《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

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86.あの日の再来、いや、それ以上~ナルバドside

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 後ろからの恨めしげな視線を無視した俺は敷地を一気に駆け、すぐに地下へと続く石畳だった場所へ辿り着いた。
飯の恨みは怖い?
そんなの知らねえ。
2人も引き離されることなくついて来ているのが背中に刺さる視線で把握している。
しかしそれは些細な事でしかなく、今、俺は目の前の光景にこそため息を吐く。

 思った通り、あの冬月の満月の再来、いや、それ以上かよ。

 ラスの強化魔術をかけた建物は地下に向かって圧縮されたように地面ごと抉れている。
1人は重力操作に長けた魔法を使うから、原因は間違いなくそいつだ。
相変わらずどんな威力してんだよ。
自分ごと潰すつもりだったのか?

 周りは戦闘向きの肉食系獣人が囲んで固唾を飲んでいる。
あの日を知る俺は次の行動を予測して魔法の得意な家人に指令を送る。

「障壁部隊は穴を囲んで各自協力して魔法障壁を張れ!
来るぞ!」

 流石元近衛達だ。
すでに魔法を構築させていたのか一瞬で穴を囲む障壁が出来上がり、次に起こる爆風を防いだ。

 相手は体もぼろぼろな2人だが、あの晩のように破壊衝動に駆られて痛みなんか超越してるに決まってる。
それに加えて仮にも王族の護衛まで務めた竜人達だ。
強敵となったのは間違いない。

 対してこっちは前線から引退した元近衛ばかりで何人かはそれなりに年も取ってる。
しかもこの家に竜人はまだまだ未熟な現在料理人のダルシンしかいない。
一晩もてば俺達の勝ちだが、分が悪過ぎるのは間違いない。

 不意に影が突っ込んで来る。
すぐさま愛刀を抜いて突き出された拳を横に弾く。

 って、腕に鱗生やしてんじゃん!

 2人は薄いが王族の血筋ではある。
が、竜化までは出来ないんじゃなかったのかよ!

 後ろに殺気を感じて横に飛ぼうとするが、更に鱗の生えた手が伸びて刃を掴まれる。
身を捻って小さく宙返りしながら回転を加えて手の平を抉って距離を取る。

 その間に後ろからの殺気の主は獣化したペペが抑え込む。
白灰色のデカイ狼が喉元に食らいつこうとした瞬間、蹴りが腹に打ち込まれてぶっ飛ぶ。
が、ダルシンがペペをキャッチして敵に氷塊を打ち込む。
こちらも少し距離を開けて対峙しつつ、降ろされたペペは足元をふらつかせる。

 おいおい、あっちも鱗生やしてるし!
剥き出しの脛に黒ずんだ鱗が見える。
月花の麻薬に侵された竜人怖すぎるだろ!
獣化してなかったら内臓が破裂してたんじゃないだろうか。

「「グギャアアアア!!!!」」

 突然耳をつんざく咆哮に体を強張らせる。

 ぼろぼろの衣服の隙間から見える素肌にはまばらに鱗が生え、痩せ細った筋肉が全盛期の頃のように盛り上がる。
と、不意に目の前の2人の姿が揺らぐ。
その瞬間、四方から圧縮されるかのような感覚と共に地面になぎ倒されそうになる。
辛うじて片膝を着き、愛刀を地面に刺して倒れるのは堪えたが、まともに動けない。
他の奴らは····あ、ヤバイ。
広範囲の加重力魔法だ、コレ。
俺とペペとダルシン以外は全員倒れてるじゃん。
ペペは獣化してるせいか四足でなんとか踏ん張ってるが、動くのは難しそうだ。

 にしてもどんだけ馬鹿力なんだよ!
この魔法は発動させてる場所に入り込めば敵味方関係なく同等に加重される。
あいつら2人共地面に投げ出された剣を手にして滅茶苦茶普通に近づいて来てるんだけど!
足を地面にめり込ませながらこっちに来てるんだけど!?
そういや魔力拘束具の手枷って今更だけどどうしたんだよ?!
大方力ずくで取ったんだろうけど、普通は無理だからな?!

 俺は地面に刺した愛刀に両手を添えて、魔力を集める。
チラリとダルシンに目配せすると、片膝と片方の拳をついて耐えていたが、ゆっくりともう片方の膝を着き、四つん這いのような姿勢で魔力を高める。

 2人の竜人が俺とペペに剣を構えて一瞬のを作る。

 今だ!

「ダルシン!」

 俺の合図で2人の足元に薄氷が現れ、俺を中心に雷撃が走る。

「ぐぁ!」
「ギャ!」

 連中の足元の薄氷から体を伝い剣へと稲妻が走った。
重力から解放され、体が軽くなる。
やったか!!

 しかし再び背中に冷りと悪寒が走り、反射的に横へ飛び退きながら本能で身を捻って愛刀を柄と刀身に手を添えて斬撃を防いだ。

「ギャン!」
「ガハ!」

 しかしペペはもう1人に体を切られ、駆け寄ろうとしたダルシンは蹴りで沈められる。

「くそ!
逃げ····」

 2人に逃げるように指示を出そうとした瞬間、剣を受け止めていた愛刀が軽くなり、ペペとダルシンが同時にそれぞれの竜人に蹴り飛ばされ、鈍い音と共に壁にぶち当たり、地面に沈んだ。
そうして破壊神のごとく獣気と殺気を体から発しながら2人の元護衛達は俺の方へと向き直った。

(あ、これ死ぬやつだわ)

 俺は密かに死を覚悟した。
最期にラスともう1回会いたかったな、なんて柄にもなく笑ってしまった。
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