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84.アイスからの胃薬~ナルバドside
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「バドさん、できたっす!」
ペペが満面の笑みで白い氷菓子を渡してきた。
場所は最初にコイツと会った部屋なんだけど入った途端に目の前にこの器突きつけてくるのは危ないからやめなさい。
受け取りつつ1人掛けのソファに腰掛ける。
ふむ、香りは魔牛の乳の香りだな。
一口すくって口に含む。
「え、何だこれ?!
溶けた!
滅茶苦茶うまいじゃないか!」
更に一口、もう一口と口に運ぶが、口溶けも良い。
「俺達も昨日レンに教えて貰ったっす!
ジェロムさんもうまいって言ってたっすよ!」
本当に嬉しそうだが、ペペの手元を見てギョッとする。
ちょっと待て。
「ペペ、お前の器、サラダボールじゃないか。
俺にももっとよこせ!」
俺のはデザート用の小さい器だが、あいつのは1人用とはいえサラダボールだ。
しかもてんこ盛り。
そしてスプーンは普通サイズ。
「えー!
バドさん甘いのそこまで好きじゃないのにっすかー!」
「うるさい、これは別腹だ!」
ペペのボールから奪って器にこんもり盛っていく。
「····ああ、俺のがぁ」
俺の知る中で断トツの悲壮感に満ちた声なんか無視だ。
そうして再び口に運んでほぅっと息を吐いたところでモンテが入ってきた。
「ダルシンと交代しました。
ペペ、僕にもちょうだい」
そういうと保冷箱から俺と同じサイズの器を取る。
ペペのサラダボールをチラッと見てにこっと笑って一言。
「ペペ、足して」
「うぐっ」
何かいつもより迫力あるな。
ペペは妙なうめき声をあげつつ、サラダボールからいくらかよそうとキョロキョロと周りを見回して、残りをハグハグと一気に口に入れていく。
「····ペペ」
「····心配しなくてももう誰も取らないから普通に食え。
ほら、キーンてしちゃうからゆっくり食え」
モンテの残念な何かを見る視線と声に共感しつつ、声をかけてやる。
が、時すでに遅しだったようで「うぅ····」と頭を抱えて唸った。
「「····」」
きっと俺はモンテと同じ視線をペペに向けたに違いない。
「ダルシンはあの子の所にいるのか?」
少し前まで一緒にいたであろうモンテに聞くと頷いた。
「はい、交代しました。
少し熱が上がってきたみたいなんで、ダルシンが氷魔法で冷やしてます。
後で食事を用意してあげたいんですが、ここの厨房使ってかまいませんか?」
「ああ、そうしてやってくれ。
人属用の薬が取り寄せられるか臨時で門番させてるおやっさんに聞いとけ。
あとアイスってのうまかったよ。」
「ありがとうございます。
パン粥は僕が用意するから、アイスはペペとダルシンで用意してあげて。
今度はもう少し多く作っておこうね。
レンは僕がなるべくついておくようにするから、夜に備えて体力は温存しておいてよ」
「アイスならいつでもこいっすよ!
夜って、何かあるっすか?」
「うん、後でダルシンに地下の事聞いておいて」
「わかったっす!」
多分交代の時にダルシンに地下牢の2人の事聞いたんだろうな。
能天気なペペと違ってモンテはどことなく表情が暗い。
それも仕方ないか。
モンテはフィルメで体格は騎士の中でも少し小柄だ。
あの地下の2人は護衛だった事もあって隊長より護身術に長けていたから隊長の幼馴染みだった縁で時々モンテに護身術を教えてくれていたんだ。
思う所はあるに決まっている。
ダルシンもいつか隊長の隣に立つのを目標にしてたし魔術も使えて将来有望だったから、暇を見つけてはあの2人も何かと稽古をつけてたんだよな。
ペペは隊長と直接対決が好きだったから暇な時は隊長に絡んでていつも3人でつるむ割に元護衛の2人とはそんなに関わり無かったけどさ。
直感型だからあんまり深く考えない分攻撃は素直で読みやすいんだけど、実は天性のカンみたいなのがあって実践では結構強い。
今はダルシンの方が僅差で強いが、経験さえ積めばペペも可能性はある。
····おっと、いかん、いかん。
コイツら料理人に転職したんだった。
とはいっても今夜はひと波乱ありそうな満月の晩だ。
いくら元近衛だった奴らがうちに何人か働いてるとはいっても、隊長と互角だった竜人の元護衛で今は月下の中毒者だからな。
戦力は確保しておくに越したことはない。
あの中毒者は冬月の満月と人生で最期の満月の時に大暴れしやすい。
すでにその兆候が出ている上にラスとは未だに連絡がつかないし、弱った子供の人属がいる以上は安全には配慮しておきたい。
下手したら今晩乗り切っても黒竜に殺られる。
つうか、そんな事になったらこの国が滅亡すんじゃないか····う、考えてたら胃が痛くなってきた。
「とりあえず厨房は好きにしていい。
俺はしばらく仮眠を取っておくから、あの子の面倒はちゃんと見ろよ」
「はい」
「了解っす」
よし、これでしばらく自室でひきこもれる。
そうだ、胃薬飲もう。
ペペが満面の笑みで白い氷菓子を渡してきた。
場所は最初にコイツと会った部屋なんだけど入った途端に目の前にこの器突きつけてくるのは危ないからやめなさい。
受け取りつつ1人掛けのソファに腰掛ける。
ふむ、香りは魔牛の乳の香りだな。
一口すくって口に含む。
「え、何だこれ?!
