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20.侵入者~ベルグルside
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「くそったれが!
レイブ、返事をしろ!」
ワイバーンは俺が引っかけた鎖を外そうと空中で暴れまわる。
レイブは大きく暴れられる度に腹の血を撒き散らすが、何の反応もない。
頼むから大人しくしやがれ!
だが気がかりなのはそれだけではない。
真冬の寒空は殊更寒く、レイブの体力を容赦なく奪っているはずだ。
本当はすぐにでも背中の大斧を突き刺してやりたい。
が、この下は城下町。
落ちれば民を傷つけかねない。
と、不意にワイバーンが一声鳴いてどこかに向かい始める。
2時間ほど飛ぶと山が多くなってきた。
このまま行くとわが国最東端の町を抜け、魔の森に入り、侵入者として魔獣の餌食。
森を突っ切れば、国交の途絶えたワルシャマリ国に入り、最悪は捕虜となって国に迷惑をかける。
町を抜けた所で上手く落として森に入る直前で止まるしかない。
ふと魔の森に住むというグランの番が頭をよぎる。
いや、グランは侵入者ではなく、黒竜の番が森に招き入れたんだったな。
俺は左手で鎖を握り直し、右手で背中の大斧を構え、その時を待つ。
(よし、町を抜けた!)
予定通り鱗に覆われた首筋に大斧を振り下ろす。
ワイバーンがけたたましい悲鳴をあげるも、鱗が硬すぎて深く刺さらない。
寒空の中長時間鎖を握りしめていたり、顔や首から血を流しすぎたのが災いしてかいつものような力が入っていないのだろう。
「くそったれが!」
同時に魔術で風を操って羽根を切り刻むが、間に合わない。
俺は何度も大斧を振り下ろし続けるが、ワイバーンは空中を転げ周り、とうとう高度を下げながら森の上空へと突っ込んだ。
最悪の状況だがこのまま抜けるわけにもいかない!
不意に下から威力の大きな風刃がワイバーンを襲う。
レイブの精霊魔術か!
ワイバーンは一気に急降下し、大きな衝撃と共に木をなぎ倒しながら転がった。
「ぐっ、うっ、」
体中に走る鈍痛を堪えて何とか起き上がり、辺りを見回す。
レイブに声をかけたかったが、今はうめき声しか出ない。
少し先に見えたワイバーンにふらふらと近寄り、確認するが息耐えており、鼓動は確認できない。
その手に視線を移すが、レイブはいなかった。
「ぐっ、レイブ、レイブ!」
何とか叫べた。
「····ベ、ルグ、ル····」
消え入りそうな弱々しい声が微かに耳に届く。
薄暗く雪の積もる森の中、声の方向に少し歩くとレイブがうつ伏せに倒れている。
「レイブ!
しっかりしろ!
····くそったれが!」
体の痛みも忘れて駆け寄って起こし、思わず息をのむ。
腹の抉れた傷からはじゅくじゅくと血が溢れ、内臓が見えている。
これはもう、助からない。
俺は治癒術を使えないし、レイブもここまでの傷は治せない。
「····ベ、ル····わたし、は、しぬ、の、か····」
「すまない、レイブ。
すまない···」
もう何度目かの仲間の見送りだ。
俺は謝る事しかできない。
涙はもう出ないし、頭のどこかは冷静だ。
しかし、慣れるものでもない。
「タグ、を、ミリ、に····」
「もちろんだ。」
ミリと呼ばれたレイブの伴侶も番だ。
レイブ亡き後、気を狂わせるのを少しでも遅らせる為にも騎士証は必要だ。
そっと横たえ、手を握ろうとした。
その時だ····。
「ギィアァァァァァ!!!!」
ワイバーンが暴れ出した。
「死んでいたはず?!
ふざけるなよ!」
手負いになった魔獣ほど面倒なものはない。
大斧は落ちた衝撃でどこかに転がっていて手元にない。
レイブの腰の剣を抜く。
ワイバーンは血の臭いに向かって真っ直ぐこちらに突進してきた。
ダン!
目の前を何かが横切ったと思ったら、向こうの木に何かが刺さる鈍い音がして、ワイバーンが崩れ落ちた。
何が起きた?
音の方向を見れば木には大斧が突き刺さっている。
ワイバーンは、首が切断され、絶命していた。
「随分騒がしい侵入者だ。
こんな所で派手に騒ぐとは、お前達よほど死にたいか」
大斧とは逆方向から、青年の声がした。
何故か全身の毛穴が粟立ち、戦慄している自分がいる。
ゆっくりと振り向くと、全身黒づくめの黒髪に金の瞳の青年が立っていた。
レイブ、返事をしろ!」
ワイバーンは俺が引っかけた鎖を外そうと空中で暴れまわる。
レイブは大きく暴れられる度に腹の血を撒き散らすが、何の反応もない。
頼むから大人しくしやがれ!
