《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

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119.簒奪者

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「そんなに睨まないでよ。
君達に相応しい罰はこれから与えるのに疲れちゃうよ?」
「罰だと?
何様のつもりだ。
賎しい人属ふぜいが。
ここはお前の国でもなければ、お前は王族ですらない。
ここは私の国であり、王族は、王は私だ。
王に手を出したお前こそが罰せられるべきだ」

 レンの顔は微笑んでいるが、掠れた声の王弟を冷ややかな目で見つめる。

「そうだね。
君が私の気に入った者に手を出さなければ、直接手を下したりする程君達の場違いなお家騒動に興味を持たなかっただろうね」

 そう言うとレンの顔から微笑みは消え、口調だけでなく顔つきも無機質で冷々としたものに変わった。

「貴様、口の聞き方に気を付けろ!」

 緑の頭が吠えるが、すぐにゲホゲホとむせた。
そんな2人をレンは更に冷ややかに見据える。

「馬鹿か。
口の聞き方に気を付けなければならないのはお前達だとまだ気付かないのか」
「ぐっ、ゲホッ····なん、だと?!」

 絞り出す声も眼光も弱々しくなっていく。

「そうだろう?
簒奪者ドゥニーム」
「····おっしゃる通りだ、魔の森の執行者殿」

 後ろからの不意の声に思わず振り返る。
誰だ?!

「陛下!
目覚められたのか!」

 眠っていたはずの、あの王弟と同じ藍色の髪に藤色の目をしたこの国の国王が近づき、障壁の前でこの国の最上の礼をレンに取る。
いつの間にかレンもこちらへ向き直っていた。

「ザガドよ、すまない事をした。
少し前にそちらの執行者殿に結界を無効化され、叩き起こされた。
現状も伺っている」

 よく見れば衣服はボロボロで、髪もボサボサ、擦り傷もあるが、まさかレンが言葉通り叩き起こした····よな、絶対。
ザガドも察したようで、気まずい。

「簒奪者とは、何だ?
ゲホッ、陛下は何を隠しておられる?!」

 王弟が息も荒く兄王に尋ねる。

「私が前国王を殺した者を黙認し、王位に就いた」
「····な、何を仰って····」

 ザガドが愕然とした顔で兄王を見る。
しかし彼は顔色1つ変える事はなかった。

「仕方なかったなどと言い訳は致しません。
私がこの国の犠牲となった先王様、その伴侶である黒竜様を蔑ろにした事は事実。
此度の事も含めそこの愚弟共々、裁きをお受け致します」

 礼の姿勢を保ったまま深々と頭を下げる国王。
それを至極当然のように冷たく見つめるレン。

「陛下!
私の行動はこの国の為を思えばこそ!
何故裁きなど····」
「黙れ、ペネドゥル!
わが国の臣下を麻薬漬けにした事は断じて許されぬ!
挙げ句このような形で執行者殿を拐うなど、正気とは思えぬ!」
「そんな····」
「見苦しいな」

 2人の間にレンが割って入る。
そういえばジェロムの血溜まりが小さくなっていないか?
よく目を凝らすと、結界の中が何となく赤い?

「どちらにしたってお前は王位継承権を剥奪される。
お前と話すだけ無駄だ」
「何だと!
ふざけおって!
それよりも王族に向かって何をしている!
さっさと出せ!」

 緑の頭が焦ったように叫ぶが、途中から声がかすれていく。
その主である王弟は声を出せなくなったのか、荒い息をしながらただレンを睨みつけている。

「お前達がおじさん達にした事を再現してるだけだ。
ほら、おじさんの血液ももう無くなった」
「····な、に····」

 見ると血溜まりがいつの間にか無くなり、結界の中の赤みが増してい。

 不意にレンがパチリと右手で指を鳴らす。
瞬間ジュワッと音がして、中で薄赤い蒸気がこもった。

「これでお前達も立派な薬物摂取者だ。
水蒸気にした方が吸収率が上がるからな。
お前達がおじさんに何倍もの麻薬を投与したからな。
この程度の血液量でも麻薬摂取に繋がるんだ。
自業自得に笑えるよ。
だがな、おじさんは血液から摂取したお前達とは比べられない苦しみを味わった。
その程度ですんでありがたく思え。
まぁ、本当の苦しみはある意味これからかもしれないがな」

 涼しい顔で冷たく言い放たれた言葉に2人は最後の悪あがきのように暴れるが、やがてガクリと座り込んだ。

 月花の根の麻薬が竜人にどれほどの影響を及ぼすかを自ら証明してしまったのだ。
依存性の麻薬を摂取した事実が公然と作られた以上、その濃度など関係なく誰が庇っても王位は確実に剥奪するしかなくなるだろう。

「中の蒸気が消えたら結界が消えて自動的に転移が起こる。
この城には私が当初お前に放り込まれる予定だった地下牢があるらしいから、その中に2人共入れてやる。
お前達が閉じ込めておいた他の麻薬患者達と相部屋になるかもな」
「な、に?!」
「ぐっ?!」

 2人の顔色が変わる。
緑の頭はまだ驚きの言葉を発していたが、王弟は呻き声しかもう出ない。

 レンはそう宣言すると俺達を隔てていた結界を消し、ゆっくりと歩み寄った。

「ファル、来て」

 レンが呼び掛けると、どこからともなく黒竜が現れた。
初めて見るファルの竜体だ。
この広間の天井もかなりの高さがあるが、ファルが首を伸ばせば確実に届くだろう。
それでも大きさは調節しているんじゃないだろうか。
初めて見たから自信はないが。

 それにしても、美しい。
思わずそう感じた。

 黒い鱗は宝石のような深い輝きを纏い、金色の瞳は荘厳さを秘めている。
しかし全身から放つ竜気は絶対的王者として他を圧倒し、気を抜けば膝をつき、傾ぎそうにさせる。

 あり得ない程の威圧が周囲の空間を満たし、立ち尽くすのでやっとだろう俺とトビとは違い、兄王とザガドは最上の礼を取った。
竜の臣下であるこの国の住人2人は体を震わせ、汗が顎を伝い始めた。
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