《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

文字の大きさ
18 / 210

18.花茶

しおりを挟む
「3日間楽しかった。
弁当と花茶ありがとうな。
寮に戻ったら早速淹れてみる。
また来るから」
「うん、またね。
気をつけて」

 今回もレンとキョロが小屋の前で見送ってくれる。
ウォンの送迎が板についてきた。

 3日間で森を散策したり、この時期しか採れない薬草の採取や調合を手伝ったりと普段のレンの生活が垣間見えたのが嬉しかった。
小屋に地下があり、そこに籠って何かを調合している間は薪を作って補充した。
何よりレンの料理が旨すぎた。

 ファルは日に1度は必ず顔を見に来るらしく、転移術のやり方を教えて貰おうとしたが冷たく断られた。
奴は黒竜のくせにケチだと言ったら、レンが今更だと笑っていたのが可愛かった。

「おや、珍しい物を」

 寮につくと日が陰っていた。
夕食までは少し時間がある。
人気のない食堂でお湯を貰いがてらレンの花茶を淹れようとしたら、騎士団副団長に声をかけられた。
兎属の中で戦闘に特化した大黒兎属で名はレイブ=ワグナロス。
精霊魔術が得意で大黒兎属の特徴である褐色肌に俺より目線は低いが兎属にしては背が高い方で、細身のメルだ。
目は水色だが魔力が高いからか髪は黒寄りの灰色をしている。

「知っているんですか?」
「えぇ、私の大叔父にあたる方が好んで飲んでました。
2代前の団長で魔術と薬学に精通していて、花茶もその延長で個人的に作ってたんです。
昔の製法で流通もしていないので個人的に作っている物を分けて貰うしか手に入らないんですよ。
そうだ、グランが嫌でなければ、これから団長とお茶休憩をするのでご相伴頂けませんか?
私なら美味しく淹れられますよ」

 どうせなら美味しく飲みたいし、団長にはこれからも休みの便宜を図って貰いたい。

「わかりました。
ついでに軽食もあるんで良ければどうですか?」
「本当ですか。
では一緒に団長の執務室に行きましょう」

 大量、と言っても2食分くらいの弁当もわける事にした。
レンお手製の燻製してローストした肉と、衣をつけて揚げてから自家製のタレにくぐらせた肉をパンに挟んだサンドイッチ、それにカラアゲという揚げ物だ。
パンもレンのお手製で、いつも食べている味気ないボソボソした薄い物と違って甘味とふわふわした食感がたまらない。

 部屋に置いていた弁当を取って団長の執務室に入ると、花茶の芳醇で甘い香りが迎えてくれる。

「グラン、こちらにどうぞ。
良い香りでしょう。
幼い頃、淹れ方を大叔父に叩きこまれたんです。
もうじき花が開ききります」
「俺がまだ騎士になりたてだった頃に鬼のしごき団長と言われたあの人が、随分可愛らしい物を好んでたんだな。
今はどうしてるんだ?」
「放浪の旅に出てそれきりです。
兎属は可愛らしい物を集めたがる習性がありますからね。
ほら、開きました。
これは月花と月夜花を模したようですね。
大叔父が好んで作っていた花によくいています」

 俺は来客用のソファに座る。
対面にはテーブルを挟んで団長達も腰かけている。
ガラスのポットには幾重にも重なった白く丸い月花が咲き、中央に更に小さな赤い月夜花が浮いている。

 レンは手先が器用だな。

 副団長がカップに注ぐと更に香りがたつ。
俺は弁当を開いてすすめた。

「見たことない料理だな。
良い匂いだ」
「カラアゲという名前です」
「サンドイッチの具材も初めてですが、パンが柔らかそうですね」
「香木で燻した肉を炙ったものと、トンカツという揚げ物を特製のタレにくぐらせたらしいです」

 レンの受け売りだ。
まずは俺からカラアゲをつまんで白いマヨネーズというソースにつけて食べた。
やっぱりレンの料理は旨い。
それを見た2人も各々口に運ぶ。

「「旨い!」」

 この2人がこんなに目をギラギラさせて飯を頬張るのは初めてだ。

「香木のもトンカツのも香りや食感が違って旨いな。
パンも甘くてフワッとしている。
一緒に挟んでる野菜のシャキシャキ感がまた良い!」
「カラアゲ自体もですが、白いソースにつけると味が変わって良い!」

 団長はサンドイッチ、副団長はカラアゲが気に入ったようだ。

「「おかわり!」」
「いや、もうないですよ。
そもそも軽食ですし」
「····そうか」
「····そうですか」

 そんな落胆した顔されてもなぁ。
でもやっぱりレンは料理の才能があるな。

 俺は花茶をすする。
あ、これあの緑のお茶が少し入ってるのか口の中がさっぱりするな。

「え、これ····」
「どうした?」

 花茶を飲んだ副団長が驚いたように呟くと、団長が反応する。

「グラン、この花茶どこで手に入れたんですか?
大叔父が作った花茶の味そのままです」
「····え?」

 レン、どういうことだ。

「先ほども言いましたが、流通せず個人的に作っているものを手に入れるしかないんです。
味も少しずつ違うんですが、この花茶は大叔父が好んだ少し癖のある苦味がします。
まさか行方不明の大叔父と会いましたか?
大叔父は私と同じで大黒兎です。
雰囲気は私と良く似ていると言われてます」

 いや、レンはそもそも人属だし、自分が作ったって言ってたぞ。

「いえ、それは知り合いが譲ってくれた最後の1つだと聞いてます。
副団長の大叔父殿の物かどうかまではわかりかねます」
「そうですか。
そうですよね、行方不明になってもう随分経ちますし、寿命を考えても亡くなった可能性の方が高い。
グラン、もしもで構いません。
もしも譲ってくれた方の事がわかったら、教えて頂けますか」
「それは勿論です」

 何となく、レンのお爺ちゃんてのがその人なんじゃないだろうか。
今度聞いてみよう。

「それでは私はこれを片付けてきますね」
「なら俺が····」
「グランはこの3日間の任務報告をしろ」

 副団長がさっとまとめて出ていった。
もしや団長め、仕組んでいたか。

「いつの間に任務扱いになった?」
「そうしないと周りに勘ぐられるだろう。
この弁当と花茶はお前の番か?」
「あぁ」
「礼を言っておいてくれ。
できればまた食べたい。
レイブの大叔父に心当たりは?」
「想像でしかないが、恐らく番の言ってたお爺ちゃんがそうだ。
もう亡くなっている。
黒竜の母親の白竜の番が兎属の獣人だったと聞いた。
黒竜も義父は兎属だと言ってた」
「····お前の番は何という環境で生活しているんだ!
というか、黒竜とも話したのか」
「言うな。
あそこにいると自分の常識が非常識に感じるくらいには規格外だ。
黒竜は1日1度は番をのぞきに来る。
俺の番は文句無しに可愛いぞ」
「惚気るな!」

 くそ、もう既にレンがたりない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

遊鷹太
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!

エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」 華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。 縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。 そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。 よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!! 「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。 ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、 「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」 と何やら焦っていて。 ……まあ細かいことはいいでしょう。 なにせ、その腕、その太もも、その背中。 最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!! 女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。 誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート! ※他サイトに投稿したものを、改稿しています。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

処理中です...