《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

文字の大きさ
85 / 210

85.気が抜ける~ナルバドside

しおりを挟む
「バドさん、起きて欲しいっす!」
「ペペ、もっと静かにノックしろ
夕飯の支度が出来たんで、今日は早めにしませませんか」

 ドンドンと元気良く自室のドアを叩く音に目を覚ます。
この声はペペとダルシンだな。

 そう言えば結局あの黒髪の子供にはあれから1度も会ってなかったけど、死んでないよな?
黒竜が殺りに来ないよな!?

 離れを出たらそこで元気にノックしてる元部下に風で呼び出されるし、あの後は滅茶苦茶胃が痛くなったから結局自室で胃薬飲んで寝たんだったよ。

 窓の外を見るともう日が落ちかけてる····ヤバイ、寝すぎたかも。
あの3人いると本当に気が抜けてしまう。

 実は刻一刻と死の満月が近づくにつれて気が張りつめていってた。
ベッド脇には常に愛刀を置くようになった。
でも肝心のラスには、実は帰って来ないのを言い訳にして伝えてないんだ。
自分の番で惚れ抜いてる男に言える訳がない。
苦楽を共にしたお前の幼馴染がもう直ぐ完全な廃人になって死ぬか、場合によっては殺すなんてさ。

 屋敷の家人達も俺が近衛から引き抜いた奴らばっかりだから俺の性格わかってるんだろうな。
多分あの3人を臨時で俺付きの家人やるように仕向けたんだろう。
主にデリカシーなんか皆無のマイペースなペペに。

「バドさーん、新作料理っすよ!
うまいっすよ!」
「ペペ、だから静かにだな····」

 ドアの前で押し問答を始めた2人に苦笑しつつ、このまま今日は自室には戻らないから愛刀を腰から下げる。
近衛時代を思い出して気持ちが解れるのを感じながらドアを開け、3人で歩き始める。

「それで、あの子の様子はどうなんだ?」
「おっちゃんも人属用の薬は持ってなかったみたいっす。
とりあえず今はダルシンが定期的に氷魔法で体を冷やしてるっす」
「モンテが氷の塊を砕いて口に入れてるから水分補給だけは出来てるはずですが、相変わらず眠ったままです」

 え、さすがにちょっと寝すぎじゃない?
マジで死にかけてない、それ····。

「····まずはその子の様子を見ようか」
「えー、料理冷めるっすよ」
「ペペ、レンの状態はおじさんも心配いらないって言ってたけど、ここまで眠り続けるのは流石に心配にもなるだろう。
人属の子供なんかこの国にはもういないって言われるくらい珍しいし、おじさんだって大人以外は診た事ないんだから」

 え、おやっさん人属の子供診た事無かったんだ!?
よく考えたら鎖国して長いもんな。
大人の人属だって竜人の番が数名こっそり山奥とかで匿ってるくらいだし、子供なんか滅多にいないのも当然か。
ダルシンの言葉を聞いてちょっと急ぐ。

 やや慌て気味であの子がいるはずの部屋にノックもせずに入れば、モンテもちょっとびっくりしていた。

「バドさん、どうしました?」
「いや、ちょっとその子が気になってさ」

 浅くて少し早めの呼吸を繰り返しながらも大人しく眠っているらしい黒髪の少年の顔を改めて目にする。
随分整った顔立ちだったんだな。
見た感じ10才いかないくらいで明らかに非力そうだ。
こんな子供が人気のない隠し通路で寝転がってたとか、あのクソ虫達に何されたんだ。
まさかこんな子供に何かしら危害加えようとかは····いや、でもあのクソ虫もバカも竜人至上主義で最弱種の人属の人権なんかあり得ないって陛下の伴侶に嫌味言ってた連中の事だから····黒、だし、流石に孕み腹とまでは····でも顔が整いすぎてて庇護欲そそられまくり····。

「うん、城に返却するのはやっぱり無しだわ、コレ」
「え!
そんな事考えてたっすか!?
ジェロムさん以外に返すのはダメっす!」

 ペペよ、だからしないって。
ちょこっとそういうの考えてただけだろ。
何で他の2人もそんな引いた顔で俺を見るんだ!?

「レン、最初手枷つけられて熱ももっと高くて大変な中で逃げてたんです。
僕ちゃんと明日にはジェロムさんの所に連れていくし、今夜は邪魔にならないようにレンの事守るから、追い出さないであげて下さい」

 手枷!?
つうか、だからそんな事しないっつうに!

「いや、だからほとぼり冷めるまではここにいていいって。
モンテも目を潤ませるな、変な誤解に拍車をかけるな」
「では、しばらくここで預かってもらっても?」
「いいっつってるだろう!」
「良かったっす!
さすがバドさんっす!」

 ダルシンもペペも俺の事どう思ってたんだよ!
はあ、マジで色々脱力するわ。

「とりあえずその子は今のところこのままモンテが面倒見てろ。
ほら、俺達は飯が冷めないうちに行くぞ」
「は!
そうっす、新作料理っす!
ほら、行くっすよ!」
「おい、押すな!
モンテ、後でこっちの部屋に飯運ばせるからお前も食えよ」

 ペペの様子に苦笑しながら頷くモンテを残して今度こそ食事だ。

 そして俺は過去最大にコイツらの料理を褒めた。

「トンカツ!?
チキンナンバン!?
何だ、コレ!?
めっちゃうまい!!
え、全部あの子の創作料理!?
コレ絶対うちで雇いたいヤツじゃんか!
とりあえずこの料理もソースもうちの料理人に絶対教えといて!!」

 滅茶苦茶がっついた。
今日が今日とて今日の日だからこそ量が少なめだけれども!
何ならペペはもちろん、ダルシンとも初めて飯の奪い合いなんてやったけれども!

「いいだろう、お前ら自分で作れるんだから!
ちょっとは遠慮しろ!!」

 と、叫んだ瞬間だった。
けたたましい爆発音が離れの方から上がったのは。

 やっぱりか。
脳裏に蘇るのはあの冬月の満月の夜の惨状だ。

 2人に目配せして、最後のトンカツ一切れをさっと奪って口に放り込んでわき目も振らず俺は走る。
後ろの恨めし気な2つの視線は無視だ、無視。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

遊鷹太
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!

エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」 華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。 縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。 そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。 よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!! 「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。 ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、 「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」 と何やら焦っていて。 ……まあ細かいことはいいでしょう。 なにせ、その腕、その太もも、その背中。 最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!! 女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。 誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート! ※他サイトに投稿したものを、改稿しています。

目覚めたら魔法の国で、令嬢の中の人でした

エス
恋愛
転生JK×イケメン公爵様の異世界スローラブ 女子高生・高野みつきは、ある日突然、異世界のお嬢様シャルロットになっていた。 過保護すぎる伯爵パパに泣かれ、無愛想なイケメン公爵レオンといきなりお見合いさせられ……あれよあれよとレオンの婚約者に。 公爵家のクセ強ファミリーに囲まれて、能天気王太子リオに振り回されながらも、みつきは少しずつ異世界での居場所を見つけていく。 けれど心の奥では、「本当にシャルロットとして生きていいのか」と悩む日々。そんな彼女の夢に現れた“本物のシャルロット”が、みつきに大切なメッセージを託す──。 これは、異世界でシャルロットとして生きることを託された1人の少女の、葛藤と成長の物語。 イケメン公爵様とのラブも……気づけばちゃんと育ってます(たぶん) ※他サイトに投稿していたものを、改稿しています。 ※他サイトにも投稿しています。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

処理中です...