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50.脆弱な種族~ペネドゥルside
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「本当に人属とは脆弱な。
黒い髪と目に期待したが、最弱種族とは本当に厄介なものだ」
着替えていくつか仕事を片付けてからあの番の元に行けば、あの程度の事で高熱を出して意識を失った?
何とも脆弱すぎてほとほと呆れてしまう。
獣人は強靭な肉体故に人属に使えるような効きの生易しい薬など鎖国した我が国にあろうはずもない。
そもそもこの国にはもう王配以外、人属などいないのではないかと思わせるほど彼らの発見報告はないのだ。
初めて顔を見たが、その顔は青ざめてはぁはぁと荒い息をしていて随分と庇護欲をそそるものだった。
少しばかり悪い事をした気になったが、脆弱すぎる己が悪いのだ。
「ラスイード、いつ頃目覚める?」
「熱が随分と高く人属に使える薬もありませんから、このまま死ぬかもしれませんね。
服を着替えさせようと侍従達に頼んだ時には魔法で威嚇して自分で着替えたようですが、余計に体力を消耗したようです。
2度とそうならないよう念の為魔力拘束具を腕にはめました。
このまま死なせてしまえば貴方の進退にも関わるので私が面倒を見ているのです。
他の者に任せて色々な意味で危険に合わせてもいけませんから」
「確かにこの人属は獣人の欲をそそるのだろうが、死んだら死んだで仕方なかろう。
しょせん最下等種族に過ぎん」
「あなたの竜人絶対主義は否定しませんが、黒竜の番なのでは?」
「どちらにせよ黒竜が魔の森から出ぬのなら我が国には関係ない事。
逆手に取り我が国の黒竜が魔の森の為に番を迎えに来れなかったとするのも良い。
鎖国派の頑固な重鎮達を開国と侵略に賛成させる材料にしてやろう」
ラスイードは眉をひそめてため息をついたが、これがこの者の普段通りなので気にしない。
本来なら不敬極まりないが。
弟と違い昔はザガドの側近として支えていた男だ。
私とは考えが違う事も多々あるのは仕方ない。
「····ん····」
人属が目を覚ましたか。
熱のせいで潤んだ目が黒曜石のように光る。
すぐに話しかけようとしたが、ラスイードが手で牽制する。
「水を飲めますか?」
静かな声で尋ねると、ぼうっとした顔で小さく頷く。
体を起こそうとしたが、うまく力が入らないようで、ラスイードが支えてコップを口に運ぶ。
コクコクと少し飲んで再び目を閉じた。
「また気を失ったか。
まるで役にたたんな」
コップをベッド横に置いて体を戻してやったラスイードが何かを言う前に部屋を出た。
兄の伴侶といい、人属がこの国からいなくなっていった理由が良くわかる。
脆弱すぎ、それでいて獣人の欲をそそるのだ。
こちらが少し加減を誤れば簡単に死なせてしまう。
兄が番欲しさに異世界から召還したあの伴侶もこちらに来て1年せずに倒れた。
5年ほど前だったか。
せめて子でも産んでから倒れれば違ったかもしれないが、獣人の中でも竜人は妊娠率が低い。
人属が相手なら多少違うようだが、こればかりは仕方ない。
なまじこれで良かったのだ。
何故か兄はザガドに王位を譲りたがったがあの愚者は逃げ続けた。
お陰で私が王位に最も近く、兄が眠ってしまえば全て摂政である私の意のままだ。
ザガドが失踪する前に兄夫婦の周りに張った結界は忌々しいが、奴も王族の一員だけあって私にも解けない。
「ペネドゥル様、例の商会が登城しましたが、その····」
「何だ、早く言え」
執務室へ歩いていると、ラジェットが後ろから足早に追いかけてきた。
「城下でザガド様とお会いになり、そのまま連れられて登城したとの事でザガド様の宮に入りました。
謁見は予定通り明日行うようにとザガド様が直々に遣いを出されました」
「何だと!
城門の兵士達は何をしていた!」
ザガドが城に入れないよう兵士を配置していたはず!
兄夫婦が消耗して亡くなった時に結界を張りこちらの救済を妨害したとして責任を押し付け謀反として処理する為だ。
「それが、気付けばご自分の宮の客間に商人を通し、茶の支度をするよう何事もなかったかのように命じられたそうです。
ビビット商会の副会長が共におり、下手に手出しできません」
何て事だ!
よりによってビビット商会の副会長だと?!
世界で3本の指に入る商会の、各国国王達との繋がりも持つ副会長と共にいるとは。
本来なら今すぐにザガドを秘密裏に殺し、商人から花茶について聞きたいが、まだこの国の内部について知られるわけにもいかん。
明日の謁見まで待つしかない。
私は面倒事が増えていく事に焦りと苛立ちが募っていくのをジリジリと感じていた。
黒い髪と目に期待したが、最弱種族とは本当に厄介なものだ」
着替えていくつか仕事を片付けてからあの番の元に行けば、あの程度の事で高熱を出して意識を失った?
