《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

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120.怒り

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 竜体となって現れたファルが、俺の知る普段の人形の時の何十倍にもなった大きな顔をレンの背後から右脇へ擦り付ける。
レンは後ろを見る事もなく右手でそっとその頬を撫でてから、藍色と赤銅色の2人の王族へと冷ややかな視線を向けて話し始めた。

「ドゥニーム、顔を上げろ。
今回の件は投影の魔法で今、国民全員が見ている。
昔のような隠蔽をさせるつもりはない。
王が簒奪者である事もこれで周知の事実となった」
「承知しております」

 国王は恭しく頭を垂れた。

「ザガド、顔を上げろ。
血の宣言を忘れるな。
お前は次代の王として約500年前から続く罪を明らかにし、咎人達に相応しい罰を与え、かつて白竜が願ったようにこの国の民を導け。
これが王族である事で保証された暮らしを享受しておきながら、負うべき責任から逃げたお前達へ執行者として与える罰だ」

 ザガドの目がはっと見開き、再び礼を取って顔を伏せる。

「「慎んで、罰をお受け致します」」

 同じく顔を伏せた兄王と揃って受諾の意を唱える。

 不意にファルが咆哮と共に横壁に向かって黒いブレスを叩きつけた。
壊れた壁から黒い翼を羽ばたかせて出ていく。

 そのまま上空にとどまり、言葉を念に込めて話す。

『この地の民達よ。
近く新王が即位する。
過去の王達が犯した罪の全てを明らかにし、この国の繁栄に尽力していく事だろう。
白竜が願ったのは多種族との共存の道。
我もそれを望む。
痛みを伴う事もあろうが、我は番である執行者と共に魔の森よりそれらを見守ろう』

 直接頭に響いてくる心地よい低音の声がそう告げた。
しばらくして、それに呼応するかのような歓喜の声が城にまで響いた。

「投影の魔法は消したから、2人共楽にしろ。
お膳立てはした。
ここから先は側近全員を呼び戻して何とかやれ」
「側近····全員?」

 ザガドが困惑した顔する。

「おじさんとラスイードさん、闘病してた2人。
もう一度忠誠を貰えるかは今後のお前次第だろうけど、力は貸してくれる」
「····他はともかく、闘病していた2人は····」

 苦しげに顔を附せる。

「彼らはおじさんと違って麻薬を投与されてから時間が経ちすぎたからな。
当然すぐにとはいかない。
それに本格的な護衛は今後も難しいだろうけど、宰相や摂政としての役を兼任して側にいたんだろ?
ラスイードさんの奥さん、ナルバドさんが言っていた。
暫く解毒剤は定期投与する必要はあるけど、それくらいなら将来的には問題ない。
解毒剤についてはビビット商会と話せ。
ドゥニームもあれだけの事を黒竜にしておいて死んでお詫びとか、番のせいで無気力だからなんて逃げは許さない。
そんな事をしたら眠ってる番にそんなお前に相応しい死を与えてやるよ。
雪火を、刀を抜けばすぐに内側から食われて体も死ぬ。
彼もお前の番となり王族の一員としての生活を享受した事を忘れるな。
狂おうと狂わなかろうとお前は死ぬまでこの国に尽くせ」

 レンはいつの間に城から離れて活動していたんだ。
本当に底が知れない。
てか地味に国王脅してないか?
その口調はいつ戻るんだ?
実はこっちが素なのか?

「····感謝、する····」
「····わかっております」

 ザガドは右手で目元を覆い、思わず溢れそうになった涙を隠す。
国王は諦めたような、死んだ目をして頷いた。

「レン」

 不意に人型のファルがレンの背後から呼び掛けた。

「なに?」
「まだ何か企んでいるのだろう。
そろそろ一度眠っておけ。
お前は俺が側で守る」
「嫌。
今は頭が冴えすぎてて眠れない」

 限りなく無表情なレンの顔色は確かに悪いし、息づかいが早い。
早く休ませたいが····しかし····。

 少し離れて成り行きを見守っていたトビがザガドと国王を呼び、何事かを指示する。

「兄さん達、反逆者の2人も転送されたし、俺らはジェロムのおっちゃん連れて移動するわ。
後で俺らの客室に集合な。
レンちゃん、はよイライラ抑えて1回体休めなホンマに死ぬで。
その2人ならレンちゃんの全部受け止めてくれるから、溜め込んでるもん少しは吐き出しや」

 そういえばレンの檻にいたペネドゥル達が檻ごといない。
レンが言ったように地下牢へ自動転送されたようだ。

 トビがザガドに目配せすると、床に倒れていたジェロムを2人がかりで起こし、その腕をそれぞれ肩に回しかけて引きずるように両側から支えて歩いて行く。
レンとすれ違い様に頭をぽんぽんと優しく叩くが、レンは無反応だった。

 国王はその後ろをとぼとぼとついて行き、ファルが壁をぶち抜いて風通しの良くなった広間には俺達3人だけになった。

 レンを抱え上げたいが、纏う空気が無言で拒絶していて触れるのも躊躇われる。
恐らくファルもそうだろう。

「····レンはどうしたい?」
「····知らない」
「····怒ってるのか?」
「····多分」
「····何に?」
「····知らない」
「····誰に怒ってる?」

 俺の問いかけにレンは答えようとして、口をつぐむ。
ファルは静観している。
レンは無表情だった顔を不機嫌そうに1度眉をしかめ、目線を下に落として息を吐く。

「レン?」
「····皆」
「····俺にもか?」

再びレンの眉が歪む。

「····皆」
「レン自身にもか?」
「····うん」

 レンは俯いて肯定した。
爪が食い込むくらいに両手を固く握りしめている。

「レン、抱きしめたい」
「····嫌、ほっとい····嫌だってば!」

 拒絶を無視して抱きしめる。
暴れるレンは間違いなくここ最近で痩せて更に小さくなった。
体も熱くて熱がぶり返しているし、力も上手く入っていない。
こんな状態でよく立っていられたものだ。
こんなになるまで1人で突っ走ったのか、レン。

 腕に囲うレンの嫌、放してという拒絶に何かが弾ける。

「嫌なのは俺の方だ!」

 思わず叫んでしまった。
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