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134.過去の担ぎ上げ
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「それでは明日からグランは団長達の指示に従って仕事をしろ。
陛下は私と共にこの国の新旧の王と謁見後、開国についての話し合いです」
「兄上、待って下さい」
「そんなぁ、儂のレンちゃんとの至福の一時がぁ····」
兄上の言葉に不満を主張しようとした俺達の間を氷の矢がかすめた。
何の前触れも感じさせずに魔法発動させるとか、さすが兄上。
思わず飛び上がりそうになった。
「いつまで好き勝手やるおつもりですか?」
やばい、兄上が笑顔で敬語だ。
間違いなくきれてる。
「第5騎士隊隊長?
君の本分は騎士のはずですよ?
今の君は騎士としていかがなものでしょう。
そんな君を見てあの番は喜ぶような性格をされているんですか?」
「う····それは····申し訳ありませんでした、王太子殿下」
レンなら間違いなく諌める。
痛い所を突いてくるな、兄上め。
「ザッカルード国王陛下?
本来は先程騎士団長が仰ったように近衛騎士も何名か共に連れてきてもよかったのですよ?
無理に魔力量の多い第3、第4騎士隊隊長に王命なんてもの振りかざして無理矢理この国に転移させなくとも5日程かけて近衛と入国しても良かったんですよ?
そうすれば魔力の使いすぎで隊長2名が倒れる事もなかったでしょうしね?
まさか一国の君主たる国王陛下がお気に入りの人1人の為に国家権力使うわ、開国の橋渡しにスピード解決が求められるなどと申されながら、その実まだ譲位もしていない一王太子ごときに仕事放り投げて変態心を満たしたいなんて、まさかまさか、そんな事仰いませんよね?」
「うぐっ····もちろん開国の橋渡しと早期解決の為に国王として尽力する所存じゃあ」
まさかを2回言ったな。
ん、あの2人倒れてたのか?
まぁ確かに俺達だって高濃度の魔力を込めた、やたら質の良い魔石4個と魔道具と城をよく知るザガドの補助に黒を纏う魔獣のキョロのフォローがあったからこそ何の異常もない転移ができたんだもんなぁ。
倒れた2人に思わず同情する。
それくらい魔力切れは体がきつい。
「それでは、私と陛下はこれよりあちらの用意した会合に参ります。
副会長は商会の者達が揃い次第でかまいません。
1度我々、この国の新旧国王、及び側近達との顔合わせを行いたいと考えていますから声をかけて下さい。
もしその時会長も同席できそうならぜひ同席させて下さい。
体調によってはこの部屋でもかまいませんよ」
「わかりました。
副会長として会長が目覚め次第、会長同席の方向で話をしときます」
王太子への受け答えらしくトビも口調を改めたな。
「よろしく頼みますね。
第5隊隊長を残し、我々は参りましょう」
有無を言わさず圧のある笑顔を張り付けて役職呼びした上で親父と団長達を引き連れて行ってしまった。
見送ってからトビが口を開く。
「さすが王太子やってるだけの事はあるなぁ。
まともに起きてるレンちゃんを絶対拝ませろ言われたわ」
トビはおー、こわ、と身をすくませた。
「俺達兄弟が全員一致して王太子に推した人だからな。
一個人の戦闘能力と抜け目のなさは全盛期の親父以上って言われてる。
俺達兄弟もあの人以外に王に相応しい王族もいないと思ってるんだ」
ふと当時の苦い思いが甦る。
あの時は俺達兄弟全員が胸糞悪い思いをさせられていた。
「だからこそ俺と2番目の兄上は王位継承権を放棄して叙爵したし、3番目の兄上も王太子に何かあった時の為だけに放棄こそしていないが魔術師塔の師団長やってる」
「ふーん····ほんまは2番目のお兄さんと兄さんは周りに担ぎ上げられそうになったから、とか?」
トビの言葉につい苦笑してしまう。
「さすが商人なだけあって情報も正確だな。
俺達は親父とその番の元平民の側室との子供で、王太子とすぐ上の兄上は伴侶の契りを結んだ王妃との子供だ。
俺はこの通り魔力量は並みだがガタイに恵まれたし親父似の獅子属、2番目の兄上は母親似で狐属の特徴を継いだ分体格は細身だが魔力量が多くて魔術に秀でてたから周りが煩かった。
本来番1人しか伴侶に望まないメルだが、ザッカルードの国王になる者だけに継承される伴侶紋があるからメルである国王は番でない王妃には伴侶紋を施す。
それによって王妃の匂いが国王の匂いとすり変わって王妃の番となる者が現れないし、施した後に国王の番が現れても番は国王の匂いで王妃を受け入れる刷り込みが起こる。
だからザッカルード国の王位継承権を持つ者や王妃候補達は他の獣人同様番を求めはするが、必ず政治と番を切り離して考える番教育を受ける。
おかげで番を目にしても理性が働くようになる。
番によっては国を荒らす事になりかねないからな。
だから王妃になる者が必ず番とは限らないし、国を想うなら番でない方が良い場合だってある。
それでも王の資質も考えない馬鹿な貴族は番や番との子供ってだけの理由で担ぎ上げようとした。
俺達の実母は早くに亡くなったし、俺も2番目の兄上も辟易してたんだ」
「どこの国も同じやな。
諸外国の王族も今では番教育を徹底してはるし、ザッカルード国と同じで国王だけの伴侶紋も存在してるわ」
「母がこの国の鎖国と魔の森の受け入れと引き換えに周辺の国の国王達に伴侶紋の刻み方と番主義がいかに国を乱してきたかを教えたからな」
不意にファルがレンの傍らに現れ、愛しそうに黒髪をすくって口づけた。
どうやら時間ができたみたいだな。
陛下は私と共にこの国の新旧の王と謁見後、開国についての話し合いです」
「兄上、待って下さい」
「そんなぁ、儂のレンちゃんとの至福の一時がぁ····」
兄上の言葉に不満を主張しようとした俺達の間を氷の矢がかすめた。
何の前触れも感じさせずに魔法発動させるとか、さすが兄上。
思わず飛び上がりそうになった。
「いつまで好き勝手やるおつもりですか?」
やばい、兄上が笑顔で敬語だ。
間違いなくきれてる。
「第5騎士隊隊長?
