《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

文字の大きさ
20 / 210

20.侵入者~ベルグルside

しおりを挟む
「くそったれが!
レイブ、返事をしろ!」

 ワイバーンは俺が引っかけた鎖を外そうと空中で暴れまわる。
レイブは大きく暴れられる度に腹の血を撒き散らすが、何の反応もない。
頼むから大人しくしやがれ!

 だが気がかりなのはそれだけではない。
真冬の寒空は殊更寒く、レイブの体力を容赦なく奪っているはずだ。
本当はすぐにでも背中の大斧を突き刺してやりたい。
が、この下は城下町。
落ちれば民を傷つけかねない。

 と、不意にワイバーンが一声鳴いてどこかに向かい始める。

 2時間ほど飛ぶと山が多くなってきた。
このまま行くとわが国最東端の町を抜け、魔の森に入り、侵入者として魔獣の餌食。
森を突っ切れば、国交の途絶えたワルシャマリ国に入り、最悪は捕虜となって国に迷惑をかける。

 町を抜けた所で上手く落として森に入る直前で止まるしかない。

 ふと魔の森に住むというグランの番が頭をよぎる。
いや、グランは侵入者ではなく、黒竜の番が森に招き入れたんだったな。

 俺は左手で鎖を握り直し、右手で背中の大斧を構え、その時を待つ。

(よし、町を抜けた!)

 予定通り鱗に覆われた首筋に大斧を振り下ろす。
ワイバーンがけたたましい悲鳴をあげるも、鱗が硬すぎて深く刺さらない。

 寒空の中長時間鎖を握りしめていたり、顔や首から血を流しすぎたのが災いしてかいつものような力が入っていないのだろう。

「くそったれが!」

 同時に魔術で風を操って羽根を切り刻むが、間に合わない。
俺は何度も大斧を振り下ろし続けるが、ワイバーンは空中を転げ周り、とうとう高度を下げながら森の上空へと突っ込んだ。
最悪の状況だがこのまま抜けるわけにもいかない!

 不意に下から威力の大きな風刃がワイバーンを襲う。
レイブの精霊魔術か!

 ワイバーンは一気に急降下し、大きな衝撃と共に木をなぎ倒しながら転がった。

「ぐっ、うっ、」

 体中に走る鈍痛を堪えて何とか起き上がり、辺りを見回す。
レイブに声をかけたかったが、今はうめき声しか出ない。

 少し先に見えたワイバーンにふらふらと近寄り、確認するが息耐えており、鼓動は確認できない。
その手に視線を移すが、レイブはいなかった。

「ぐっ、レイブ、レイブ!」

 何とか叫べた。

「····ベ、ルグ、ル····」

 消え入りそうな弱々しい声が微かに耳に届く。
薄暗く雪の積もる森の中、声の方向に少し歩くとレイブがうつ伏せに倒れている。

「レイブ!
しっかりしろ!
····くそったれが!」

 体の痛みも忘れて駆け寄って起こし、思わず息をのむ。
腹の抉れた傷からはじゅくじゅくと血が溢れ、内臓が見えている。

 これはもう、助からない。
俺は治癒術を使えないし、レイブもここまでの傷は治せない。

「····ベ、ル····わたし、は、しぬ、の、か····」
「すまない、レイブ。
すまない···」

 もう何度目かの仲間の見送りだ。
俺は謝る事しかできない。
涙はもう出ないし、頭のどこかは冷静だ。
しかし、慣れるものでもない。

「タグ、を、ミリ、に····」
「もちろんだ。」

 ミリと呼ばれたレイブの伴侶も番だ。
レイブ亡き後、気を狂わせるのを少しでも遅らせる為にも騎士証は必要だ。
そっと横たえ、手を握ろうとした。

その時だ····。

「ギィアァァァァァ!!!!」

 ワイバーンが暴れ出した。

「死んでいたはず?!
ふざけるなよ!」

 手負いになった魔獣ほど面倒なものはない。
大斧は落ちた衝撃でどこかに転がっていて手元にない。
レイブの腰の剣を抜く。
ワイバーンは血の臭いに向かって真っ直ぐこちらに突進してきた。

 ダン!

 目の前を何かが横切ったと思ったら、向こうの木に何かが刺さる鈍い音がして、ワイバーンが崩れ落ちた。

 何が起きた?

 音の方向を見れば木には大斧が突き刺さっている。
ワイバーンは、首が切断され、絶命していた。

「随分騒がしい侵入者だ。
こんな所で派手に騒ぐとは、お前達よほど死にたいか」

 大斧とは逆方向から、青年の声がした。
何故か全身の毛穴が粟立ち、戦慄している自分がいる。

 ゆっくりと振り向くと、全身黒づくめの黒髪に金の瞳の青年が立っていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!

エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」 華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。 縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。 そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。 よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!! 「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。 ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、 「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」 と何やら焦っていて。 ……まあ細かいことはいいでしょう。 なにせ、その腕、その太もも、その背中。 最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!! 女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。 誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート! ※他サイトに投稿したものを、改稿しています。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

処理中です...