《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

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75.坊主じゃない坊主~ジェロムside

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『ねえ、君』

 不意に坊主の声が聞こえた気がして顔を上げる。

 ここはどこだ?

 周りを見回せば、辺り一面がただ光に照らされているだけだ。
こんな場所は知らねえ。

 何でこんな何もねえ場所につっ立ってんだ?

 確か夜中に本宮の調理場で朝食の下ごしらえした後、ザガド様の宮の調理場でも下ごしらえしたんだったな。
一緒にできれば楽だが、あの嫌味な王弟は絶対に許さなねえ。
全く陰険な奴だ。

 思ったより早く終わったから····そうだ、ちゃんと寝起きの一杯も用意して仮眠してたんだった。

 てことは、夢か?

「ねぇ、君。
いつまでもそこにいると捕まって酷い目に合うよ」

 今度はハッキリと声が聞こえて振り返る。

 思った通り坊主がいた。
だが俺の知る柔らかな雰囲気はねえな。
優しげな顔立ちは変わらねえのに、その目はどこか冷え冷えとしていやがる。

「坊主は誰だ?」

 大方俺は夢を見ているんだろう。
こいつはあの坊主じゃねえ。
敵意は無さそうだが俺に興味もねえんだろう。
しっかし今日の夢は随分と現実味があるんだな。

「····へぇ」

 目の前の坊主は少し目を見開いた後、ほんの少しだけ微笑んだ。

「最初から私がレンと別人って認識してるんだ?」

 どうやら少しは俺に興味を持ってくれたみたいだが、何が良かったんだか検討もつかねえぞ。

「まぁ夢だしな。
坊主に似た何かなんだろ」

 はっきり断言する。

 坊主はキョトンとした顔をした後、くすくす笑う。
何が面白いのかわからねぇが、そういう顔してると本物の坊主っぽいな。

「レンが君に懐いたの、ちょっとわかるよ」
「そうか?
坊主とは知り合ったばっかだし、あいつは誰にでもすぐ懐きそうだけどな」
「本心はそうでもないよ。
長い生の中で動物に威嚇や攻撃はされてもまともに触らせて貰えた事が無かったから、ケモミミ関連が極端に好きになっただけで気を許してるわけじゃない。
ねえ、これから起こる状況が一旦落ち着いたらまたレンにアイス作って食べさせてあげてくれない?」

 ケモミミって何だ?
長い生って、坊主は人属だから見た目通りの10才いかないくらいなんじゃねぇのか?

「ん?
何か起こるのか?」
「うん、すぐに事態は変わっていく。
君もただでは済まなくなるけど、私が君に干渉した事で少なからずマシにはなる」
「····そうか。
もしそうなら、俺も覚悟は決めねぇとな」

 まだ消化しきれねぇ感情はある。
だけどやっと覚悟を決めて戻ってきたザガド様を今度こそ支えたい。

 俺はニカッと笑って目の前の坊主の頭をわしゃわしゃと撫でてやる。

「え、ちょっ····」
「ありがとな。
アイスは任せろ。
坊主は無理せずにちゃんと休めよ!」

 こっちの坊主は多分こんな事され慣れてねぇんだろうな。
慌ててちっこい両手で撫でてた俺の片腕を掴んでペイッと投げ離す。
俺も抵抗せずに力を抜いて従ってやる。

 坊主はぐしゃぐしゃになった髪を軽く整えながら頬を膨らませて軽く睨んできたけど、元から青白かった顔がほんの少し赤くなってら。
こういう反応も可愛いじゃねぇか。
さっきまでの少し冷たい印象がなりをひそめたな。

「····もう!
子供扱いしないでくれるかな。
そんな事より起きて自分で用意してた水をちゃんと飲んだら、客室の人達とすぐに行動した方が····」

 坊主が言い終わらないうちに辺りが更に明るくなり始め、目を閉じて顔を覆った所で目が覚めた。

 随分現実味のある夢だったな。
しかしただの夢とも思えない。

 俺は目の前のテーブルに用意してあった水を一気にあおる。
喉が乾いていたからか、いつもより甘く感じた。

 夢の内容を反芻しつつ厨房の流し台に空のコップを置いて、しばし考える。
それから風を飛ばし、あの騒がしい3人には念の為城の外れの寮から出てラスイードの屋敷に行かせた。
あいつらには急な使いだと言ったが、まぁラスイードの番が良いように対処すんだろ。

 ラスイードにも風で連絡しようとしたが、どういうわけか連絡がつかなかった。
風の連絡は相手が意図的に遮断しない限り連絡がつかないなんて事は起こらない。

 何が起こった?
どうしようもなく胸騒ぎを覚えながら坊主の助言に従ってこの宮の客室に急いだ。
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