《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

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70.闇の中の憤怒~ラジェットside

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「ペネドゥル様、ラジェットです」

 熊と兎を伴ってあの脆弱な人属を不遜な虎の元へ連れて行く途中、双子の兄のラスイードに捕まった。
どうやらザガドが置いてきた残りの商人達の入国許可で問題が起きたらしく、警護を担当する騎士を派遣させろというものだった。
ただでさえ最近は騎士の数が少なく使えない騎士ばかりなのだ。
これ以上城の騎士を派遣させられるはずもない。

 俺はこの頭の固い兄とは反りが合わない。
しかし他の者のように力でねじ伏せるには俺達の力は拮抗している。
剣術や体術はそこそこだが魔術に秀で、慎重な性格の兄。
魔術はそこそこだが剣術や体術に秀で、豪気な俺。
全てが真逆では合うはずもない。

 ここ最近では珍しくない口論をしているうちに熊と兎は人属を連れて居なくなっていた。

 互いに妥協点を探っていれば最近作り置きしている兵器の話になり、結局口論が収まらずに兄が出ていった。
既に深夜だ。
ペネドゥル様は就寝されてしまっただろう。

 それにしてもペネドゥル様に反抗するだけでなく邪魔すらする者達、戦力としては乏しい者達を使える兵器にして何が悪いのか。
むしろ本来ならできなかたたはずの貢献ができるのだからありがたく思うべきだろうに。

 そういえばあの人属はザガドの厨房で餌付けされていたところをザガドが発見して連れて行ったと部下から聞いている。
確かあそこの料理長はザガドの元側近だったが、こんな所でも邪魔をしてくるとはな。

 そうだ、あの料理長はザガドの近衛だったのだ。
有効利用すればいい。

 まずはペネドゥル様に報告してからだとまだ明け方ではあるが、いつも通りに主の部屋へ出向く。
元よりペネドゥル様は明け方に沐浴をする習慣があり朝の沐浴は色目を使いがちなフィルメの侍従ではなく俺の方が安心される為、手伝いがてら報告をしに主の部屋の扉を叩いた。

「ペネドゥル様?」

 いつもより少し遅くなったせいでお怒りなのだろうか。

 断りを入れてそっと扉を開けるも気配がない。
奥のかけ流しの浴室に行ってみたが、使用した後のようだ。
どこに行かれたのか。

 ふとあの人属が頭をよぎる。

 アレを孕み腹にできるか少なからず興味を持たれていたが、見に行かれたか?
ペネドゥル様の今日の予定は午前の早い時間しか空いていなかったはずだ。

 俺はあの人属のいる部屋へ急ぎ、扉を開けた。
主が取り込み中の可能性も考えたが、たかが下等な人属との事で咎めはしないだろう。
もちろんそうであるならすぐに部屋を出るが。

 すぐにベッドの向こうに立つ人属が目についた。
何かを見下ろしているようだが、その冷え冷えとした目には一切の感情が窺えない。
少し背中が冷えた気がするが、そんな自分に一瞬驚く。

 下等生物に何を気後れしているんだ。

「お前、何をしている?」

 苛立ちながら語気を強め、獣気を纏って威圧する。

「いきなり人の部屋に入ってきて、随分と失礼だな。
この主にしてこの従ありか。
程度が知れる」

 ため息混じりに不遜な物言いをする。
威圧が効いた様子がない。

「貴様!」

 躾の為に殴ろうと一気に距離を詰めて腕を振り上げ、あり得ない光景が目に入る。

 人属の足元に藍色の髪をした主が俯せで倒れていた。

「主に何をした!」

 瞬間頭に血が上り、人属を力いっぱいに殴り付けた。

 いや、殴り付けたはずが手応えがなく、矮小な体が陽炎のように揺れて、消えた。

 途端に周囲が黒く塗り潰され、主の姿も見えない程、闇に支配された空間が広がった。

 一瞬だが微かに何かを叫ぶ聞いた事がある声が聞こえた気がした。

「ごめんね、我慢できない駄獅子と駄虎が入ってきてすぐに来られなかった。」

 しばらくすると暗闇にぼんやりとあの小賢しい人属が浮かび上がる。
色白なのが周りの暗闇のせいで余計際立ち、この世の者とは思えない儚さを助長しているかのように感じた。

「ふふ、君のヘタレな主と違って君はすぐに折れないでね。
王族だと偉そぶるならもう少し根性見せると思ったのに、期待はずれもいいとこだった。
君は私が望むレベルになってくれると嬉しいな」

 ふわりと微笑むも、口にする言葉は己の主を愚弄していて凶悪だ。
ギリリと歯軋りして腰の愛刀の柄を握り、一瞬で間合いを詰めて瞬殺する。
矮小な体つきの人属など一刀両断するのに労力はいらない。

「貴様のような矮小下劣な下等動物が主を愚弄するなど笑止千万。
死を持って詫びろ」

 真っ二つになって崩れ落ちた体からは卑しく汚らわしい血が足元に流れてくる。
嫌悪しか湧かない。

「ふん、貴様などペネドゥル様の有り難い孕み腹になる価値すらもない」

 踵を反してその場を後にする。

 しかし眼前の闇は未だに晴れない。
どういう事だ。

 しばらく歩き続けるがひたすらに闇が続くだけだ。

 もしや術者であるあの汚らわしい動物がまだ生きている?

 もう一度元来た闇へと足を進める。
しかしどれほど歩いてもあの汚らわしい死体に辿り着かない。

 何かがおかしい。

 明かりを灯そうとするも、魔法が使えない。
獣気を体に纏わせてみようとしたが、うまく気が練れない。

 やはり、何かがおかしい。
あの人属の体を両断した時の手応えは確かにあった。
しかし····。

ーーーー

 あれから何年、いや、何十年経ったのか。
時間の感覚などとうに失った。
初めはとにかく叫んだ。
しかしただ闇が広がるだけで何の反応もない。

 あの矮小な人属が。
まさかとは思うが我が主であるペネドゥル様にも何かしたのではと思うと気が気でない。

「おのれ、卑しい人属め。
何年、何十年経とうと許さん!」

 失われぬ怒りがこみ上げる。
覚えていろ!
もしも忠誠を誓ったペネドゥル様に何かあれば、絶対に殺してやる!
その時はもちろんだだ殺しはしない!
死なせてくれと懇願するほどの絶望を味あわせてやる!
憎い!
憎らしい!
覚えていろ!

(この世界の住人にしてはまぁまぁか)

 そんな声が聞こえた気がした。
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