何とも脆弱すぎてほとほと呆れてしまう。
獣人は強靭な肉体故に人属に使えるような効きの生易しい薬など鎖国した我が国にあろうはずもない。
そもそもこの国にはもう王配以外、人属などいないのではないかと思わせるほど彼らの発見報告はないのだ。
初めて顔を見たが、その顔は青ざめてはぁはぁと荒い息をしていて随分と庇護欲をそそるものだった。
少しばかり悪い事をした気になったが、脆弱すぎる己が悪いのだ。
「ラスイード、いつ頃目覚める?」
「熱が随分と高く人属に使える薬もありませんから、このまま死ぬかもしれませんね。
服を着替えさせようと侍従達に頼んだ時には魔法で威嚇して自分で着替えたようですが、余計に体力を消耗したようです。
2度とそうならないよう念の為魔力拘束具を腕にはめました。
このまま死なせてしまえば貴方の進退にも関わるので私が面倒を見ているのです。
他の者に任せて色々な意味で危険に合わせてもいけませんから」
「確かにこの人属は獣人の欲をそそるのだろうが、死んだら死んだで仕方なかろう。
しょせん最下等種族に過ぎん」
「あなたの竜人絶対主義は否定しませんが、黒竜の番なのでは?」
「どちらにせよ黒竜が魔の森から出ぬのなら我が国には関係ない事。
逆手に取り我が国の黒竜が魔の森の為に番を迎えに来れなかったとするのも良い。
鎖国派の頑固な重鎮達を開国と侵略に賛成させる材料にしてやろう」
ラスイードは眉をひそめてため息をついたが、これがこの者の普段通りなので気にしない。
本来なら不敬極まりないが。
弟と違い昔はザガドの側近として支えていた男だ。
私とは考えが違う事も多々あるのは仕方ない。
「····ん····」
人属が目を覚ましたか。
熱のせいで潤んだ目が黒曜石のように光る。
すぐに話しかけようとしたが、ラスイードが手で牽制する。
「水を飲めますか?」
静かな声で尋ねると、ぼうっとした顔で小さく頷く。
体を起こそうとしたが、うまく力が入らないようで、ラスイードが支えてコップを口に運ぶ。
コクコクと少し飲んで再び目を閉じた。
「また気を失ったか。
まるで役にたたんな」
コップをベッド横に置いて体を戻してやったラスイードが何かを言う前に部屋を出た。
兄の伴侶といい、人属がこの国からいなくなっていった理由が良くわかる。
脆弱すぎ、それでいて獣人の欲をそそるのだ。
こちらが少し加減を誤れば簡単に死なせてしまう。
兄が番欲しさに異世界から召還したあの伴侶もこちらに来て1年せずに倒れた。
5年ほど前だったか。
せめて子でも産んでから倒れれば違ったかもしれないが、獣人の中でも竜人は妊娠率が低い。
人属が相手なら多少違うようだが、こればかりは仕方ない。
なまじこれで良かったのだ。
何故か兄はザガドに王位を譲りたがったがあの愚者は逃げ続けた。
お陰で私が王位に最も近く、兄が眠ってしまえば全て摂政である私の意のままだ。
ザガドが失踪する前に兄夫婦の周りに張った結界は忌々しいが、奴も王族の一員だけあって私にも解けない。
「ペネドゥル様、例の商会が登城しましたが、その····」
「何だ、早く言え」
執務室へ歩いていると、ラジェットが後ろから足早に追いかけてきた。
「城下でザガド様とお会いになり、そのまま連れられて登城したとの事でザガド様の宮に入りました。
謁見は予定通り明日行うようにとザガド様が直々に遣いを出されました」
「何だと!
城門の兵士達は何をしていた!」
ザガドが城に入れないよう兵士を配置していたはず!
兄夫婦が消耗して亡くなった時に結界を張りこちらの救済を妨害したとして責任を押し付け謀反として処理する為だ。
「それが、気付けばご自分の宮の客間に商人を通し、茶の支度をするよう何事もなかったかのように命じられたそうです。
ビビット商会の副会長が共におり、下手に手出しできません」
何て事だ!
よりによってビビット商会の副会長だと?!
世界で3本の指に入る商会の、各国国王達との繋がりも持つ副会長と共にいるとは。
本来なら今すぐにザガドを秘密裏に殺し、商人から花茶について聞きたいが、まだこの国の内部について知られるわけにもいかん。
明日の謁見まで待つしかない。
私は面倒事が増えていく事に焦りと苛立ちが募っていくのをジリジリと感じていた。
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