溶けた!
滅茶苦茶うまいじゃないか!」
更に一口、もう一口と口に運ぶが、口溶けも良い。
「俺達も昨日レンに教えて貰ったっす!
ジェロムさんもうまいって言ってたっすよ!」
本当に嬉しそうだが、ペペの手元を見てギョッとする。
ちょっと待て。
「ペペ、お前の器、サラダボールじゃないか。
俺にももっとよこせ!」
俺のはデザート用の小さい器だが、あいつのは1人用とはいえサラダボールだ。
しかもてんこ盛り。
そしてスプーンは普通サイズ。
「えー!
バドさん甘いのそこまで好きじゃないのにっすかー!」
「うるさい、これは別腹だ!」
ペペのボールから奪って器にこんもり盛っていく。
「····ああ、俺のがぁ」
俺の知る中で断トツの悲壮感に満ちた声なんか無視だ。
そうして再び口に運んでほぅっと息を吐いたところでモンテが入ってきた。
「ダルシンと交代しました。
ペペ、僕にもちょうだい」
そういうと保冷箱から俺と同じサイズの器を取る。
ペペのサラダボールをチラッと見てにこっと笑って一言。
「ペペ、足して」
「うぐっ」
何かいつもより迫力あるな。
ペペは妙なうめき声をあげつつ、サラダボールからいくらかよそうとキョロキョロと周りを見回して、残りをハグハグと一気に口に入れていく。
「····ペペ」
「····心配しなくてももう誰も取らないから普通に食え。
ほら、キーンてしちゃうからゆっくり食え」
モンテの残念な何かを見る視線と声に共感しつつ、声をかけてやる。
が、時すでに遅しだったようで「うぅ····」と頭を抱えて唸った。
「「····」」
きっと俺はモンテと同じ視線をペペに向けたに違いない。
「ダルシンはあの子の所にいるのか?」
少し前まで一緒にいたであろうモンテに聞くと頷いた。
「はい、交代しました。
少し熱が上がってきたみたいなんで、ダルシンが氷魔法で冷やしてます。
後で食事を用意してあげたいんですが、ここの厨房使ってかまいませんか?」
「ああ、そうしてやってくれ。
人属用の薬が取り寄せられるか臨時で門番させてるおやっさんに聞いとけ。
あとアイスってのうまかったよ。」
「ありがとうございます。
パン粥は僕が用意するから、アイスはペペとダルシンで用意してあげて。
今度はもう少し多く作っておこうね。
レンは僕がなるべくついておくようにするから、夜に備えて体力は温存しておいてよ」
「アイスならいつでもこいっすよ!
夜って、何かあるっすか?」
「うん、後でダルシンに地下の事聞いておいて」
「わかったっす!」
多分交代の時にダルシンに地下牢の2人の事聞いたんだろうな。
能天気なペペと違ってモンテはどことなく表情が暗い。
それも仕方ないか。
モンテはフィルメで体格は騎士の中でも少し小柄だ。
あの地下の2人は護衛だった事もあって隊長より護身術に長けていたから隊長の幼馴染みだった縁で時々モンテに護身術を教えてくれていたんだ。
思う所はあるに決まっている。
ダルシンもいつか隊長の隣に立つのを目標にしてたし魔術も使えて将来有望だったから、暇を見つけてはあの2人も何かと稽古をつけてたんだよな。
ペペは隊長と直接対決が好きだったから暇な時は隊長に絡んでていつも3人でつるむ割に元護衛の2人とはそんなに関わり無かったけどさ。
直感型だからあんまり深く考えない分攻撃は素直で読みやすいんだけど、実は天性のカンみたいなのがあって実践では結構強い。
今はダルシンの方が僅差で強いが、経験さえ積めばペペも可能性はある。
····おっと、いかん、いかん。
コイツら料理人に転職したんだった。
とはいっても今夜はひと波乱ありそうな満月の晩だ。
いくら元近衛だった奴らがうちに何人か働いてるとはいっても、隊長と互角だった竜人の元護衛で今は月下の中毒者だからな。
戦力は確保しておくに越したことはない。
あの中毒者は冬月の満月と人生で最期の満月の時に大暴れしやすい。
すでにその兆候が出ている上にラスとは未だに連絡がつかないし、弱った子供の人属がいる以上は安全には配慮しておきたい。
下手したら今晩乗り切っても黒竜に殺られる。
つうか、そんな事になったらこの国が滅亡すんじゃないか····う、考えてたら胃が痛くなってきた。
「とりあえず厨房は好きにしていい。
俺はしばらく仮眠を取っておくから、あの子の面倒はちゃんと見ろよ」
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