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127.伴侶紋

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「そういえば伴侶紋は体のどこにあるん?」

 ベッドの上に下ろされてもまだ鼻をぐずぐず鳴らすレンにトビは苦笑して頭を撫でながら改めて尋ねる。
獣人としては仕方なかったと理解するが、大人気なく俺のいたいけな番を威圧したのはやはり反省して欲しいものだ。

「お爺ちゃんと同じ背中」

 その答えにハッとした。

「あの白銀の魔法陣みたいなやつが····」

 思わず口をついて出た。
レンが俺の言葉に驚いた顔をするが、そんな顔も小動物みたいで甘噛みしたくなる。

「え、何でグランさんが····」
「兄さん、覗きでもしたん?」

 が、トビの覗き発言に思わず慌ててしまう。

「お前····」

 いつの間にか背後に殺気を放つファルがいて、ビクッと飛び上がってしまった。

「違う!
覗いてないぞ、レン!
たまたまだ!」
「たまたま覗いたん?」
「茶化すなトビ!
以前に長湯して倒れてた事があっただろう!
あの時チラッと見えたんだ!
チラッとだぞ!
違うからな、レン!」

 焦って説明すればするほどドツボにはまっていく気がする。
くそっ、ファルの殺意が膨れている気がする。

 と、不意にくすくすとレンが笑った。
緊張が少しほぐれたみたいで何よりだ。

「グランさんがそんな事しないのわかってるから大丈夫だよ。
それより、あの、やっぱりグランさんは外して欲しいんだけど····」

 笑っていたが、途中から何やら申し訳なさそうに拒否される。

「え、何でだ?」

 思わず呆然としてしまった。
ここにきて蚊帳の外とか····。

「あの、反転魔法でトレースする時は、その····」
「素肌を晒すから、だろう」

 言いにくそうな様子のレンにファルが補足する。
その言葉にあわあわと慌てた後、顔を赤くして俯いて黙り込む。

 背中を晒すという事は胸元を隠すにしても····そうか、そういう事か。

「すまない、レン。
レンの体の事なんだが····」

 知っていると言いかけ、口ごもる。
トビとファルは知っているのか?

「兄さん、もしかしてレンちゃんの体の事知ってるん?」
「え、何で····」

 思わず顔を上げたレンは今度こそ言葉を無くした。

「いや、見てはない!」
「え、触ったん?」
「茶化すなトビ!
いや、触ったというか、いや、触った事にはなるんだが、断じて直接は触ってない!」
「お前····」

 今度こそファルが殺気を帯びる。
というか、このやり取り本日2度目ましてだな!

「たまたまだ!
眠ったレンがベッドから落ちそうになって支えたらたまたま掴んだのが胸だったんだ!」
「····え、と····その、僕····」

 レンが青い顔を少し赤らめて何かを話そうとするも、言葉が見つからないようだ。
あわあわしているレンが小動物みたいでやっぱりいいな。
獣体で抱え込んで舐めまわしたい。

「でもレンちゃん人がいる時は分からんようにする下着着てへん?」
「長湯で倒れてた時で、俺の服をひとまず着せてたんだ。
そんな下着着けてたのか?」
「う····え、うん、まぁ、えぇ····」

 完全にレンはパニックになってきているようだ。

「あー、レンちゃん、そこらへんもう兄さんに教えてあげたら?
こんな所まで追いかけてくるくらいやから、もう信用はしてるやろ?」
「····で····も····さすがに····恥ずか、しぃ····」

 俯いてしまったからよく見えないが、恐らく顔を真っ赤に染めているのはわかる。
モゴモゴと喋る様が····くそ、可愛いすぎる。

「レンはこの世界の人型を持つ種族の中では恐らく唯一の雌の性を持つ。
知っているのは生活を共にしていた母と義父とトビと俺、商会でレンの下着を作る1人だけだ」
「····ファル····」

 レンがふと我に返ったのか不安そうにファルを見つめる。
ファルはレンの隣に腰掛け、安心させるようにそっと抱きしめる。
まぁ、流石に不安にはなるよな。

「大丈夫だ、レン。
当然だが他言はしない。
不安を煽るのが分かってたから本当はこのまま黙っておくつもりだったんだが····。
だからのけ者にしないで欲しい。
トビの話では激痛が伴うのだろう?
勿論胸元は隠しておくだろうが、支えている間は見ないようにする。
····駄目か?」

 レンはやはり不安と羞恥からだろうが、うまく言葉に出来ない様子だ。
口を開きかけては俯いてを何度か繰り返す。

「絶対、見ない、なら····」

 やがて獣人の耳でやっと拾える程小さな声で了承してくれた。
俯いたままで視線は全く合わなかったが、ひとまずその答えにほっとした。
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