、お前だ」
「そこまで酷かったのか……すまない事をした」

 レンへの申し訳なさで、胸が痛む。

「横になれるだけ、昔よりはマシだがな。
ここに来た頃は、致死レベルの貧血症状で、横になるのも難しかった。
義父がずっと縦に抱いて、寝かせていた程だ。
母直伝という、くそ不味い薬草を飲ませるようになって、ようやく落ち着いた」
「貧血が酷いと、そこまでになるのか。
しかし何故そこまで酷い貧血に?」
「長年の不摂生が過ぎたらしい」
「……長年?
レンは今、十歳いくか、いかないかくらいだろ?
この森に来る前のレンは、どんな生活をしてたんだ?
まさか奴隷のように、酷い扱いを受けてたんじゃないだろうな」

 一瞬、最悪の状況が頭をよぎる。
騎士という職業柄だけでなく、俺自身の身分もあって、他国の中でも、人族の扱いが特に酷い国の現状を、直接目にした事がある。

 その国では、人族を性奴隷として売買していた。
そうでなくとも、人族はか弱く、加虐心を獣人に抱かせやすい。
奴隷ともなれば、日常的な暴力だって受ける。

「レンの近くで、そんな顔をして殺気を出すな。
起きてしまう」

 黒竜が不快そうに、金の目を細める。

「……すまない。
それで、どうなんだ?」
「そんな扱いは受けてない。
性が俺達とは違うのと、あり得ないほどの不摂生をしていたからだ。
まぁ、次にここへ戻る事があるなら、その時に詳しい話をレンから聞け」

 性が違うとは、どういう意味だ?
αとΩ性の事か?
どちらにしろ、番がこの森にいるんだ。
戻るに決まっている。

 そう思っていると、ベッドが僅かに揺れた。

「……グラン、さん?」

 寝ぼけたような甘い声と共に、レンが体を起こそうとする。

 小さな体が、頼りなげにふらつくので、レンの頭があった方に座り直し背後から支えてやる。

 黒竜が魔石灯に魔力を流して、部屋を明るくした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~

ma-no
ファンタジー
 神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。  その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。  世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。  そして何故かハンターになって、王様に即位!?  この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。 注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。   R指定は念の為です。   登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。   「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。   一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。

和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……? しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし! 危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。 彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。 頼む騎士様、どうか私を保護してください! あれ、でもこの人なんか怖くない? 心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……? どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ! 人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける! ……うん、詰んだ。 ★「小説家になろう」先行投稿中です★

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

遊鷹太
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

処理中です...