だが気がかりなのはそれだけではない。
真冬の寒空は殊更寒く、レイブの体力を容赦なく奪っているはずだ。
本当はすぐにでも背中の大斧を突き刺してやりたい。
が、この下は城下町。
落ちれば民を傷つけかねない。
と、不意にワイバーンが一声鳴いてどこかに向かい始める。
2時間ほど飛ぶと山が多くなってきた。
このまま行くとわが国最東端の町を抜け、魔の森に入り、侵入者として魔獣の餌食。
森を突っ切れば、国交の途絶えたワルシャマリ国に入り、最悪は捕虜となって国に迷惑をかける。
町を抜けた所で上手く落として森に入る直前で止まるしかない。
ふと魔の森に住むというグランの番が頭をよぎる。
いや、グランは侵入者ではなく、黒竜の番が森に招き入れたんだったな。
俺は左手で鎖を握り直し、右手で背中の大斧を構え、その時を待つ。
(よし、町を抜けた!)
予定通り鱗に覆われた首筋に大斧を振り下ろす。
ワイバーンがけたたましい悲鳴をあげるも、鱗が硬すぎて深く刺さらない。
寒空の中長時間鎖を握りしめていたり、顔や首から血を流しすぎたのが災いしてかいつものような力が入っていないのだろう。
「くそったれが!」
同時に魔術で風を操って羽根を切り刻むが、間に合わない。
俺は何度も大斧を振り下ろし続けるが、ワイバーンは空中を転げ周り、とうとう高度を下げながら森の上空へと突っ込んだ。
最悪の状況だがこのまま抜けるわけにもいかない!
不意に下から威力の大きな風刃がワイバーンを襲う。
レイブの精霊魔術か!
ワイバーンは一気に急降下し、大きな衝撃と共に木をなぎ倒しながら転がった。
「ぐっ、うっ、」
体中に走る鈍痛を堪えて何とか起き上がり、辺りを見回す。
レイブに声をかけたかったが、今はうめき声しか出ない。
少し先に見えたワイバーンにふらふらと近寄り、確認するが息耐えており、鼓動は確認できない。
その手に視線を移すが、レイブはいなかった。
「ぐっ、レイブ、レイブ!」
何とか叫べた。
「····ベ、ルグ、ル····」
消え入りそうな弱々しい声が微かに耳に届く。
薄暗く雪の積もる森の中、声の方向に少し歩くとレイブがうつ伏せに倒れている。
「レイブ!
しっかりしろ!
····くそったれが!」
体の痛みも忘れて駆け寄って起こし、思わず息をのむ。
腹の抉れた傷からはじゅくじゅくと血が溢れ、内臓が見えている。
これはもう、助からない。
俺は治癒術を使えないし、レイブもここまでの傷は治せない。
「····ベ、ル····わたし、は、しぬ、の、か····」
「すまない、レイブ。
すまない···」
もう何度目かの仲間の見送りだ。
俺は謝る事しかできない。
涙はもう出ないし、頭のどこかは冷静だ。
しかし、慣れるものでもない。
「タグ、を、ミリ、に····」
「もちろんだ。」
ミリと呼ばれたレイブの伴侶も番だ。
レイブ亡き後、気を狂わせるのを少しでも遅らせる為にも騎士証は必要だ。
そっと横たえ、手を握ろうとした。
その時だ····。
「ギィアァァァァァ!!!!」
ワイバーンが暴れ出した。
「死んでいたはず?!
ふざけるなよ!」
手負いになった魔獣ほど面倒なものはない。
大斧は落ちた衝撃でどこかに転がっていて手元にない。
レイブの腰の剣を抜く。
ワイバーンは血の臭いに向かって真っ直ぐこちらに突進してきた。
ダン!
目の前を何かが横切ったと思ったら、向こうの木に何かが刺さる鈍い音がして、ワイバーンが崩れ落ちた。
何が起きた?
音の方向を見れば木には大斧が突き刺さっている。
ワイバーンは、首が切断され、絶命していた。
「随分騒がしい侵入者だ。
こんな所で派手に騒ぐとは、お前達よほど死にたいか」
大斧とは逆方向から、青年の声がした。
何故か全身の毛穴が粟立ち、戦慄している自分がいる。
ゆっくりと振り向くと、全身黒づくめの黒髪に金の瞳の青年が立っていた。
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