《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

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117.ザガドの竜化

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「ぐっ、ペネドゥル様!」

 これまでの鬱憤とレンを貶めるような言動ばかり取りやがったこいつへの制裁を兼ねて向かってくる度に殴り飛ばし、蹴り飛ばしていたが、流石に主が捕らえられるとそちらへ走り寄ろうとする。

 しかし俺はすぐに追いつき、首根っこを掴んで引きずり倒しては再び殴り飛ばし、蹴り倒す。
時に残虐性を発揮する獅子属である俺の番に手を出したんだ。
覚悟しろよ。

 だが状況が変わる。

 既に意識を失った王弟も流石にあのままジェロムが殴り続ければ死ぬなと思い始めたあたりでザガドが止めに入った。
トビもラスイードも駆け寄り、これで安心して自分の獲物に集中できると思った矢先だ。

「うわ!」

 まずザガドが振り飛ばさた。
ジェロムが一足飛びでペネドゥルに詰め寄り、殴りかかろうとしたのをトビが両腕をクロスして拳を受けた。
するとその腕に鱗が生える。

「嘘やろ?!」

 何らかの衝撃波がトビを遅い、すぐ横の壁に叩きつけられ、呻く。
ジェロムはそちらへは見向きもせず、すぐに獲物の狩りを邪魔するラスイードに1歩足を進めた。

 ガッ!

 鈍い音がしたが、間一髪のところでラスイードが自分ごと後ろの王弟の周りに張った障壁が間に合い、ジェロムの蹴りを防ぐ。

「ペネドゥル様!」

 そちらに一瞬気を取られたせいで緑の頭が脇をすり抜けた。

 尚も障壁を衝撃波を込めた蹴りで攻撃を続けるジェロムに勢いよく体当たりをかます。

 ジェロムも徐々に獲物以外が目に入らなくなっているようで、体当たりをまともに受けてたたらを踏む。
その隙にラスイードが弟の手首を掴んで後ろに放り投げ、障壁を張り直す。

「あなたにも死なれては困りますから。
でもふざけた事をすれば障壁を解除してジェロムに襲わせます」
「····わかっている」

 そう言うと王弟の横へへたり込む。
もう立ち上がる程の体力も気力も残ってないんだろう。

「ぐああああああ!!」

 野太い咆哮を再び上げると今度は障壁を際限なく衝撃波を繰り出す拳で1点を殴り始め、とうとう拳が障壁にめり込んだ。

「ジェロム!」

 もう片方の拳を更に叩きつけようとしたところでザガドがその拳を背後から押さえる。
俺も駆けつけ、そのままジェロムの頬を殴る。
だが頬でそれを受け止められてしまった。
よく見ると頬にうっすらと鱗が生えていた。

「邪魔、するなぁ!!」

 ジェロムがギリギリと歯を噛み締めながら怒鳴ったかと思えば、彼を中心に衝撃波がうねり、竜巻のように俺達を襲う。

 障壁が破壊されたラスイードとザガドはもろに受けて吹き飛ぶが、俺は瞬時に体勢を低くして風を何層にも纏って凌ぎながら機会を待つ。
 いつの間にか起き上がっていたトビは片手を突き出して分厚い障壁を展開して耐えている。
何かが手からはみ出しているから、魔石具を使っているのか?

 トビがチラリとこちらに視線を投げる。
お互い機会を待っているようだ。

 そう思った次の瞬間、波のうねりが引いた。

 今だ!

 合図も何もなく、息を合わせて飛びかかる。
ジェロムが蹴り出そうとしたトビ側の足をトビが押さえ、俺はがら空きになった胴に渾身の蹴りを入れ、俺達とは反対方向の出入り口側へと蹴り飛ばした。

 床に転がったジェロムにラスイードが火球を放ち、爆発による爆風で更に向こうに転がって距離ができた。

「ラスイード!」
「流石にこれ以上は手加減しながら戦えません。
私には主を守る義務がありますから」

 恐らく殺すつもりで放ったんだろう。
ザガドの非難と制止の声は側近に却下された。

 ジェロムは今ので少しばかり脳が揺らされたみたいだ。
何とか立ち上がるも、ふらふらしている。

「これだけやっても大して効いてへんけどな。
竜化しつつあるんちゃうの。
いっそ獲物認定されてる王弟差し出す方が大人しくなるんちゃう」
「貴様、ふざけるな!」
「ふざけるのはお前達だ、ラジェット。
お前達は月下の麻薬でどれほどの竜人を貶めた。
全て自分自身に返ってるだけだろう」