君の本分は騎士のはずですよ?
今の君は騎士としていかがなものでしょう。
そんな君を見てあの番は喜ぶような性格をされているんですか?」
「う····それは····申し訳ありませんでした、王太子殿下」
レンなら間違いなく諌める。
痛い所を突いてくるな、兄上め。
「ザッカルード国王陛下?
本来は先程騎士団長が仰ったように近衛騎士も何名か共に連れてきてもよかったのですよ?
無理に魔力量の多い第3、第4騎士隊隊長に王命なんてもの振りかざして無理矢理この国に転移させなくとも5日程かけて近衛と入国しても良かったんですよ?
そうすれば魔力の使いすぎで隊長2名が倒れる事もなかったでしょうしね?
まさか一国の君主たる国王陛下がお気に入りの人1人の為に国家権力使うわ、開国の橋渡しにスピード解決が求められるなどと申されながら、その実まだ譲位もしていない一王太子ごときに仕事放り投げて変態心を満たしたいなんて、まさかまさか、そんな事仰いませんよね?」
「うぐっ····もちろん開国の橋渡しと早期解決の為に国王として尽力する所存じゃあ」
まさかを2回言ったな。
ん、あの2人倒れてたのか?
まぁ確かに俺達だって高濃度の魔力を込めた、やたら質の良い魔石4個と魔道具と城をよく知るザガドの補助に黒を纏う魔獣のキョロのフォローがあったからこそ何の異常もない転移ができたんだもんなぁ。
倒れた2人に思わず同情する。
それくらい魔力切れは体がきつい。
「それでは、私と陛下はこれよりあちらの用意した会合に参ります。
副会長は商会の者達が揃い次第でかまいません。
1度我々、この国の新旧国王、及び側近達との顔合わせを行いたいと考えていますから声をかけて下さい。
もしその時会長も同席できそうならぜひ同席させて下さい。
体調によってはこの部屋でもかまいませんよ」
「わかりました。
副会長として会長が目覚め次第、会長同席の方向で話をしときます」
王太子への受け答えらしくトビも口調を改めたな。
「よろしく頼みますね。
第5隊隊長を残し、我々は参りましょう」
有無を言わさず圧のある笑顔を張り付けて役職呼びした上で親父と団長達を引き連れて行ってしまった。
見送ってからトビが口を開く。
「さすが王太子やってるだけの事はあるなぁ。
まともに起きてるレンちゃんを絶対拝ませろ言われたわ」
トビはおー、こわ、と身をすくませた。
「俺達兄弟が全員一致して王太子に推した人だからな。
一個人の戦闘能力と抜け目のなさは全盛期の親父以上って言われてる。
俺達兄弟もあの人以外に王に相応しい王族もいないと思ってるんだ」
ふと当時の苦い思いが甦る。
あの時は俺達兄弟全員が胸糞悪い思いをさせられていた。
「だからこそ俺と2番目の兄上は王位継承権を放棄して叙爵したし、3番目の兄上も王太子に何かあった時の為だけに放棄こそしていないが魔術師塔の師団長やってる」
「ふーん····ほんまは2番目のお兄さんと兄さんは周りに担ぎ上げられそうになったから、とか?」
トビの言葉につい苦笑してしまう。
「さすが商人なだけあって情報も正確だな。
俺達は親父とその番の元平民の側室との子供で、王太子とすぐ上の兄上は伴侶の契りを結んだ王妃との子供だ。
俺はこの通り魔力量は並みだがガタイに恵まれたし親父似の獅子属、2番目の兄上は母親似で狐属の特徴を継いだ分体格は細身だが魔力量が多くて魔術に秀でてたから周りが煩かった。
本来番1人しか伴侶に望まないメルだが、ザッカルードの国王になる者だけに継承される伴侶紋があるからメルである国王は番でない王妃には伴侶紋を施す。
それによって王妃の匂いが国王の匂いとすり変わって王妃の番となる者が現れないし、施した後に国王の番が現れても番は国王の匂いで王妃を受け入れる刷り込みが起こる。
だからザッカルード国の王位継承権を持つ者や王妃候補達は他の獣人同様番を求めはするが、必ず政治と番を切り離して考える番教育を受ける。
おかげで番を目にしても理性が働くようになる。
番によっては国を荒らす事になりかねないからな。
だから王妃になる者が必ず番とは限らないし、国を想うなら番でない方が良い場合だってある。
それでも王の資質も考えない馬鹿な貴族は番や番との子供ってだけの理由で担ぎ上げようとした。
俺達の実母は早くに亡くなったし、俺も2番目の兄上も辟易してたんだ」
「どこの国も同じやな。
諸外国の王族も今では番教育を徹底してはるし、ザッカルード国と同じで国王だけの伴侶紋も存在してるわ」
「母がこの国の鎖国と魔の森の受け入れと引き換えに周辺の国の国王達に伴侶紋の刻み方と番主義がいかに国を乱してきたかを教えたからな」
不意にファルがレンの傍らに現れ、愛しそうに黒髪をすくって口づけた。
どうやら時間ができたみたいだな。
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