《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

文字の大きさ
128 / 210

128.口づけ

しおりを挟む
「ほな、俺はこっち向いとくから」

 レンの了承を聞いてトビはすぐに上半身を脱いでレンに背を向け、ベッドに胡座をかいてベッドの中央に座った。
人1人分空けて内向きに膝を倒してペタリと座る赤い顔のレンも意を決したように服に手をかける。

「2人とも、良いって言うまでこっち見ないで」

 俺もファルもレンに背を向けたのを確認してゴソゴソと服を脱ぎ始める音がする。
····見たい····非常に見たい····が、俺は騎士、我慢だ。

「もう、いい、です」

 くそ、照れた敬語が可愛い過ぎる。
振り向くと着ていた服で胸元を隠していた。
····ヤバい、むしろそそる。
素肌と服の対比率が絶妙だ。

「····おい」
「わかっている」

 ファルに軽く睨まれつつ、レンの前側に回って片膝を立てて座り、黒髪をそっと纏めて細い左肩にかけ、小さな頭を俺の右胸に軽く抱え込む。
ファルはトビとレンの真ん中辺りのベッド脇に立つ。

 俺は前側から背後を覗き込む体制になり、嫌でも背中の上部にある白銀の紋がハッキリ見えた。

「辛かったらしがみついても爪をたてても構わないからな」
「····爪はたてないよ」

 レンは緊張した様子でギュッと両手で胸元の服を押さえつけた。

「始めるぞ。
レン、反転魔法を発動させてトレースでトビの背中に繋げ。
お前の背中の癒着は俺が切っていく」

 頷いてレンは古代語を使った詠唱を始める。
レンがまともに詠唱魔法を使うのは初めて見たが、それだけ古代語を使う反転魔法は発動させる事自体が難しい。
加えてその言葉の意味も正しく理解し、発音させられる魔術師は恐らく数千年生きる白竜から教わったレンくらいしかいないだろう。

 詠唱の旋律と共に金色の魔力の粒子が背中の魔法陣に纏い始め、背中からゆっくりと浮き上がる。
まるで歌うような詠唱に思わず聞き惚れる。
しかしここで魔法陣が揺らいだ。
途端にレンが小さく呻く。

「耐えろよ」

 ファルがレンに声をかけ、背中の魔方陣に手をかざす。
どこからともなく現れた黒い粒子が魔方陣と背中の間に入り込んだ。

「んっ、くっ····」

 くぐもった悲鳴を胸元の服に顔を埋めて殺し、レンの額が俺の胸元に押し付けられる。

「頑張れ、レン」

 励ましながら右手で小さな頭を抱え込み、左手は細い右肩を掴んで支える。
本当に激痛なのだろう。
全身に脂汗をかき、呻き声とギリギリと歯を食いしばる音がする。
呼吸も浅く、ただでさえうまく空気を取り込めていないのにこのままでは気を失う。

「レン、少しだけ上向けるか?
レン?」

 ちゃんと聞こえるように耳元で話しかける。
しばらくして、ゆるゆると顔を上げる。
苦悶の表情を浮かべるレンが悶絶しそうな程艶っぽいが、唇の色が青くなりつつある。

「レン、ちゃんと息はするんだ」

 無理だと訴えるように、ふるふると首を横に振る。
胸元を隠す手が固く握られ、真っ白になっている。

 不意に目の焦点がずれて意識を失いそうになっている事に気付く。

「レン!」

 咄嗟に細い顎に手を添えて口付け、舌で小さな唇をこじ開け息を吹き込んだ。

 閉じかけた瞳が大きく見開く。
反射的に自分の胸元の手を俺の胸に当てて押し返そうとするが、力で俺には敵わない。

「息をするんだ、レン」

 唇を離し、再び腕に抱き込む。
いつの間にかレンの両手は俺の胸元を握りしめている。

 あれ、レンの胸元が····いや、今は雑念を払わねば。

「チッ。
レン、そろそろ引き剥がし終わる。
足りない魔力の分は補助するからそのまま虎にトレースしろ」

 ファルの憎々しげな舌打ちが聞こえる。
そういえば、俺達の初めての口付けだった。
クソ、もっと雰囲気のある所で2人きりでしたかった!
まぁ思いのほか唇は柔らかかったが。
あ、顔がにやけそうだ。

 が、ファルの舌打ちを再び聞いて顔を引き締めた。

 やがて息も絶え絶えだったレンが少しずつ息を整えて体の力を抜いていく。

「トビ君、トレース····する、ね」
「レンちゃん頑張ったやん。
いつでもかまへんよ」

 まだ完全には呼吸が整えきっていないレンがトビに背を向けたまま声をかけた。
1番の難所は乗り越えたようだ。

 レンが再び詠唱を奏でる。

 金色の魔力とファルの黒い魔力が合わさって黒金の高貴な色の魔力が魔方陣を包み、ゆっくりとトビの背に移動した。

 レンの時とは違い、トビに痛みはないようだ。

 魔方陣が一瞬揺らぎ、トビの肌に馴染んでいく。
それと同時に黒金の魔力は霧散していった。

「····終わったのか?」

 思わずファルを見るが、まだだと首を振る。
胸に抱えたレンが体を強ばらせ、体を曲げて額を強く押し付けてくる。

「····はっ、あ····」

 レンが小さな悲鳴を上げると、レンの体から白銀の魔力が靄のように立ち上り、ギラギラと攻撃的に光る。

「伴侶紋に宿ってた師匠の魔力やな。
番でも、師匠の認めた伴侶でもないから、ずっとレンちゃんの体の中で暴れてたみたいやわ」

 そうか、それで例の無理矢理奪った者が7日7晩苦しんだ末に死ぬ話に繋がるのかもしれないな。

 トビが背中越しに白竜の魔力に呼びかける。

「セレスティアード、こっちにおいでや。
もう愛し子を攻撃したらあかんよ」

 セレスティアードが白竜の名前か?
トビの優しい声音に惹かれるようにレンの周囲で攻撃的に光っていた魔力がトビの周りに集まる。
先ほどとは打って変わった優しげな光だ。
レンの体から力が抜けてほうっと息を吐いた。

「今まで逃げててごめんやで。
後で迎えに行くから、もう少しだけ待っててや」

 トビの言葉に納得したかのように、白銀の伴侶紋へと消えていった。

 その時だった。
レンが再び激痛を耐えるようにビクッと体を震わせ、俺の服を握りしめたのは。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

遊鷹太
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

目覚めたら魔法の国で、令嬢の中の人でした

エス
恋愛
転生JK×イケメン公爵様の異世界スローラブ 女子高生・高野みつきは、ある日突然、異世界のお嬢様シャルロットになっていた。 過保護すぎる伯爵パパに泣かれ、無愛想なイケメン公爵レオンといきなりお見合いさせられ……あれよあれよとレオンの婚約者に。 公爵家のクセ強ファミリーに囲まれて、能天気王太子リオに振り回されながらも、みつきは少しずつ異世界での居場所を見つけていく。 けれど心の奥では、「本当にシャルロットとして生きていいのか」と悩む日々。そんな彼女の夢に現れた“本物のシャルロット”が、みつきに大切なメッセージを託す──。 これは、異世界でシャルロットとして生きることを託された1人の少女の、葛藤と成長の物語。 イケメン公爵様とのラブも……気づけばちゃんと育ってます(たぶん) ※他サイトに投稿していたものを、改稿しています。 ※他サイトにも投稿しています。

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

処理中です...