 ザガドが立ち上がり、前に出る。
緑の頭は悔しげに歯を食いしばるが、その目は揺らいでいる。

「しかし、強い兵士を作らねば····」
「黙れ。
もうたくさんだ。
麻薬など無くても今のお前達より強い者はたくさんいる。
現にお前はそこの獅子属に敵わなかった。
彼らは皆、血反吐を吐くような鍛練をして命をかけた実践を積み、常に己を精進させてきたはずだ。
狭く閉鎖されたこの国しか知らぬお前達にはわからないだろう。
麻薬でとれほどの力を一時手にしても、狭い世界に身を置いた我らは武力では間違いなく他国に劣るのだ」
「だからこそ!」

 なおも主張しようとするが、それをザガドが威圧して黙らせる。

 ザガドの素肌には赤銅色の鱗が所々に生えている。
ザガドも竜化できたのか。

「だからこそ武力ではなく外交に力を入れ、開国して他国に助けを求めるべきだった。
現に鎖国せずにあのまま戦い続ければこの国は国民の多くに犠牲を強いて滅んだだろう。
かといって鎖国すれば他国の援助なくしては今のように衰退していく。
白竜様は私達が身のほどを知るまでの時間を稼ぐ為にこの国を鎖国させたのだと今ならわかる。
自身の息子である黒竜様を時の王の伴侶に縛りつける事で、自身は魔の森の主となって何ヵ国にも及ぶはずのスタンピードを防ぎ、森に留まるという犠牲を払って内外からこの国を守ってくれたのだ」

 ザガドの痛ましげな言葉に、しかしある者が真っ向から否定した。

「黙れ!
そんな戯れ言を誰が信じる!」

 藍色の髪を振り乱した王弟だ。
いつの間に起きたのか、側近に拘束を解かれていた。

「白竜も黒竜も所詮は魔獣!
当時の王が力の象徴としただけだ!
私が黒竜の番を私の物にすれば黒竜もかしずく王になるのだ!
どこに隠した兄上!
あの人属は私のっ、ガハッ!」

 ペネドゥルからは濃くなった黒い霧が立ち上り始めたが、言い終わらないうちにいつの間にか間合いを詰めたザガドに殴りつけられる。

 側で主を支えていた緑の頭は目で追えなかった光景に唖然としていた。

「黙れ。
お前のせいでラスイードを除く俺の側近達は自由を奪われたのだ。
お前が王に相応しい?
ふざけるな。
お前はただ自分が楽をしようとしただけだ」
「がぁぁぁぁぁぁぁ!
殺させろ!
そいつ!
許さねえ!」

 言い終わるやいなや、目を血走らせたジェロムが飛びかかってくる。
しかし鱗が生えたザガドはいつもよりも圧縮した風を纏い、何十もの風刃を放つ。
すぐさま後ろに飛び退いたジェロムにすかさず詰め寄り、片手で顔面を掴むと勢いよく床に叩きつけた。

「ガッ、はっ····」

 これまでとは比べ物にならない馬鹿力だ。

「ザガド様、そんなんできるんやったらさっさとやって欲しかったわ」
「すまない。
私も初めて竜化したんだ····」
「あなたという人は····」

 ザガドの言葉にラスイードが呆れた。

 が、気を緩ませた次の瞬間、ぐるるるるる、と言葉に出来ないような、唸り声が上がり、再び衝撃波が俺達を襲った。
気を抜いてしまった分、俺はまともに食らって床に叩きつけられ、ジェロムは唸りながら更に後ろに飛びすさった。

 目が回りながらも確認すると、片膝をついたザガド以外は皆俺と同じような状態だ。

 くそ!
油断した!

 そう思った次の瞬間、ジェロムと俺達との間が金の光で遮断された。

 愛しさのこみ上げる魔力にまさかと思うも、眩しさに瞬きした次の瞬間には光が透明な壁へと変わっていた。
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